フォトロン、高速現象の3Dモデル動画化受託サービス「High Speed Volumetric Capture」開始。数十台のハイスピードカメラ使用

背景・目的

自動車開発市場における「エアバッグが展開される前の折りたたみ方」は、長年の研究結果として非常に複雑化しており、CAEによるシミュレーションにおいても多数の条件分岐により膨大な計算時間を要している。そのためエアバック展開試験では、シミュレーションの効率化やシミュレーション結果と実際の展開現象がどれほど合致しているのかを把握する必要性が課題となっているという。

しかし、多くの撮影では、2～3台のカメラを同期させての撮影となり、複雑に折りたたまれているエアバッグの展開現象を細部まで確認することは困難だった。

フォトロンでは、このような課題を解決するため、1秒間に1,000枚以上の撮影が可能なハイスピードカメラ41台を用いて対象を撮影し、そこから取得した膨大な画像データを合成・最適化して3Dモデル動画にする技術「High Speed Volumetric Capture（ハイスピードボリュメトリックキャプチャ）」（特許出願中）の開発に成功したという。

この技術を活用することにより、従来の解析シミュレーションソフトウェアでは数カ月はかかっていた開発工数を、たった数日に短縮することが期待できるとしている。

また、数十台のハイスピードカメラを試験現場に用意することは容易ではないため、実験・撮影可能なスタジオ（栃木テクニカルセンター）も新たに開設。同システムを受託サービスとして提供し、より多くの人が利用できるようにした。ハイスピードカメラを取り付ける試験設備は幅約6m×奥行約4mのサイズとなり、周囲も車1台分を動かせる収納スペースを確保し、実車によるエアバッグ展開試験も可能。今後も設備を充実させ、エアバッグ展開試験以外の要望にも柔軟に対応していく方針。

同社は、「HSVC」システムはエアバッグ展開試験だけではなく、様々な実験においてシミュレーションと実現象の合致度を見える化し、実験結果および解析情報のMBDやデジタルツインでの活用促進に貢献するとしている。

「High Speed Volumetric Capture」の特長

40方向以上からの高解像度動画撮影

HSVCは数十台のハイスピードカメラを使用し、被写体を全方位的に撮影するため、死角が発生するリスクを軽減。高解像度カメラによりエアバッグの展開現象も細部まで撮影できる。

これまで見えていなかった部分を見ることで、製品の改良方法検討やシミュレーションの精度向上に繋がるとしている。

自由視点から確認できる3D形状動画

数十台のハイスピードカメラで同期撮影し、データを張り合わせることで、3Dモデルデータを作成。通常のボリュメトリックキャプチャは静止画だが、「HSVC」は動画データの3Dモデルを作成できる。

高速現象を自由な視点で確認でき、これまでは見えていなかった部分の情報をシミュレーションに反映する。

ハイスピードカメラの撮影専門技術スタッフが対応

3Dモデルを作成するためには高い精度の撮影データが必要となる。試験物の色、サイズ、材料特性などを考慮した照明や撮影手法、データ化をワンストップで対応する。

高い精度の撮影データから高品質の3Dモデルを作成することで、シミュレーションデータとの差分を把握することが可能。

High Speed Volumetric Captureの仕様