一般社団法人 日本ポストプロダクション協会(JPPA)調査・事業委員会が、2023年度「ポストプロダクション設備調査」(2023年11月の設備状況)の結果をまとめた。同調査は、JPPA会員各社のポストプロダクション設備状況の動向を把握するとともに市場の変化を把握するために、2004年度から隔年で実施し、2019年度以降は毎年実施している。

今回の2023年度調査は、正会員社89社(2022年度調査時は90社)に対して、2023年11月現在の設備状況に関するアンケート調査を行ったもので、82社(同85社)から調査結果を得ることができた。

調査結果によると、ノンリニア編集室は78社が687室(2022年度は81社が645室)/リニア編集室は25社が89室(同32社が122室)を保有し、合計(編集室総数)は776室(同767室)が稼働している。また、MAルームは76社が314室(同77社が320室)、グレーディング専用ルームは16社が44室(同18社が50室)を稼働している。なお、調査の回答社内訳は、会員社の新規入会・退会による増減や回答/非回答社の動向により変動がある。

編集室の総数は2020年度に初めて対前年比減となり、2022年度まで減少傾向が続いたが、2023年度は3年ぶりにプラスに転じた。これは、リニア編集室が2006年度調査の249室をピークに減少傾向が続き、初の2桁台となる89室(2022年度は122室)の稼働となった一方で、ノンリニア編集室が687室(同645室)と大幅な増加に転じたことによるものだという。

今回の調査では、リニア編集室を撤退して、その全室をノンリニア編集室に改修する社もあるなど、特徴的な動きが見られた。

また、全ノンリニア編集室のうち4K以上に対応する編集室は、59社が207室(2022年度205室/2021年度186室/2020年度176室)を稼働しており、高画質化が継続している結果となった。

240329_JPPA_top

※オフライン/オンライン編集室の区分は、設置するシステムによる区分ではなく、ポストプロダクション事業者が申告した運用区分によるもの。

※2019年~2023年調査の回答社内訳は、会員社の新規入会・退会などの増減や回答/非回答社の動向により同一ではない。

ノンリニア編集室数は過去最大に

ノンリニア編集室(回答社:78社)の総数は687室で、その内訳は、オンライン編集室が363室(2022年度329室)、オンライン/オフライン編集室242室(同237室)、オフライン編集室が82室(同79室)だった。

ノンリニア編集室の総数は、近年では2015年度:496室/76社、2017年度:536室/80社、2019年度:630室/83社、2020 年度:610室/80社、2021 年度:623室/77社、2022 年度:645室/81社と推移。また、調査開始初期の2006年度調査では、ノンリニア編集室は351室/72社が稼働し、専用システムによるハイエンドクラスのノンリニア編集室が約88%を占めていた。一方、2013年頃からミドルレンジクラスのノンリニア編集室が大きく増加して、ノンリニア編集室総数は過去最大になった。

また、編集室の区分として「4K(以上)対応編集室」として回答しているのは207室/59社(2022年度は205室/58社)で増加傾向が続いている。なお、4K対応とは、編集ソフトによる対応ではなく、4K対応のマスターモニター設置といった4K視聴環境が整った編集室をカウントしている。

リニア編集室の減少傾向が続く

回答のあった82社のうち、リニア編集室を保有するのは25社で、その総数は89室(2022年度122室/回答社32社)で減少が続いている。リニア編集室総数のピークは2006年度調査の249室で、約65%減となった。

なお、リニア/ノンリニアのハイブリッド編集室についても、リニア編集室としてカウントしている。調査回答では89室のうち81室がサブシステムとしてノンリニア編集システムを設置またはKVM 運用しており、リニア編集単独での編集室は大きく減少していることがうかがえる。

MAルームは約38%がサラウンド対応に

2023年度のMAルーム(回答社:76社)の総数は314室で、119室/48社がサラウンドに対応できると回答があった。また、サラウンド対応119室のうち、Dolby Atmosに対応するのは17室となっている。なお、MAルーム総数は前年と比較して減少しているが、会員社の入・退会によるものだという。

グレーディング専用ルームはほぼ横ばい、編集室のマルチ化が拡大

2023年度のグレーディング専用ルームは44室(回答社:16社)で、2022年度の50室/18社と比較して減少した。これは、グレーディング専用ルームを有していた会員社の退会(閉鎖)と、専用ルームから編集/グレーディングのハイブリッド型への変更が要因だという。

また、グレーディングルーム44室のうち、4K対応マスターモニターは33式、4K対応の波形モニターは18式だった。また、スクリーン・プロジェクター方式のグレーディングルームも6室あった。

なお、ここで計上しているグレーディングルームは専用室として運用している部屋であり、ノンリニア編集室にグレーディングシステムを併設している部屋は含まない。ノンリニア編集室687室のうち、グレーディングシステムを併設している部屋数は111室で、カラーグレーディングとフィニッシングを同時に行う編集スタイルの増加など、ワークフローの変化が背景にあり、編集室のマルチ化が進んでいると考えられるという。