スーパーヒーロープロジェクト ©石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映
Blackmagic Designの発表によると、株式会社東映テレビプロダクション製作の「仮面ライダーセイバー」および2020年12月18日に公開された「劇場版 仮面ライダーセイバー」のリアルタイム合成にBlackmagic DesignのUltimatte 12が使用されたという。Ultimatte 12はDaVinci Resolve StudioおよびUltraStudio Miniと共に、アクションシーンの多い同作に不可欠な数多くのバーチャルショットの撮影に使用された。
「仮面ライダーセイバー」は1971年から放送が開始された仮面ライダーシリーズの最新作で、現在毎週日曜日にテレビ朝日系列で放送中の人気番組。コロナ禍の2020年に制作が開始された同作は、非常に多くの制約に直面した。同作の監督である柴﨑貴行氏は次のようにコメントしている。
柴﨑氏:新型コロナの影響で初回の2話はロケ撮影なしで制作する必要がありました。そのため、なるべく合成で処理できるようなストーリーにしています。Unreal Engineで作成したバーチャル空間でライダーたちが戦うようにしたんです。その代わりキーイングが膨大になるのでポストプロダクションでやっていては大変なことになると思い、現場でキーイングができるようなものがないか調べていてUltimatteを見つけたんです。検証してすぐに導入しました。
同作でビデオエンジニアを務めた株式会社アップサイドの佐々木基成氏は次のようにコメントしている。
佐々木氏:天気予報の番組と同じようなことができればいいのではないかということで、いろいろな機材を検討していました。そこで一番シンプルで高品質なシステムを組めるのがBlackmagic DesignのUltimatte 12だったんです。
Ultimatteは可動しやすいように撮影用の台車に組み込んで使用しています。映像の出力にはUltraStudio Mini MonitorとDaVinci Resolve Studioを使っていて、1カットにつき合成された映像、キー信号、オリジナルの映像の3種類を収録しています。
現場では他にも、Blackmagic DesignのコンバーターやBlackmagic Video Assistなども使っています。合成用の背景はDaVinci Resolveを使ってぼかしたり、拡大したりしています。現場でキーを抜いた後に、Ultimatteを使って色調整もしています。
それまでの仮面ライダーシリーズの合成部分は、全てポストプロダクションで行われていたという。
柴﨑氏:仮面ライダーシリーズは合成カットが普通の番組より多いです。通常はUltimatteで合成したものを使っていますが、ポストプロダクションでより細かく合成が必要な場面に関しては、Ultimatteで作ったキー信号を合成チームに渡しています。
以前はキー信号もない状態でポストプロダクションで合成をしていましたが、今は現場でキー信号を確認してキーが抜けやすいように撮影しているので、それによってポストプロダクション作業の軽減になっていますね。
また、Ultimatteは後からキー信号を生成することもできるので、場合によっては撮影後に再生しながらキー信号を作ることもあるという。
柴﨑氏:動きを速く見せるため、フレームレートを変えて撮っているものなどは、後から再生しながらUltimatteでキー信号を生成しています。
同作はシリーズ作品のため、普段よく使う特定のロケ現場があるという。そういったロケ現場に大勢のスタッフを連れていけない時もUltimatteを使用している。
柴﨑氏:撮影スタッフだけで背景を撮影しておいて、後からスタジオで役者と合成してその場で演技しているように見せているものもあります。仮面ライダーのようなキャラクターものは荷物が多くなるのでロケ撮影に同行するスタッフも通常の作品と比べてかなり多くなり、それによってコストもかなりかかります。また悪天候でロケが延期になると、スケジュールの調整も大変ですが、大人数でロケ場所に行かないことで交通費や撮影日数の削減に繋がっています。
柴﨑氏はUltimatte 12を活用することで、実際のセットが使えなくなった後にバーチャルセットを使う可能性についても語った。
柴﨑氏:各仮面ライダーシリーズで使われるレギュラーセットと呼ばれる専用のセットは、毎回シリーズを更新する度に壊して、新しいものを作っています。保管するコストの問題で、壊したくない場合でもそうしていますが、最近はVシネマでのスピンオフ作品で過去のシリーズの仮面ライダーが登場する場合があるので、そういった場合でも、写真や映像でセットを撮影しておけば、過去のセットを再度作らなくてもUltimatteで合成して、登場人物たちがそのセットに擬似的に存在しているようにできるのでは、考えています。