同システムで描画されたSIGGRAPHの文字とロゴマーク

宇都宮大学オプティクス教育研究センターの熊谷幸汰助教、早崎芳夫教授とJVCケンウッド未来創造研究所の研究グループは、インタラクティブな体積映像を描画できるボリュメトリックディスプレイシステムを開発した。同ディスプレイは,手のひらサイズの体積映像を実世界へ直接表示できることに加え、ユーザーの動きに合わせて映像を操作できるインタラクションを可能にするという。

同研究成果は、2024年7月28日から8月1日にかけて、アメリカのデンバーで開催されたコンピュータグラフィクス分野のトップカンファレンスであるSIGGRAPH2024のEmerging Technologiesで展示発表された。

発表のポイント

  • 2光路ホログラフィックレーザー描画法によるボリュメトリックディスプレイシステムを提案。
  • 2光路のレーザーが連携して映像描画する光学システムとその描画法を開発することで、高い画素密度かつ手のひらサイズの体積映像を実現。
  • ユーザーの手の動きを映像描画にリアルタイムに反映させるシステムを構築し、体積映像とのインタラクションが可能に。

研究背景

ボリュメトリックディスプレイは、画素を実世界に体積的に生成することで映像を描画する技術。ヘッドマウントディスプレイのようなデバイスを装着することなく、360°方向から複数人が3D映像を見ることができる。

同研究グループでは、フェムト秒レーザーによって生成された画素と空間光位相変調デバイス(LCOS-SLM)を利用したホログラフィックレーザー描画法を提案し、それを用いたボリュメトリックディスプレイを開発してきたが、映像サイズの大型化に課題があったという。

同研究では二つのレーザー描画を連携動作するディスプレイシステムとJVCケンウッドのLCOSデバイスを採用した描画法を開発することで、高い画素密度かつ手のひらサイズの体積映像を実現。さらに外界の動きを認識し、体積映像描画に反映させるシステムを構築することで、体積映像をユーザーがリアルタイムに操作できるインタラクションを可能にした。

研究成果

同提案におけるボリュメトリックディスプレイシステムは、二つのホログラフィックレーザー描画光学系から構成される。それぞれの光学系は、ガルバノスキャナーと可変焦点距離レンズで構成される3次元ビーム走査システムを有することによって、図(a)に示すように、10×10×10cmの体積中に発光点を3次元的に生成できる。

図(b)は、二つのレーザー描画光路を用いて描かれた球の体積映像。描画パターンをシステムに入力することで、任意のパターンを描くことが可能になる。

展示の来場者は、体積映像コンテンツを鑑賞でき、さらに手の動きを介して映像をインタラクティブに操作する体験ができたという。

図(a)画素の3次元的な生成
図(b)2つの球の体積映像

今後の展望

今後、ビーム走査と空間光変調器による集光点設計の連携描画を、ハードウェア改良およびアルゴリズム開発の両面から推し進め、より複雑な形状の物体を体積映像として表現できるボリュメトリックディスプレイシステムの実現を目指すという。

発表情報

  • タイトル
    Volumetric Display with Dual-Path Holographic Laser Rendering
  • 会議名
    ACM SIGGRAPH 2024 Emerging Technologies
  • 著者名
    Kota Kumagai、Hisashi Oka、Kazuki Horikiri、Tetsuji Suzuki and Yoshio Hayasaki

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著者

  • 熊谷 幸汰|Kota Kumagai
    宇都宮大学オプティクス教育研究センター、助教
  • 岡 尚志|Hisashi Oka
    株式会社JVCケンウッド未来創造研究所
  • 堀切 一輝|Kazuki Horikiri
    株式会社JVCケンウッド未来創造研究所
  • 鈴木 鉄二|Tetsuji Suzuki
    株式会社JVCケンウッド未来創造研究所
  • 早崎 芳夫|Yoshio Hayasaki
    宇都宮大学オプティクス教育研究センター、教授