平和精機工業は2020年11月20日、「Inter BEE 2020 ONLINE」開催に合わせて三脚、ジブ、リモコンの新製品を発表した。特に注目は、世界最軽量でカウンターバランスを搭載するビデオ三脚シリーズ「NXシリーズ」だ。埼玉県八潮市にある本社工場にお伺いして、新製品をデモしていただいた。
世界最軽量を実現しながら、カウンターバランスやトルクの切り替え機構などの上位機種の機能を搭載した高性能軽量ビデオ三脚シリーズ登場
2kg~10kgまでの重量のあるカメラに対応する「NX-300」(左)と、ミラーレスカメラに特化した「NX-100」(右)
ミラーレスカメラの小型化と動画性能の進化が著しいが、それに合わせて軽量ミラーレスカメラに最適なビデオ三脚のニーズも高まっている。平和精機工業の入門用ビデオ三脚「TH-X」はミラーレスカメラに対応しているが、リグを組んで若干重くなるとシンプル構成なTH-Xでは限界があった。そこで、ミラーレスカメラや中型ハンドヘルドカメラに対応しながら、カウンターバランスやトルクの切り替え機構など上位機種の搭載して新しく登場したのが「NXシリーズ」だ。
NXシリーズは、THシリーズの軽量やモビリティを重視しつつ、段階式カウンターバランスを搭載、RSシリーズと同じ75mmボールヘッドを採用する新シリーズの三脚システムだ。NXシリーズのラインナップは2機種で、1つはミラーレスカメラに特化した「NX-100」。もう1つは2kg~10kgまでの重量のあるカメラに対応した「NX-300」だ。それぞれのモデルには、グランドスプレッダーモデルとミッドスプレッダーモデルが用意されている。
特に注目なのは、ミラーレスカメラに特化したNX-100だ。NX-100の最大搭載重量は4kgで、ヘッドはかなり小型なミラーレスカメラでもバランスが取れるように、かなり細かくカウンターバランスを刻んで設計している。
両機種共通の特徴は、ミッドスプレッダーモデルでシステム重量3.8kgという軽さだ。段階式カウンターバランス搭載の中でも世界最軽量だという。TH-XやTH-Zはアルミ製だったが、NXシリーズには新設計のカーボンパイプを採用。さらに、スプレッダーやフットパッドを新規設計して軽量化を目指したという。
同社の小林政武氏は次のようにコメントしている。
昨今の流れを汲み、とにかく軽い三脚を目指しました。軽量化によって機能を抑えたり、動きが悪くなってしまっては本末転倒です。すべて樹脂にすれば軽量化できますが、動きは悪くなります。絶対に譲れない部分は金属を使って外観は樹脂にすること。トレードオフの関係の中で、攻めて設計を行い圧倒的な小型化・軽量化を実現できました」とコメントしている。
また、ミッドスプレッダーを外して、グランドスプレッダーやその逆も可能。ミッドスプレッターモデルを買うとミッドスプレッターにしか対応しない三脚も多いが、NXシリーズは交換可能。
NX-100とNX-300には、ミッドスプレッダーの「MC」、グランドスプレッダーの「C」の2モデルが用意されている
ミッドスプレッダーは取り外し可能
グランドスプレッダーも取り外しが可能
NXシリーズは外観も目を引く。メイドインジャパンをイメージして、NX-100はゴールドの七宝繋ぎ、NX-300はストーングレーの毘沙門亀甲、裏は波文のデザインパターンを施している。
クリエイターさんが、所持していてモチベーションが上がる、創作意欲が刺激されるようなデザインにしたいという意見が社内からあがりました。三脚がつまらなければいけない理由はありません。どうせならスタイリッシュなものを作ろうということで、このようなデザインを実現しました。
NX-100のカラーはゴールド。デザインパターンは七宝繋ぎ
NX-300のカラーはストーングレー。デザインパターンは毘沙門亀甲
右パン棒のアクセサリーアーム用セレーションに加えて、左側にも開いている。左のパン棒を付けたり、アクセサリーアームを搭載可能。
青海波のデザインパターン
