DaVinci Resolve導入事例:Netflix映画「レッド・ノーティス」の場合

Blackmagic Designによると、Netflixで配信中の映画「レッド・ノーティス」が、DaVinci Resolve Studioでカラーグレーディングされたという。 同作は、FBIのプロファイラーが、美術品泥棒を追う姿を描いた国際犯罪アドベンチャー。 ローマ、バレンシア、アルゼンチンのジャングルなど世界中のエキゾチックなロケーションで、ASCのマーカス・フェルデラー氏によって撮影された。

プロットは世界中をフィールドにして展開されるものだったが、撮影スケジュールがコロナ禍と重なり、国をまたぐ移動、ましてや映画撮影のための移動が不可能となる事態に直面したという。フェルデラー氏は、次のようにコメントしている。

フェルデラー氏:同作は世界中が舞台となっていますが、撮影方法を考え直す必要がありました。国をまたぐ移動ができないため、結局はアトランタの巨大なステージとバックヤードに、セットの大半を作ることになりました。セットで撮影したシーンには、エスタブリッシング・ショットを挟み込みました。これらのエスタブリッシング・ショットは、世界中の実際の場所で、少人数の撮影クルーによって撮影されたものです。

メインの撮影と、VFX、そしてフィニッシング間で、各シーンを構成する様々なエレメントや単一のショットを完璧にマッチさせることが課題となった。

フェルデラー氏:カラーや照明をシームレスにブレンドすることは大変な仕事です。

フェルデラー氏は、Company 3のカラリストであるウォルター・ヴォルパット氏と、プリプロダクションの段階から一緒に対策を練っていた。

フェルデラー氏:ウォルターは、これらのエレメントを組み合わせ、VFXショットと実際のライブアクションをマッチさせる優れた目を持っています。この作業はトリッキーですが、私の経験から言うと非常に重要なステップです。VFXショットがどれほど素晴らしくても、実際のカメラで撮影したような映像にするためには、グレーディングで何かしら手を加える必要があります。フレアやエッジコントラストなど、特定のレンズの特性をエミュレートしています。

ヴォルパット氏とフェルデラー氏は、これまでに5作を共同で制作しているので、コラボレーションワークには慣れていたという。

ヴォルパット氏:私はマーカスの仕事のスタイルと進め方が好きなんです。

初期の話し合いにおいて、フェルデラー氏とローソン・マーシャル・サーバー監督は、スクリプトの素晴らしい撮影場所を補完するために、赤、ゴールド、ブラウンのトーンのカラーパレットを用意した。ヴォルパット氏によると、2つの具体的なシーンがこれらのルックの誘因になったという。

DaVinci Resolve導入事例:Netflix映画「レッド・ノーティス」の場合

ヴォルパット氏:アクションの多くは、『赤い部屋』で起きています。この部屋とガル・ガドットのドレスは、まさに純粋な赤です。一方、ロシアの刑務所はこの真反対で、文字通り"寒い"場所なので、冷たいカラーパレットを使用しています。この2つのカラーが、作品全体を通じて強調されているんです。

ヴォルパット氏とフェルデラー氏は、初期のカメラテストで同作用の単一のLUTをDaVinci Resolve Studioで作成した。これは様々なトーンの作成や、自然なスキントーンの実現に役立ったという。

ヴォルパット氏:私たちは事前にDaVinci Resolveでルックを用意しておく方法を採っています。この方法だと、マーカスはオンセットでカスタマイズされたフィルムを使用しているかのように撮影することができ、複数のLUTを使用する代わりに、単一のLUTの特徴だけを考慮して照明を設定できます。

マーカスが確認するのは露出計と照明だけで、モニターをチェックする必要すらありません。これは、かつての映画監督たちが行なっていた撮影に近いですね。つまり、特定のフィルムに関してあらゆる知識を持ち、そのフィルムで自分たちが求めるルックを得る方法を知り尽くしているんです。最終的なグレーディングでは、私たちは一緒に作業してシーンのディテールを調整したのですが、イメージの全体的な属性を予め設定していたので、最終的なグレーディングでルックを一から作り直す必要はありませんでした。

コロナ禍で撮影スタイルの変更を余儀なくされたことにより、グレーディングなどあらゆる作業において新たな課題が生じたという。

ヴォルパット氏:主要な出演者全員で一つの現場で撮影し、それが終わると次の現場に移るという方法ではなく、別々の場所で撮影することもありました。 ロケ先で撮影したシーンもありますが、コロナ禍になってからは様々なエレメントをアトランタで撮影しました。そして他のシーンやピックアップショットを加えていったんです。

この方法で撮影を行なった結果、当初の見積もりよりもはるかに多くのVFXが必要となった。

ヴォルパット氏:時にはエキストラなしで撮影して後からエキストラだけを撮影し、それらの映像とバックグラウンドのエフェクトを合成する必要がありました。

このアプローチは、スケジュールにも影響した。

ヴォルパット氏:他の俳優が忙しいため、俳優一人だけで撮影することもありました。例えば、まずガル・ガドットのショットをすべて撮影して、次にドウェイン・ジョンソンのショットを撮影し、後からこれらを組み合わせたんです。

DaVinci Resolve導入事例:Netflix映画「レッド・ノーティス」の場合

VFXで多くの合成を行う一方、ヴォルパット氏はエレメントをブレンドし、VFXショットとその他のショットをシームレスに融合させられたとしている。

ヴォルパット氏:非常に美しいショットを撮影したとしても、周囲の素材とブレンドするための作業が必要になります。私たちがカラーの作業を行なっている最中に多くのエレメントがVFXで処理されて送られてきますが、同じシーン内でも数ヶ月前に撮影されている部分があるので、いくつかのツールを使用してルックを調整しました。

DaVinci Resolve Studioを使用することで、ヴォルパット氏はP3フォーマットのプロジェクトを作成する一方で、HDRを即座にレビューすることも可能であった。

ヴォルパット氏:DaVinci Resolveのカラースペース変換のおかげで、文字通り2〜3回クリックするだけで、同じイメージをP3とHDRで確認できました。このため、一つのシーンのカラーコレクションを行い、その後直ぐにHDRでレビューして必要な修正を加えることができました。

また、社内のコラボレーションツールを使用することで、膨大な量のピックアップショットやVFXを受け取り続けながらも、ヴォルパット氏は効率よくスピーディに作業できたという。

ヴォルパット氏:フィニッシング担当のエディター、クリス・ドエルと私は、DaVinci Resolveで同じプロジェクトで作業していました。クリスは、置き換えるショットにフラグを付け、代わりのショットをドロップして細かいVFXの作業を行います。彼のワークステーションではREC.709バージョンにしかアクセスできませんが、私は新しいショットを直ぐにシアターで確認できます。カラースペース変換を使用することで、REC.709、P3、HDRで確認できます。LUTを使用したり、ノードツリーに手を加える必要はありません。カラースペース変換で出力を調整するだけなので、非常に効率的ですね。作業の手を止める必要は一切ありませんでした。

DaVinci Resolve導入事例:Netflix映画「レッド・ノーティス」の場合