ソニーは、米国ラスベガスにて現地時間2023年4月16日から開催される国際放送機器展「NAB Show 2023」に出展する。
「Creativity Connected(クリエイティビティ コネクテッド)」をテーマに、最新のイメージング商品に加え、クラウドやIP技術を活用した最新のソリューションやライブプロダクション、バーチャルプロダクションのソリューションなどを現地ブースで展示する。
コンテンツ制作業界では、リモート制作など制作手法の変化や、大量のコンテンツ視聴ニーズに応えるための迅速なコンテンツ制作の課題などがあるという。ソニーは、多彩な映像表現を可能にする豊富なイメージング商品群だけでなく、撮影から編集、コンテンツ管理・配信に至る制作ワークフローにおいて、クラウドやIPの最新技術を活用し、より効率的で高品質な映像制作環境を提供するとしている。
主な展示内容は以下の通り。
オンプレミスクラウド・ライブプロダクション「Networked Live」
Networked Liveは、クラウド上の制作リソースとオンプレミスの制作機器・人などのリソースをハイブリッドに活用することで、放送局などの効率的なライブ制作を実現する、ソニーが提案するライブプロダクションの枠組み。Networked Liveの導入により、場所や規模を問わずライブ制作の環境を構築することが可能になる。
Networked Liveで新たに提供する、統合監視・一括制御におけるシステムカメラの遠隔操作を可能にするカメラコントロールネットワークアダプター「CNA-2」、効率的なメディア伝送を実現するメディアエッジプロセッサー「NXL-ME80」、クラウド上でも使用できる開発中のソフトウェアスイッチャーなどを展示する。
「Networked Live」の主な特長と展示内容
複数拠点のリソースやネットワークの、遠隔での統合監視・一括制御を実現する。制御システムの一元管理が可能なことに加え、各システムは独立して稼働するので、システムの可用性・信頼性に優れているという。また、小規模から大規模なシステムまで規模を問わない設計・運用ができ、ネットワーク規模の柔軟な変更も可能。
新たなカメラコントロールネットワークアダプター「CNA-2」(2023年10月発売予定)の導入により、ソニーのシステムカメラを離れた場所から遠隔監視・操作することも可能になる。これにより、複数拠点のリソースやネットワークの統合監視・一括制御に加え、システムカメラの制御や接続までを簡単に一元管理可能になるという。
オンプレミス/クラウドで活用可能なスイッチャー
リモート制作向けの、オンプレミス/クラウドシステムで活用可能な各種スイッチャーを提供。スイッチャープロセッシングエンジンを分散して配置することで、映像制作スタッフの効率的な配置を行うことができ、柔軟な制作手段を提供するとしている。
オンプレミスで使用するスタッカブル構造のライブプロダクションスイッチャー「MLS-X1」や、クラウド型スイッチャーシステムの「M2 Live」に加えて、ソフトウェアスイッチャーを開発中だといい、今回参考展示される。
同スイッチャーは、バーチャルプライベートクラウド環境やデータセンター、COTS サーバーなど、ユーザーの多様な環境に組み込んで使用可能。「MLS-X1」や他社が提供するライブ制作システムと組み合わせることで、オンプレミス環境とクラウド環境を組み合わせて運用する事が可能となり、ライブ放送の規模や場所を問わず、更に柔軟な制作環境を構築できるとしている。
ネットワーク帯域の効率的な運用
リモート制作では、拠点間の大容量の映像伝送時に、データ圧縮による効率的な映像伝送やコスト軽減が重要だとされる。ソニーでは、リモートでのライブ映像制作も可能な低遅延かつ高画質な伝送、さらにネットワークコストを抑える高圧縮を実現する新たなHEVCコーデックを開発しているという。
今回、同技術を活用したメディアエッジプロセッサー「NXL-ME80」(2023年秋発売)を商品化する。
また、Nevion社が提供する、最新の小型・軽量なソフトウェアベースIPメディアノードである「Virtuoso RE」を展示する。同機は、統合されたIP LAN/WANネットワークで、様々なリアルタイムのデータ転送、処理、監視などを安全に実施することを可能にするという。日本市場への導入は検討中だとしている。
この他、ソニーはアマゾン ウェブ サービス(AWS)の推進するvLRP(Virtual Live Remote Production) Partner AccelerationInitiative に参画し、クラウド上でのライブ制作ワークフロー構築を他のパートナー企業と共に加速していくとしている。
クラウド制作プラットフォーム「Creators’ Cloud」
メディア業界向けに提供する、クラウド上での効率的なコンテンツ制作・共有・配信を実現するクラウド制作プラットフォーム「Creators’ Cloud」の映像制作ワークフローを展示する。「Creators’Cloud」は、クラウド技術と多様なカメラ、通信技術、AI、メタデータなどを組み合わせて、新たな映像表現や迅速かつ効率的な制作を実現する。
Creators’ Cloudの映像制作ワークフローでは、ソニーの多様なカメラで撮影した静止画・動画をクラウドへアップロードし、クラウド上でAIを活用した自動編集等や映像解析、複数名での共同編集・制作、クラウド中継システムなどを提供している。さらに、AAI 映像解析サービス「A2 Production」を中心に、コンテンツ管理やオンライン編集、ワークフロー自動化といった映像制作に必要な機能やサービスをユーザーの要望に合わせてクラウド上に構築し、ソフトウェアサービスとして提供するソリューション「A2 Production カスタマイズソリューション」の国内向け提供を2023年4月より開始。また、提供開始に先立ち、2023年1月から株式会社TBSテレビとの実証実験を開始している。