カウンターバランスの影響を受けないベース部分に、アクセサリーポートを搭載。3/8インチネジと1/4インチネジのネジ穴を搭載している。重量のあるアクセサリーを載せてもカウンターバランスに影響を与えないので、オンカメラモニターやLEDライトが搭載可能だ。
ヘッド側面に3/8インチネジと1/4インチネジのネジ穴を搭載
アクセサリーポートにATOMOSのレコーダーを搭載した例。アクセサリーポートは、ベース部分に設けてあるので、重心高、前後バランスに影響を与えない
水準器には、上位機種のみ搭載されることが多いLED照明を搭載している。
ボール径は75mmで、フラットベースに3/8インチネジを搭載したデュアルヘッド機構を採用。フラットベースからボールへの簡単な付け替えも可能だ。
NXシリーズの世界最軽量や幅広いカウンターバランスは、メイドインジャパンだからこそ実現できたという。小林氏は国内生産で実現したNXシリーズの思いをこう語った。
NXシステムは、国内生産ありきにしないと実現できないスペック、性能、品質がありました。そこで、国内で職人が組み立てることを前提に設計し、国内での製造、職人技で組み上げていくことで実現できました。しかし、これはかなり思い切った決断です。軽量三脚は低機能というイメージがありますが、NXシリーズは従来の常識を覆すモデルになったと思っています。
ジブのベストセラーモデル「JB-30」の後継機種となる「JB40」登場
ジブの新モデル「JB40」が登場する。平和精機工業にはベストセラーのジブアーム「JB-30」がラインナップされていたが、2012年に製造終了。JB-30は現行製品の「SWIFT JIB50」にリニューアルしたが、伸縮機能が搭載されたことにより、JB-30よりも筐体が若干大きくなった。特徴であったコンパクトさが失われたために、製造終了から約10年経っても、JB-30が様々な現場で活躍しているという。
そこで、JB-30の後継機種となる「JB40」が開発された。JB40の特徴は最大30kgの積載重量だ。コンパクト・軽量なジブで30kgまでのカメラを搭載できるモデルは多くないだろう。
JB40本体は折りたたむことで120cmに収まり、専用キャリングケースに入れることでタクシーなどの車のトランクに入る程のコンパクトさを実現。
本体重量は10kgと、大人一人でも肩にかけて持ち運び可能だ。
JB40は、ウエイト装着方式が変更された。JB-30はウェイト用シャフトがねじ込み式だったが、JB40では差し込式に変更され、時間のかかっていたセットアップが、JB40では短時間でセットアップできるようになった。
ATOMOSやBlackmagic DesignレコーダーのRECを手元で操作するリモートコントローラー登場
レコーダーの液晶モニターをタッチして操作するのは面倒だ。REC-LAは、そんな場合に役立つリモコンだ。REC-LAは、ATOMOS製のモニター一体型レコーダーのRECを手元で操作できるリモコンだ。面倒なカメラやレコーダーの設定を一切切り替えることなく使用できる。リモートポートに刺すだけで、ATOMOSのREC操作が可能なのを特徴としている。
また、ジンバルのバランス調整をするうえで、できるだけカメラにリモートスイッチなどの接続は避けたいところだ。REC-LAは、ATOMOSのモニターに直接接続するので、バランスが崩れる心配をしなくてよいのも特徴だ。
ミラーレスカメラと電動ジンバル「TH-G3」を組み合わせて、デモを見せていただいた。例えば、リグを組むと両手がふさがり、ATOMOSレコーダーのモニターのRECボタンをタッチできなくなる。REC-LAはリグの手元にボタンを付けることで、ジンバル撮影をしながらREC操作が可能になる。一脚や三脚のパン棒にも取り付け可能だとしている。
REC-LAは、LANC対応機材に幅広く対応する。Blackmagic Video Assistやソニー、キヤノン、JVC、一部のパナソニックのカメラのRECボタンとして使用可能。また、電池式のためカメラからの電源供給を必要としない。リモコンとコード1本だけで、完結するシンプルなアクセサリーだ。