Blackmagic Designによると、、ニューヨークに拠点を置く映画およびテレビ番組のポストプロダクションスタジオ、Nice Shoesのシニアカラリストであるマーシー・ロビンソン氏が、DaVinci Resolve Studioを使用してHBO Filmsのドキュドラマ「Reality」のグレーディングを行ったという。
同作の大部分は一つの部屋の中で展開されるため、ロビンソン氏は、一貫性を保ちつつ微妙なニュアンスを作成するという、カラリストにとって非常にやりがいのある仕事を請負うこととなった。
2023年のベルリン国際映画祭でワールドプレミア公開された「Reality」は、元アメリカ空軍隊員でNSA(アメリカ国家安全保障局)の翻訳者から内部告発者となった、リアリティ・ウィナー(演:シドニー・スウィーニー)に対するFBIの尋問の実話を元にした作品である。ティナ・サッター監督は、実際の尋問の記録から、演劇「Is This a Room」を作成して成功させ、さらにFBIの尋問の音声記録を一字一句使用して、その演劇を優れた室内映画「Reality」へと再変換した。
ポール・イー撮影監督によると、「Reality」は、意図的に範囲を狭めているという。イー氏は次のようにコメントしている。
イー氏:ある家が同作の舞台となっており、ほとんど何もない一室で、数時間の間にストーリーが展開されます。映画の冒頭で視覚的な刺激を制限することで、カメラやキャラクターの動きや照明の変化が意図的であることがわかるようにしたかったんです。「Reality」のストーリーが展開するにつれ、視覚的言語は、手続き的で客観的なものから、主観的で直感的なものへと徐々に変化していきます。
カラーグレーディングでロビンソン氏がこだわったのは、殺風景な部屋から人物を少し浮き上がらせたり、時にはわずかに、時には明確にカラーを強調するという、ニュアンスの調整であった。さらに、ロビンソン氏はグレーディングのプロセスの大半を、一貫性の維持に費やしたという。ロビンソン氏は次のようにコメントしている。
ロビンソン氏:一つの部屋が主な舞台だったんですが、微細な連続性が気になるので注意を払う必要がありました。この部屋はかなり殺風景で、蛍光灯で照らされています。厳しさの中にも本物らしさを感じさせたい、それと同時にビジュアル的にも魅力的にしたいと思っていたので、グレーディングで微妙な調整を行いました。部屋には普遍的な美しさを出したかったのですが、その部屋自体あまりきれいではなかったので、その点が課題でした。
ポールが素晴らしいカメラエフェクトを実現してくれたので、私たちはその一部をグレーディングでマッチさせる必要がありました。Resolveに関しては、いくつかのOFXグローとティルトのツールを多用しました。また、窓や蛍光灯のバランスを保つためにキーイングツールも使用しました。
イー氏:撮影場所が限られているので、グレーディングに時間はかからないだろうと最初は思っていたんです。しかし撮影場所が限られていたことで、色の一貫性を保つことが非常に重要になりました。例えば、1つのショットで全体的な輝度が変化すると、タイムライン上で、両方向の数分に影響が及ぶ可能性があります。
私とマーシーが一緒に仕事をする上での一番の強みは、グレーディングに関して、技術的ではなく、抽象的に話し合えることだと思います。彼女は色彩理論を理解し、Resolveを使いこなす能力を持っているので、撮影現場の思考と雰囲気を組み合わせて、スクリーンに投影することができるんです。
ロビンソン氏:「Reality」は、すばらしい映画であり、私にとって思い入れのあるプロジェクトです。ティナやポールと一緒に仕事をするのは本当に楽しいです。彼らは才能溢れる、最高のコラボレーターですね。
「Reality」は現在、HBOで放送中、Maxで配信中。