アドビは、「Future of Creativity」調査を通じてクリエイターエコノミーに関する最新のデータと考察を発表した。
同調査の結果、クリエイターエコノミー、つまり、自身の創造性や才能、情熱を活かしてコンテンツ、商品、サービスをオンラインで収益化する人々を支援する経済の規模は過去2年間で1億6,500万人以上増加し、全世界で3億300万人のクリエイターが活躍していることが明らかになった。
- 過去2年間で1億6,500万人以上のクリエイターが世界のクリエイターエコノミーに参加、中でも米国(新規クリエイター数3,400万人)、スペイン(同1,000万人)、韓国(同1,100万人)、ブラジル(同7,300万人)で大きな成長が見られた
- クリエイターの4人に1人がオンラインで活動し、働き方、社会貢献、メンタルヘルスの領域で未来を再定義
- クリエイターの17%がすでにビジネスオーナーであり、39%が将来のビジネスオーナーになることを望んでいる
アドビのCreative Cloud担当エグゼクティブバイスプレジデント兼CPO(最高製品責任者)であるスコット・ベルスキー氏は、次のようにコメントしている。
ベルスキー氏:かつてないほど成長を遂げているクリエイターエコノミーは、個人、起業家、中小企業オーナー、コンテンツクリエイターが新しい方法で自己表現し、創造性や芸術性を追求できる、誰もがクリエイターとなるためのプラットフォームを提供しています。あらゆる分野のクリエイターが、アドビのクリエイティブツールを活用し、クリエイティブなインスピレーションや情熱を新たなキャリアやビジネスへと発展させています。
「Future of Creativity」調査は、世界のクリエイターエコノミーや、米国、英国、スペイン、フランス、ドイツ、オーストラリア、日本、韓国、ブラジルにおけるクリエイティビティの変化について、包括的な見解を示している。
同調査ではクリエイターを、デザイナー、フォトグラファー、フィルムメーカー、イラストレーター、趣味で活動する人など、仕事や情熱のためにオリジナルコンテンツを制作しているプロフェッショナルやノンプロフェッショナルと定義。また、インフルエンサーとは、クリエイターの中でもフォロワー数が5,000人以上で、自分のソーシャルメディアを活用して視聴者に影響を与えている人としている。
多様で活発なクリエイターエコノミー
2020年以降、クリエイターエコノミーは急激な成長を示している。
- 2020年以降、世界で1億6,500万人以上のクリエイターがクリエイターエコノミーに参入し、あらゆる市場を横断し大きく成長
- クリエイターエコノミーの世界的な動向を見ると、この期間、米国だけでも3,400万人(40%増)の新規クリエイターが参入。また、ブラジル(新規クリエイター数7,300万人)、韓国(同1,100万人)、スペイン(同1,000万人)もクリエイティビティの成長が著しい国・地域として浮上
- グローバル全体では4人に1人(23%)は、ソーシャルメディアやブログなどのオンラインスペースに写真、ビデオ撮影、クリエイティブな文章などをコンテンツとして発信するクリエイター。 日本では、6.6人に1人(15%)がクリエイターとしてオンラインで発信している
- クリエイターエコノミーの42%をミレニアム世代が、14%をZ世代が占めている
- クリエイターの48%が表現の自由という共通のゴールをモチベーションとして活動しており、金銭的な動機は3分の1以下(26%)
- 世界のクリエイターエコノミーにおいて、インフルエンサーが占める割合は14%に留まっている
仕事の未来を再定義する
仕事の未来を再定義するクリエイターエコノミーは、フルタイムであれパートタイムであれ、個人の働き方にプロフェッショナルな機会を提供する。とりわけZ世代やミレニアル世代は、従来の働き方とは異なるキャリアの形成に魅力を感じていることが判明した。
またこの調査を通じて、クリエイターがコンテンツ制作を収入源の一つとして期待する一方で、その成功には時間とコミットメントが必要であると認識していることが分かった。また、大半のクリエイターにとって創作活動は副業に留まっているものの、その多くが活動を拡大したいと考えていることが明らかになった。
- インフルエンサーの5人に2人が、創作活動を始めたきっかけとして、自己のキャリアとして活かせる可能性を挙げている
