Cusp

Blackmagic Designの発表によると、2021年のサンダンス映画祭に出品されたドキュメンタリー「Cusp」のグレーディングに、シニアカラリストのアンドリュー・フランシス氏がDaVinci Resolve Studioを使用したという。同氏は、完全にリモートでのワークフローを用いる必要があったため、>DaVinci Resolve Mini Panel、Teranex Mini SDI to DisplayPort 8K HDRコンバーター、UltraStudio 4Kキャプチャー・再生機器を自宅にセットアップして、本作の作業を行った。

イザベル・ベセンコート氏とパーカー・ヒル氏が監督を務めた「Cusp」は、テキサスの基地の町に暮らす3人の10代の少女が、夏の終わりに思春期の暗部に直面する姿を追ったドキュメンタリー。同作は、2021年のサンダンス映画祭で封切られ、両監督は新進気鋭の映像製作者たちに送られるSpecial Jury Award for Emerging Filmmaker賞を受賞した。

フランシス氏:本作は、人生のショッキングな側面を映し出した作品です。このようなプロジェクトに関わる場合、110%の力を注ぐ必要があります。Blackmagic Designは最高レベルのツールを提供しており、完全にイマーシブなカラーが実現できると分かっていたので、本作の制作に使用しました。

べセンコート監督:本作は、テキサスの3人の10代の少女の真実をありのままに描いた親密なドキュメンタリーで、トラウマを抱えながら育つとはどういった意味を持つか、ということに焦点を当てています。現場で非常に長い時間を過ごし、主人公たちの生活を自らが体験しているかのような撮影を行ったので、テキサスの自然な美しさを偽ることなく、親しみが感じられるようなカラーで強調したいと考えました。

制作の初期段階からアンドリューにスチルを送り、ルックを決めるための作業を開始しました。これは、カメラで撮影を行う上での許容範囲を把握し、どれくらいの柔軟性が得られるか判断する上で非常に役に立ちました。

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ヒル監督:グレーディングでは、リモートでの作業は全く問題になりませんでした。アンドリューは、私たちが期待した以上に複雑なカラーを導き出してくれました。本作のルックは、物語のトーンを理解する上で極めて重要で、アンドリューは本当に素晴らしい仕事をしてくれたので、作品を一歩上のレベルに引き上げることができました。

新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し始めた際に、フランシス氏は自宅のセットアップを使用して仕事を行うことにした。その際、DaVinci Resolve Mini Panel、Teranex Mini SDI to DisplayPort 8K HDR、UltraStudio 4Kに加え、Apple Pro Display XDRモニターを導入し、ポストプロダクション施設での作業と同じレベルの高品質の作品をリモートでも提供できるようにした。

私の使用しているセットアップはプラグアンドプレイなので、驚くほど効率的です。世界有数のポストプロダクション施設で20年以上働いていますが、自宅のシステムは直感的なだけでなく、極めて精度が高いと気付きました。

UltraStudio 4KとTeranex Mini SDI to DisplayPort 8K HDRを使用することで、今モニタリングしているコンテンツのカラーが忠実であると確信が持てます。また、オンスクリーンのスコープは位置やサイズが極めて柔軟に調整できる点だけでなく、システムが非常に静かなことも気に入りました。

このセットアップは、ハードウェアを多く必要としないだけでなく、自宅の作業場で機材が占める領域を減らすことにもつながりました。DaVinci Resolve Studioからの信号をUltraStudio 4Kを介して私有のIPエンコーダーシステムに送信することで、地理的な位置に関係なく、クライアントが同じ部屋にいるかのように作業が行えました。これは、昨年から極めて重要な要素となっています。

同作のポストプロダクションの過程の1つにおいて、ロンドンに拠点を置くフランシス氏は、ニューヨークのポストプロダクション施設であるIrving Harveyのサミュエル・ガースキー氏に協力を求めた。ガースキー氏は、カメラメディアのコンフォームとコンソリデーションにDaVinci Resolve Studioを使用した。

フランシス氏:Irving Harveyでのコンフォームが終了した後は、同社が.drpファイルを私と共有するだけで、私はすぐにカラーグレーディングに取り掛かれました。二人ともDaVinci Resolve Studioを使用していたので、必要に応じて、簡単にコラボレーションが行えました。実際は、大西洋を超えて別々の大陸で作業をしていたのですが、まるで同じ建物の中にいるかのように感じました。

同氏にとってカラリストとしてのゴールは、大袈裟にならないようにしながら、色を使って物語を強調することだという。

私の色に対するアプローチは極めて独自で、DaVinci Resolve Studioは私にとって非常に有益な存在です。作業をする上で、可能な限り少ない調整で、一緒に仕事をする映像作家が持つビジョンを実現するように常に務めています。

そうすることで、作品が自然でエレガントに撮影されたように見えます。最も重要なことはカメラがそれを捉えたようにすることです。カラリストとして仕事をする上で、多くの面において、自分たちの行った作業が目立たないようにすることが重要です。

DaVinci Resolve Studioでワークフローを簡素化することで、レンダリングおよび品質管理のプロセスで完全な一貫性が得られるようになりました。クリエイティブなカラーグレーディングは非常にやりがいがある仕事ですが、カラリストが最終的なレンダリングを完璧な形で納品できない場合、クライアントからの信頼を失ってしまいます。

フリーランスで働く上で、単純なミスを防ぐことは最も重要です。本作では、カラーの過程が監督のビジョンと非常に上手く機能し、美しい結果を生み出しました。しかし、その後でもサンダンスのとても厳しい締め切りに間に合わせるように、2つのマスター、DCI P3、Rec.709を書き出す必要がありました。DaVinci Resolve Studioのおかげで、無事にゴールテープを切ることができました。