Blackmagic Designの発表によると、グレンデールに拠点を置くプロダクショングループ「Butcher Bird Studios」が、同社のスタジオ制作ワークフローにUltimatte 12を導入し、リアルタイムおよび収録されたバーチャルプロダクションの両方に対応したという。
フルサービスを提供するクリエイティブなプロダクションスタジオButcher Bird Studiosは、配信やAR/VR、バーチャルプロダクション戦略など、幅広い制作スタイルに対応しており、同社は様々なクライアントに向けて標準的なコンテンツを制作する一方で、Legendary Digital、Netflix、Twitchなどの顧客のために、インタラクティブなライブ・バーチャルイベントを制作することでも知られている。
Butcher Birdのディレクターであるジェイソン・ミリガン氏とスティーブン・カルコウト氏は、2019年にUnreal Engineを使い始めた。映画制作者たちがバーチャルプロダクションについて考えてはいたが、ほとんど活用されていなかった時である。
2020年には「マンダロリアン」のような大規模かつ大予算のプロジェクトではバーチャル技術が使われていたが、リード・テクニカルディレクターであるグリフィン・デイビス氏は、同じ技術をより低予算で使用できる方法があるはずだと考えていた。
デイビス氏:このテクノロジーに関して、自分たちは開拓時代にいるように感じることがあります。私たちは全員「マンダロリアン」の完成度を見て、「この技術を学びたいけれど、ディスニーのように無尽蔵の資金をかけることはできない」と思ったんです。私たちは試しては作り、そして作り直し、を何度も繰り返しました。
これらの技術を使ったButcher Birdの初期のプロジェクトには、ライブストリームでライブパフォーマンスを行うSFアドベンチャー「Orbital Redux」などがある。これらはすべて、様々なBlackmagic Designのハードウェアを使用して、同社のグリーンバックステージで制作された。
「Orbital」制作において、Blackmagic Design製品は重要な役割を果たしました。同社の機器がなければ、Orbitalは制作できなかったでしょう。
複数のBlackmagic URSA Mini、URSA Mini Pro、Micro Studio Camera、そしてATEMスイッチャーを使用しました。スイッチングを行うコントロール室に、このように多数のテクノロジーが接続されている状況では、全ての機器が問題なく相互に通信できることが必要です。
しかし、約3年後の今では、クライアントはプロデューサーに新しい革新的なソリューションを求めており、Butcher Birdはそれを実現する準備ができている。Unreal Engineをワークフローに組み込んだことで、高価で限界のあるLEDウォールテクノロジー使用しなくても、リアルタイムのバーチャルショットをステージ上で制作できるようになった。
これには、グリーンバックを使用する必要、つまり、Unreal Engineがネイティブで提供しているライブ合成の機能を使用する必要があった。しかし、バーチャル環境の生成はUnreal Engineに大きな負荷がかかるため、デイビス氏は、この合成には別のソリューションが必要だと考えた。デイビス氏は、Blackmagic Design Ultimatte 12をUltimatte Smart Remote 4と組み合わせて使用することで、別の方法で画像処理が可能だということに気付いたという。
Ultimatteだけで合成作業を完結できることに気付いたんです。これがUltimatteシステムの全機能です。
カメラからのフィードがフォアグラウンドとしてUltimatteに送信される一方で、同時にカメラのトラッキング情報がUnrealに送られ、バーチャルカメラの配置が行われる。バーチャルカメラの配置により、ソフトウェアはトラッキングされたアニメーションのバックグラウンドをUltimatteに送り返して、フォアグラウンドとの最終合成を行う。
また、ガベージマットをUltimatteに送り返すことで、カメラオペレーターはグリーンバックの制約を受けずに、撮影する世界全体を把握できます。
スタジオの設備に関しては、Butcher Birdは3式のUltimatte 12システムを導入し、それぞれにカメラ出力を送信することでマルチカム・プロダクションを実現している。これらの情報はUnreal Engineを搭載している3台のコンピューターにルーティングされる。
複数のBlackmagic SDI Distributionとコンバーターを使用してモニターフィードを多数のオペレーターに送り、リアルタイムのフィードバックを得ています。
ハードウェア機器が多くてケーブル配線が大変ですが、非常にフェイルセーフなシステムです。3つの独立したフィードを使用しているので、特定のUnrealコンピューターに過剰な負荷がかかることはありません。
それぞれのUnrealコンピューターがデータをUltimatteへと送り返し、Ultimatteが最終的な合成を作成する。その一方で、同じ情報をカメラオペレーター、ショーのスイッチングを行うテクニカルディレクター、そしてフィードと最終的な編集を収録する複数のHyperdeck Studio 12Gにも送信している。
ミリガン氏にとって、バーチャル環境をリアルタイムで制作することは、大規模なスタジオのソリューションを再構築する以上のことであった。
ミリガン氏:バーチャルプロダクションは新しい技術ではありません。特にスポーツや報道の分野では、特定の形態でかなり以前から存在していました。変わったのは品質、入手のしやすさ、そして価格です。最新のバーチャルプロダクション技術は、リアルタイムのVFXが市民権を得ることに貢献していますね。
Butcher Birdでは、ライブ配信、バーチャル・プレスカンファレンス、インダストリアルなど、従来このレベルのプロダクションが不可能であった市場で、映像制作ツールを使用できるよう最善を尽くしています。また一方で、これらの技術をストーリー性のある作品にも積極的に組み込むことで、"ロケ撮影"の領域を広げています。
低価格で手軽にバーチャル環境が構築できることで、Butcher Birdには独自の機会がもたらされた。それにより、Butcher Birdはクリエイティビティを高め、クライアントにとっての可能性も広がった。製作責任者のルイス・レイズ氏は、同社がサービス提供者以上の存在になれることを嬉しく思っているという。
レイズ氏:クライアントがプロジェクトを開始する際に一緒に仕事をするのがベストですね。クライアントがおそらく知らない可能性を引き出すことができるからです。ある意味で、私たちはクライアントの挑戦のクリエイティブ・パートナーとなるんです。
Ultimatte 12の導入により可能性が広がったことで、Butcher Bird Studiosの未来が大きく切り開かれたとデイビス氏は語っている。
デイビス氏:ありきたりに聞こえるかもしれませんが、私たちが導入した新しいシステムでは、自分たちの想像力のままに作品を作成できます。予算や時間、技術力に縛られることはありません。私は、デジタル映像制作から始まったこの流れが続くと予見しています。
制作手段が非常に身近になることで、プロも一般の人も同じツールを使って制作できるようになるので、努力と創造性が、優れた作品を分ける要因となるでしょう。この流れはこれまでにないほど制作者たちに迫っています。乗るには面白い波ですね。