さらに、ソニーは「Creators’ Cloud」において、映像制作ワークフローの各プロセスで価値を提供する企業や、クラウドプラットフォームを提供する企業などとの共創を進めており、同展示会に合わせて以下3つの事例が開示された
- Avid社の報道制作向けの管理システムと、クラウドへ映像伝送を行うソニーのクラウドカメラポータル「C3 Portal」をMarquis Broadcast社のミドルウェアによって連携するカメラ映像ファイルの自動転送ワークフローを実現。同ワークフローを、米国の主要放送局であるSinclairに導入予定(ブース展示あり)。
- 2022年9月に開発発表した、ソニーのカメラ映像をTeradek社のエンコーダー製品を経由して「C3 Portal」へアップロードする連携機能の商用版の提供開始(2023年3月より提供開始)(ブース展示あり)。
- 2023年中に、Atomos社のAtomos Cloud Studio(ACS)がソニーのクラウドメディアストレージ「Ci Media Cloud」に対応予定。対応後、Atomos CONNECT製品と接続したカメラで記録したプロキシーファイルを「Ci Media Cloud」にアップロードが可能。
今年2月に、法人顧客向けの「Creators’ Cloud」をベースに、個人向けに新たに展開する「Creators’ Cloud」を提供開始した。個人向けの「Creators’ Cloud」で提供する、カメラで撮影した動画・静止画を簡単にクラウドストレージへアップロードしたり、カメラの遠隔操作を可能にするスマートフォン向けアプリ「Creators’ App」を、デジタル一眼カメラ「α(Alpha)」と連携したデモも展示する。
多彩な映像表現を可能にする豊富なイメージング商品群
ソニーは、豊富なイメージング商品群により多様なクリエイターの撮影ニーズに応えています。新商品の31型4K HDR対応マスターモニターの最上位機種や、マルチフォーマットポータブルカメラ2機種および既存シリーズの機能拡張を展示する。
また、デジタルシネマカメラ「VENICE 2」を含む映像制作用カメラ製品シリーズCinema Line、デジタル一眼カメラα(Alpha)シリーズなどの最新のイメージング製品に加えて、フルサイズセンサー搭載レンズ交換式旋回型カメラ「FR7」を機能拡張する、ファームウェアVer.1.1およびVer.2.0の一部もブースで紹介する。
31型4K HDR対応マスターモニターの最上位機種「BVM-HX3110」(新製品)
厳密な色評価やカラーグレーディングが可能で、幅広い現場で使用できる、31型 4K HDR対応のマスターモニター「BVM-HX3110」を展示する。同商品は、更なる高輝度や高速動画応答を実現するソニー独自の新パネル技術を用いたTRIMASTER HX技術を搭載。また、コンテンツクリエイターから要望が多いSMPTE ST 2110信号用の標準IPインターフェイスにソニーの業務用モニターとして初対応し、「Networked Live」で活用する際の利便性が向上するとしている。
マルチフォーマットポータブルカメラ「HDC-5500V」「HDC-3500V」(新製品)
幅広い映像表現と、システムカメラとしての優れた操作性を実現するマルチフォーマットポータブルカメラの新商品を展示する。「HDC-5500V」および「HDC-3500V」は、グローバルシャッター機能付き2/3型3板式4Kイメージセンサーを搭載し、HDC-5500およびHDC-3500を機能拡張した新たなシステムカメラ。
新開発の光学式可変NDフィルターユニットと大型ビューファインダースライド機構を標準搭載し、HDCシリーズが培ってきた技術を生かしながら、コンサートやスポーツ、ドラマなどで、幅広い映像表現やより柔軟な撮影スタイルを実現するとしている。現行機種をアップグレードすることができる追加オプションも提供する。
「FR7」のファームウェアアップデート
2023年5月以降に公開予定のファームウエアVer.1.1により、「FR7」は、Ethernet経由のS700プロトコル対応によるRCP(リモートコントロールパネル)やMSU(マスターセットアップユニット)でのリモートコントロール機能の追加に加えて、Ethernetケーブル1本でPoE++給電時、内部記録や再生も可能になる。
また2023年9月以降に公開予定のVer. 2.0により、AR/VRシステム用のカメラトラッキングデータ出力(FreeD プロトコル)への対応のほか、外付けレンズコントロールユニットによるズーム調整や、PTZ Trace機能によるカメラワークの記録、再生が可能になる。
映像制作の自由度と柔軟性を高めるバーチャルプロダクション
高精細な背景映像を高コントラストで豊かな色再現で映し出すCrystal LED と柔らかく繊細な描写や、なめらかなスキントーン、美しい色再現を可能にするデジタルシネマカメラ「VENICE」シリーズを組み合わせた、バーチャルプロダクションによる映像制作の展示を行う。
ブースでは、2023年夏以降に提供開始するバーチャルプロダクション向け「VENICE」シリーズ対応のソフトウェア「Virtual Production Tool Set(バーチャルプロダクションツールセット)」(新製品)を出展する。カラー調整・やモアレの回避アラートなどの機能でプリプロダクションから撮影時までバーチャルプロダクションのワークフローを効率化する。クリエイターが色味や画角の調整に要していた時間を削減し、よりクリエイティブな映像制作活動ができるようにサポートする。
また、シネマ制作に加え、放送局のスタジオ用途を想定したシステムカメラ「HDC-5500」シリーズをスムーズに切り替えられる制作環境を再現し、カメラ出力にARでグラフィックスを重畳させるデモンストレーションなどを行う。
バーチャルプロダクションは、映画やCMに加えて、番組制作などに拡大していくと予想しており、同分野のクリエイターの映像制作の幅を広げる提案を紹介するという。