Blackmagic Designによると、優れた先進映像コンテンツを表彰する米ルミエール・アワード 2023の最優秀8K作品賞を受賞した関西テレビ制作の短編映画「moments」の撮影にURSA Mini Pro 12Kが使用されたという。また、同作のポストプロダクションにはDaVinci Resolve Studioが使用された。
様々なテレビ番組を制作する関西テレビでは、「UHD-works」と呼ばれる同社技術スタッフによる超高精細映像制作チームがあり、2016年から様々な作品を制作している。
今回の「moments」は、未来に向けて残したいものというテーマで、淡路島に暮らすある家族の暮らしに密着した短編ドキュメンタリー。監督、編集、カラリスト、プロデューサーを務めたのは、同社エディターの矢野数馬氏。撮影は同社カメラマンの樋口耕平氏が務めた。
樋口氏は、次のようにコメントしている。
樋口氏:今回は12K解像度でドキュメンタリーを撮影するということで、実は不安があったんです。
普段は報道でドキュメンタリーを撮っています。UHD-worksでは、作品によってドキュメンタリーもフィクションも撮りますが、これまでは4Kや8Kで撮影していました。高精細になればなるほど、フォーカスを合わせるのが非常にシビアになります。URSA Mini Pro 12Kは今回初めて使いましたが、URSA Viewfinderもすごく見やすくて撮り始めてからは不安を感じなくなりました。ドキュメンタリーは、撮影対象者の表情や仕草、言葉などを撮り逃さないことが大事なので、カメラの機動性は重要です。URSA Mini Pro 12Kはシネマカメラですが、設定を都度メニューに入って変えなくても、本体のボタンやツマミでコントロールができるので、ドキュメンタリーの撮影にも使いやすかったです。
同作の監督、プロデューサーであり、ポストプロダクション作業も担当した矢野氏は、次のようにコメントしている。
矢野氏:当初12Kで仕上げることは考えていなかったのですが、編集の段階でほとんどクロップしたりズームしたりする必要がなく、これなら解像度を損なわずに仕上げられるなと思って12Kで完成させました。また、私たちの作品を横浜にある資生堂S/PARKの16Kディスプレイで上映したいと思っていました。実際にその巨大ディスプレイで観た本作は異次元の美しさで、12Kで制作して本当に良かったと感じました。
また、矢野氏はポストプロダクションでカラー版とモノクロ版の2種類を作成した。
矢野氏:以前からモノクロ作品を超高精細のHDRで制作したいと考えていました。モノクロはダイナミックレンジを最大限活用した光と陰影表現ができます。そこで色要素のない環境で輝度やカーブの調整を行いました。色がない分、特に暗部の階調を追い込めることがわかりました。そこからさらに、モノクロに着色する意識で、カラーバージョンも制作しました。撮影時に自分が記憶した色を忠実に再現することを大切にグレーディングしました。
樋口氏:Blackmagic RAWで撮っているので、基本的にはグレーディングを前提にした撮影をしました。とはいえ、光の捉え方や陰影みたいなものは、やはり撮影の中でしか表現できないものです。そういう部分のURSA Mini Pro 12Kの表現力は、モノクロを見た時により強く感じましたね。光の捉え方も美しいカメラだなと。12Kだからといってギラついたり過度に鮮明だったりするわけでもなく、実際にグレーディングした映像を見て、感動しました。
矢野氏:12Kという解像度ながらBlackmagic RAWは取り扱いがしやすく、DaVinci Resolveでプロキシとフル解像度再生を切り替えながら作業しました。編集中にBlackmagic RAWを現像してショットのカラーを確認することもあり、1つのソフトウェアで最後まで仕上げられるのは非常にありがたいです。