- クリエイターの17%がすでにビジネスオーナーであり、39%が将来のビジネスオーナーになることを望んでいる
- 大半のクリエイターにとって、創作活動は趣味や副業の範囲であり、10人に6人は他にフルタイムの仕事を持っている。日本では、55%が会社員としてフルタイム勤務、10%が会社員としてパートタイム勤務しているのに対し、12%がフルタイムの自営業、5%がパートタイムの自営業、その他(学生、無職、主婦、定年退職、休職中など)が17%おり、それぞれ活動している
オンライン社会貢献のカギを握るクリエイターたち
クリエイターは、社会貢献活動を推進する機会をオンラインに見出しており、自分が重要だと信じる社会貢献活動を支援するために行動している。
- クリエイターのほぼ全員(95%)が、自分にとって重要な社会的意義の推進や支援に向けて行動
- 世界のクリエイターが最も重要視している活動としては、「食と住まいの保障」(62%)、「社会正義」(59%)、「気候変動」(58%)が上位に挙げられている
- クリエイターは、自分の創造性と影響力を使って社会問題を解決することで、認知度を高め(51%)、声を上げることができ(49%)、社会問題に対する意見を述べやすくなる(47%)と考えている
クリエイターの「クリエイティブであること」への認識
自分自身を「クリエイティブである」と認識している回答者はブラジル78%、スペイン67%、ドイツ62%、イギリス61%、アメリカ58%、オーストラリア54%、フランス53%、韓国48%、日本40%だった。
また、「クリエイティブであることは、自分自身にとって難しいことではない」と認識している回答者はスペイン55%、アメリカ54%、ブラジル53%、ドイツ47%、イギリス44%、オーストラリア44%、フランス41%、韓国28%、日本16%だった。
日本は他国と比較してもクリエイターの自分自身に対する前向きな認識度が低いことが明らかとなった。
クリエイターとメンタルヘルス
この調査ではまた、クリエイターがコンテンツの作成と共有に費やす時間が長ければ長いほど、より幸福感を感じることも明らかになった。これは、SNSの利用が消費者に悪影響を及ぼす可能性を示したいくつかの研究結果とは正反対のものだった。
- 毎日コンテンツを作成し、週に10時間以上を制作に費やすクリエイターは、全体的に最も幸せであると申告
- ほとんどのクリエイター(69%)とインフルエンサー(84%)は、オンラインコンテンツの作成と共有が、他では得られないクリエイティブ表現の機会であると回答
- インフルエンサーの2人に1人は、音楽鑑賞(31%)、運動(30%)、自然の中に出かける(27%)ことよりも、SNSの使用やソーシャルコンテンツの作成がメンタルヘルス上、重要であると回答
「Future of Creativity」調査とは
アドビが実施した「Future of Creativity」調査は、オンラインにおける創作活動の最前線にいる人々、すなわちクリエイターエコノミーの一員としてのクリエイターを直接取材し、世界のクリエイティブがどのように変化しているかを理解することを目的としている。この調査では、様々な視点からクリエイティビティの未来を検証している。
調査方法について
「Future of Creativity」調査は、2022年5月に世界の9つの市場(米国、英国、スペイン、フランス、ドイツ、オーストラリア、日本、韓国、ブラジル)で、オンラインクリエイター約9,000人を対象に実施。アドビは、調査会社Edelman Data & Intelligenceと提携してこの調査の実施とデータ分析を行い、クリエイターエコノミーにおける主要なトレンドを特定した。
この調査では「クリエイター」を、創造的な活動(写真撮影、クリエイティブライティング、オリジナルSNSコンテンツ制作など)に従事し、SNSにおけるプレゼンスを高める目的で、これらの活動から生まれた作品を少なくとも毎月オンラインで投稿、共有、または宣伝している人と定義している。
データは、4,535人の一般的なクリエイター(18歳以上、各市場で500人未満)、5,111人のZ世代クリエイター(16~24歳、各市場で500人未満)から、誤差±1.4%、信頼度95%で収集された。