Blackmagic Designによると、トニー賞受賞歴のあるAlley Theatreは、編集、グレーディング、VFX、オーディオプロダクション・ソフトウェアであるDaVinci Resolve Studioをポストプロダクション全体に渡って使用し、デジタルで生の公演を世界各地の視聴者に対して配信したという。
テキサス州ヒューストンにあるAlley Theatreは、米国内で広く認識されている舞台芸術グループで、非営利の劇団としてはアメリカ屈指の存在だ。Alley Theatreは、2会場で毎年16作、各シーズン500公演近くをこなしている。しかし、コロナウイルスの流行によりすべてが変わり、デジタルでの公演が欠かせない存在となった。
ビデオ制作監督のビクトリア・B・サガディ氏によると、Alley Theatreの上層部は、ファンとのつながりをさらに深めるために、劇場での鑑賞と同じ経験をデジタルで行う必要があると判断した。これにより、社内でのビデオ制作部門が必要となり、DaVinci Resolve Studioを基軸としたポストプロダクション・ワークフローが導入された。
2020〜2021年のシーズンはすべてデジタルでの公演となり、配信された14作を世界各地の視聴者が遠隔から楽しむ形となった。2021〜2022年のシーズンはハイブリッドで運営され、生の公演が終了してから2週間以内に世界中で視聴可能なデジタル版が販売された。
サガディ氏:
パンデミックの最中は、自宅で皆さんに生の公演の素晴らしさを楽しんでいただくことが目標でした。
最終的な書き出し直前まで、ポストプロダクションを通してDaVinci Resolve内で作品に対する作業が行われていました。今もResolveは、私たちの制作ワークフローにおいて欠かせない存在です。Blackmagicのキーボードとパネルを使用することで、すべてを一つのシステム内で処理できます。これらのツールにより、作業が極めて高速で、効率的で、直感的なプロセスとなりました。
デジタル版の制作におけるポストプロダクションでは、DaVinci Resolve Studioのエディットページのマルチカム・インターフェースが用いられ、公演の再生や、生の公演と同じようにカメラの選択が行われた。しかし、ライブプロダクションとは異なり、再生を止めたり、巻き戻したり、編集の順序を入れ替えるなどの作業が簡単に行えたという。カット割りが完了したら、Fairlight Desktop Consoleを用いて、Fairlightで音響のマスタリングを行った。これにより、すべてのオーディオがタイムコードで適切に同期され、イコライザーが適用され、劇場での音響に限りなく近づけられた。Alley Theatreの音響部門もDaVinci Resolve StudioとFairlight Desktop Consoleを使用してミックスの作業を行った。
ビデオ部門は、DaVinci Resolve Micro Panelを用いてDaVinci Resolve Studioで生の公演をグレーディングし、Fusionページでキーイングや特殊効果を適用した。また、一部の作品はBlackmagic Pocket Cinema Camera 4Kデジタルフィルムカメラで撮影され、その美しさにサガディ氏は非常に満足したという。同カメラのメニューは直感的なタッチスクリーンであるため、劇団員も簡単に操作ができたと語る。
現在は劇場に観客を入れた生での公演に戻った。これは、Alley Theatreにおける使命の中核だ。しかし、デジタルコンテンツの制作は、今も重要な活動のひとつとなっている。2020〜2021年のデジタルシーズン以降も、Alley@Homeは上演前後に観客との交わりを続けるための方法の一つとなり、短編物語やシーズンの作品やテーマに関連するシリーズなどを配信している。
将来的にAlley Theatreはデジタル版を拡張し、舞台裏のデジタルコンテンツや教育的なアウトリーチプログラムなどを通して、視聴者により興味深いコンテンツを提供していく予定だ。Alley Theatreは、Blackmagic Designの製品を使用してデジタル配信用のコンテンツを制作しているほか、公演の舞台上で実際に表示されるコンテンツや、投影のレベルをさらに高めて、観客に全く新しく、息を呑むような経験を味わってもらうための制作を行っている。
サガディ氏:
DaVinci Resolve Studioにはすべてが内蔵されているので、あらゆるタイプのプロジェクトを極めて簡単に扱えます。
Alley Theatreでは、マルチカム編集機能を頻繁に使用しています。この機能のおかげでプロセスが簡略化されました。私は、作業のほとんどをエディットページで行っています。また、自動配置ツールでは、簡単にオーディオとビデオトラックをタイムコード使って、時にはオーディオだけで簡単に同期できます。何より、Fairlight、カラー、Fusionが同一のアプリケーションに統一されているので、書き出しやラウンドトリップを行う必要がありません。
Fairlight Desktop Console、DaVinci Resolve Speed Editor、Editor Keyboard、DaVinci Resolve Micro Panelを追加したことは、今後もAlley Theatreにおけるワークフローと柔軟性に非常に大きなインパクトを与えていくことになるでしょう。非常に多くの時間を節約できるため、チャンネルにEQと適用したり、オートメーションを使用して、Resolveで画面を切り替えることなくパネルでシーンをミックスできます。
DaVinci Resolve Editor Keyboardのジョグシャトルや専用キーでは、様々なコントロールをマウスでクリックしたり、ドラッグする回数を減らすことが可能です。制作中にSmartView 4Kモニターを使用することで、色に忠実で鮮明なカメラプレビューを確認でき、複数のSmartView Duoパネルは、観客を入れた公演におけるマルチカム撮影に使用しています。