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6月7日、東京・六本木のTOHOシネマズ 六本木ヒルズにて、ARRIの待望の4.6Kスーパー35mmセンサー搭載の新製品「ALEXA 35」の発表イベントが行われた。この日はTOHOシネマズ 六本木ヒルズのScreen3で、主にALEXA 35のポテンシャルを実際の映像でスクリーンで体験できるイベントが用意された。
またその後、大田区・羽田に新しく開設した、ARRIの日本の新拠点となる、ARRI Japanオフィスの正式なオープンを記念したお披露目イベントが、多数の業界関係者を招いて開催された。
ALEXA 35デモリール試写イベント @TOHOシネマズ 六本木ヒルズ
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ALEXA 35は、ARRI社が満を待して発表した、4.6Kスーパー35mmセンサーを搭載し、解像度4K OVERを実現し、17ストップのダイナミックレンジと、さらに最新のカラーサイエンス技術"Reveal Color Science"や多彩なフィルムストックで表現できるARRI Textureなどを搭載した、シネマトグラファー待望のシネマカメラだ。スペックや機材概要はこちらの記事を参照してほしい。
この会場での実機展示はなかったものの、Screen3貸切で行われた同イベントでは、ALEXA 35で撮影された映像を、映画館のシアタースクリーンで業界関係者に披露しており、全2回の上映はどちらもほぼ満席の入りとなった。
イベント内容は、ARRI JapanのCarlos Chu社長の挨拶後、ARRI本社が作成した非常にわかりやすい日本語字幕付きのALEXA 35 Keynoteというプレゼンテーションリールの上映に続き、ALEXA 35の画質とその多彩なポテンシャルを引き出すため、世界の様々な条件下で製作されたALEXA 35のショートフィルムデモリール「ENCOUNTERS」が3本上映された。
ALEXA35 Keynote Presentation
「ENCOUNTERS」は、世界中の11人の映画製作者がALEXA 35を用いて、人生が交差し、経験が共有され、新しい方向性が見出される瞬間、出会いについて視覚的に説得力のあるストーリーを語るというテーマで製作された。様々な場所、レンズの選択、撮影スタイルの間で、映画製作者はカメラのダイナミックレンジの限界を押し広げ、ARRIテクスチャを探索し、色、低照度、ハイライトの限界値や極端な条件など、ALEXA 35が表現できる様々な世界が約3分のショートフィルムとして表現されている。
今回は11本の作品の中から、「Found it(日本)」、「An Ancestral Path(アルゼンチン)」、「The Swing(アメリカ/ハリウッド)」の3作品が上映された。
「Found it(日本)」
「An Ancestral Path(アルゼンチン)」
「The Swing(アメリカ/ハリウッド)」
どれも3分程度のショートムービーだが、このカメラの様々なポテンシャルを各地域の特徴的な光を再現しながら、引きだす表現力を十分堪能できる作品だ。日本からの作品「Found It」は、PlanDの伊達吉克氏がディレクターとDITを担当し、撮影をTakashi Noguchi氏が担当しており、夜の東京の風景、特に夜景の街並みや低照度でも日本的な高い色温度を基調とした、ある種の"TOKYO BLUE"と言える色表現を意識した作品に仕上がっている。
ちなみにアメリカの作品「The Swing」は、2020年のアカデミー賞で撮影賞のオスカーを受賞したエリック・メッサーシュミット(Erik Messerschmidt, ASC)氏が撮影を担当している。
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ALEXA 35は、いまのデジタルワークフローで必要とされる機能を必要十分条件を満たした、ある意味で、現代のシネマカメラの完成型といえるカメラだろう。特に" Reveal Color Science ARRI"は、これからのデジタルワークフローというよりも、プリプロダクションからプロダクション、ポストプロダクションまでの映像製作パイプライン全体に影響するような、カラープロセスに作用するカラーサイエンステクノロジーであり、これから映像制作に大きな影響を与えると考えられる。
