日常で使用できるのSIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | C登場
シグマは2021年10月19日、ミラーレス専用設計でAPS-C対応の「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」を発表。それに合わせて同社代表取締役社長、山木和人氏登壇のオンラインイベント「SIGMA STAGE Online」を開催した。ズーム全域でF2.8でありながら小型軽量を実現した秘密について詳しい紹介が行われたので、その様子を紹介しよう。
山木社長は、SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporaryを発表。APS-Cミラーレスカメラ用に設計されたDC DNレンズで、Lマウント用とソニーEマウント用をラインナップ。コンセプトは「日常で使用する大口径標準ズームレンズ」としている。
F2.8大口径標準ズームレンズは非常に高い汎用性があり、風景やポートレート、イベント、街並みや建築物など、ほぼ全ての種類の写真撮影に使用可能な人気のレンズと説明した。
シグマは、このタイプのレンズをできるだけ多くの写真家に使用してほしいと考えているが、F2.8通しの大口径レンズは非常に大きく、重いと言われている。日常的なカジュアルな使用には不向きで敬遠されることが多い存在だったという。
レンズの最大直径をEマウントの外径以内に抑えたスリムな形状
そこで今回の新型18-50mmレンズを通じ、このような状況を一変させたかったと説明。あらゆる撮影状況に十分に対応できるコンパクトな大口径標準ズームレンズを目指したという。
シグマでは、過去に同じような標準ズームレンズとしてAPS-Cデジタル一眼レフカメラ用の「17-50mm F2.8 EX DC OS HSM」を提供したことがある。同製品の生産は既に終了しているが、そのコンパクトなサイズと良好な光学性能、手ごろな価格のおかげで、非常に高い人気を集めるレンズだったと振り返った。
今回の標準ズームレンズ18-50mm F2.8 DC DN | Contemporaryは、コンパクトな大口径標準ズームレンズの実現達成に向け、レンズの最大直径をEマウントの外径以内に抑えることを決定。このようなスリムなF2.8大口径標準ズームレンズの開発に成功することができれば、最もカジュアルな外出時でも十分に持ち歩き可能な便利で汎用性の高いツールとなると考えたという。
Eマウントカメラに装着した新製品18-50mm F2.8 DC DN | Contemporaryの様子。レンズの直径はマウントの外径からはみ出していない。
新製品18-50mm F2.8 DC DN | Contemporaryと先に紹介した旧製品17-50mmF2.8 EX DC OS HSMのサイズの比較。Lマウント用の新製品18-50mm F2.8 DC DNの全長は74.5mm、最大直径は65.4mm、重量は290g。ミラーレス用の新製品18-50mm F2.8の場合、設計条件は異なるものの、全長と直径はともにDSLR用17-50mm F2.8よりも20%近く小型化し、重量はおよそ半分を実現している。
手ブレ補正機構の見送りとワイド端を18mmスタートで小型化を実現
このようなコンパクトなボディを実現するため、複数の方法を採用したと語った。まず新製品18-50mm F2.8には手ブレ補正機構を搭載していない。これにより、レンズのサイズを大幅に小型化することができたという。
開放F値がF2.8と明るいことでシャッタースピードを速くでき、カメラの手ブレが発生しにくくなる。そのため、手ブレ補正機構が搭載されていたとしても、その効果は限定的だったのではと解説した。またミラーレスカメラのなかには、既に本体に手ブレ補正が組み込まれているものもあると言及した。
第2に、ワイド端の焦点距離は、旧型が17mmスタートであるのに対し、新製品は18mmスタートとしている。その差はわずか1mmだが、レンズのサイズに対しては驚くほどの影響を与えるという。
焦点距離18mmを35mm換算すると27mm、一方、17mmは25.5mmとなる。ボディを大幅に小型化するために、ワイド端をわずかに狭めることには妥協するだけの価値があるとシグマは考えたという。
さらにミラーレスカメラシステムのフランジバックが短いことも、このレンズをこれほどコンパクトなサイズに維持することを可能にする要素となったという。ミラーレスカメラはミラー機構がないため、フランジバックが大幅に短くなる。この構造が、特に広角ミラーレスレンズの大幅な小型化を可能になる。
ソニーa6600に装着した新製品18-50mm F2.8 DC DN | Contemporaryの様子。大口径標準ズームレンズを装着しているとは思えないほどシステム全体で小型を実現している。
SIGMA fp Lはフルサイズミラーレスカメラだが、クロップ機能でLマウント用のDC DNレンズを使用可能。フルサイズでは61MPという超高解像度を実現しているため、APS-Cサイズにクロップしても26MPの解像度を実現できるという。山木社長はfp Lユーザーにも、この小型ズームレンズを強くお勧めと語った。