さらに本体機能以外にもオペレーションスタイルに合わせた、機能デザインが施された周辺アクセサリーやiPhone、iPadはもちろん、Apple Watchにも対応した、遠隔操作が可能なアプリケーション、ARRI Camera Companionなど、いまの撮影現場との有機的関係をさらに深める様々な工夫が施されている。
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DSLR機が台頭してきた2012年ごろ以降、Log/RAW収録によるカラーサイエンスの進化と、ラージセンサーカメラの供給を進めてきた映画機材の世界のこの10年間だが、スチルの世界でのフルセンサーが35mmなら、映画の世界のフルセンサーはスーパー35mmだったわけで、レンズはもちろんのこと、周辺機器に至るまでスーパー35mmの制作環境であれば、今なお豊富な周辺機材などの環境が揃っている。また個人ベースでももはや欠かすことのできないカラーコレクション、カラーグレーディングのプロセスにおいても、ようやくデジタルネイティブ・カラーサイエンスと言える環境が揃ってきた。
その中で登場したALEXA 35は、まさに映画業界をはじめハイエンドな映像制作市場において、待望のカメラが登場したと言えそうだ。
ARRI Japan東京オフィス正式オープン @羽田イノベーションシティ
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その後、主要関係者のみを招き、ARRI Japan東京オフィスの正式なオープニングイベントが開催された。場所は、大田区羽田空港エリアに新しくできた、「HANEDA INNOVATION CITY(羽田イノベーションシティ)」。
すでに撮影関係者などにはデモルームなどが公開されていたが、この日がARRI Japanオフィスとしては正式オープンとなった。Carlos Chu社長のオープニングスピーチや鏡割りのイベントが行われ、その後オフィスとデモルームの見学ツアーが催行された。
羽田イノベーションシティ全体としては、まだ工事中の箇所も多くあり、施設全体の正式オープンは2023年の予定。ここのコア産業として「先端」と「文化」が掲げられている。先端の領域では「先端モビリティ」「健康医療」「ロボティクス」などの未来の暮らしをつくる企業が集まり、文化領域では「伝統」「観光」「食」「温泉」「音楽・映像・演劇」「芸術」という分野を軸に施設が整備。その一つとして、ARRI Japanが映画産業の企業として、海外とのアクセスも非常に良好なこの羽田の施設内にオフィスを構えた。
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京浜急行電鉄空港線、東京モノレールの天空橋駅から直結するオフィス棟には、ARRI Japanのメインオフィスの事務施設はもちろん、併設するリペアルーム、デモルームなども完備されている。リペアは簡単な修理や交換をメインにしており、重篤な機材状態の場合はドイツ本国へ送還されるという。
すでに2017年からARRI Japanとしての法人設立や具体的な拠点設置の動きはあり、これまでCarlos Chu氏がその実現に向けオフィス獲得やスタッフ拡充などに奔走してきた。昨年には京都・太秦での「ARRI祭」など、次第にその活動を具体化、明確化してきたが、2022年、ALEXA 35というフラッグシップカメラの発表とともに、いよいよ本格的なARRI Japanとしての日本での活動が、この羽田オフィスを拠点に展開されるようだ。
7日当日は、地元大田区の行政関係者をはじめ、映画撮影関係者、機材レンタル会社、スタジオ関係者、販売会社などの主要な業界関係者を集め、またアジア圏のヘッドオフィスである、香港のARRI ASIAオフィスからも、まだ新型コロナウイルス感染防止の渡航規制や帰国後の隔離規制がある中で、数名のスタッフが来日し同席、2つのイベントを大いに盛り上げていた。
またオフィスエリアとは別階にあるデモルームは、白ホリのスタジオになっていて、ALEXA 35の実機や新しい周辺パーツなども展示。翌7日より正規代理店等が主催するデモイベントが開始されている。
ARRI Japan株式会社
〒144-0041
東京都大田区羽田空港1-1-4 羽田イノベーションシティK210
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