SLDガラス1枚と非球面レンズ3枚を使用した光学系を採用
今回の新製品18-50mm F2.8 DC DN | Contemporaryはできるだけ簡単に持ち歩けるようにすることを目指す一方で、最高の光学性能の実現に向けても懸命に取り組んできたと説明した。
18-50mm F2.8 DC DN | Contemporaryのレンズ構成を見ると、SLDガラス1枚と非球面レンズ3枚を使用。それによりサイズを小型化すると同時に、極めて高い画質を実現できたという。
左が17-50mm F2.8 EX DC OS HSM、右が18-50mm DC DN | ContemporaryのMTFチャート。左のMTFチャートはワイド端のレンズ性能を、右のチャートはテレ端のレンズ性能を示している。
縦軸は光学性能を、横軸は像高を示しており、曲線の位置が高いほど、画質は高くなる。
特に画像の周辺部では新製品18-50mm F2.8の性能が17-50mm F2.8の性能を上回っている。このレンズの光学性能の最大の特長が、中心から周辺部まで安定して得られる優れた画質だという。
またズームレンジ全体でも安定した品質を保っている。そのため、このレンズはコンパクトなサイズであるという点だけではなく、中心から端まで全てのズーム域において一貫して高い光学性能を達成している点からも極めて高い汎用性を備えていると語った。
18-50mm F2.8ならではの特長のひとつに近接撮影が可能という点があるという。18mmの最短撮影距離は12.1cmであり、そのため非常に印象的なマクロ撮影的なクローズアップ撮影を可能にしている。
ゴースト専門チームを立ち上げ、ゴーストの発生を極限まで抑制
山木社長はこれまでのオンラインプレゼンテーションでも何度か紹介してきたが、18-50mm F2.8でもゴースト専門チームを立ち上げ、ゴーストの発生を最小限に抑えるべく、懸命に取り組んでいると紹介。
この専門チームでは、最初の試作品を製作する前から光学設計データと機械設計データを使用し、想定されるゴーストの発生問題のシミュレーションを実施。重度のゴーストが発生する可能性がある原因が判明した場合には、ゴーストの発生を抑制する方法についてレンズ設計チームに助言するという。
内部の機械部品による反射を原因とするゴースト発生のシミュレーションの様子。この方法を使用すれば、試作品を製作する前の段階でゴースト発生の原因を可能な限り解消することができるという。
最初の試作品が出来上がると、ゴースト専門チームによる写真の撮影を開始。この撮影は、フレーム内にさまざまな強い光源を使用し、さまざまな角度から行われる。写真の画質を損なうような重度のゴーストが見られた場合には、レンズ設計の見直しを設計チームに助言する。そして、結果に満足するまでこの過程を繰り返す。
左は最初の試作品で撮影された画像群。こちらでは目立つゴーストも、設計チームによる設計変更で量産前モデルでは大幅に抑えることができたという。
ゴースト専門チームの活動のもう一つの例で、上の画像の目立つゴーストが、量産前の試作品では下の画像のようになくなっている。
ゴースト専門チームによる細部にわたる献身的な作業のおかげで、18-50mmF2.8 DC DN | Contemporaryは最も厳しい照明条件下であっても、非常に高いコントラストの画像を生み出すことができたという。
優れたビルドクオリティを実現
夜の中には小型で軽量なレンズだが、安っぽく感じられるものも多く見られるが、その原因は設計アプローチと構造材にあると説明した。しかし、18-50mm F2.8 DC DN | Contemporaryは小型であるにもかかわらず、優れたビルドクオリティを実現していという。
この優れたビルドクオリティは、工場でのメカ設計者と生産エンジニアとの協力から生まれたものだという。レンズを開発する際には、複数の試作品や生産準備モデルを製作するが、設計者と生産エンジニアは、ひとつひとつの部品を細部に至るまで共同でチェックし、自らの手で組み立てることによって、ビルドクオリティとデザインの改善が可能な要素はないかを確認していると説明した。
まさにその緊密な協力のおかげで、このレンズは激しい使用にも耐えることができる頑丈なボディを手に入れることができたという。
AF速度は、ステッピングモーターと、シグマのソフトウェアを専門とする技術者が開発したAF制御アルゴリズムのおかげで、高速AF性能を実現することができたと語った。
18-50mm F2.8 DC DNは、動画にも理想的なレンズとした。動画撮影に最も使い勝手の良い焦点距離をカバーしているだけでなく、F2.8通しのおかげで18から50mmまで開放で撮影しても露出の値が変わらない。
加えて、超小型で軽量な設計はランガンスタイルの撮影や狭い場所での撮影、またジンバルに付けての撮影にも最適だという。高速かつスムーズで正確なAFも、シャープでプロレベルな映像撮影を可能としている。
18-50mm F2.8 DC DNの価格は税込73,150円。
最後に山木社長は、小型軽量、シャープで汎用性の高い大口径標準ズームレンズが、あらゆる撮影で美しく、インパクトの強い画像を実現するためのお役に立てることを願っているとして、プレゼンテーションをまとめた。