キヤノンは、RFマウントの採用により小型・軽量設計と多彩な映像表現を実現した6Kフルサイズシネマカメラ「EOS C80」を2024年11月に発売する。希望小売価格はオープン。市場実勢価格は税込89万6,500円。

EOS C80は、6Kフルサイズセンサーを搭載するCINEMA EOSシリーズのシネマカメラだ。CMOSセンサーは、EOS C400と完全に共通。小型ボディだが、撮影を止めない仕組みや薄型内蔵NDユニットを搭載。オートフォーカスには、静止画に求められるものとは少し違うCINEMA EOS共通の動画撮影に最適化されたAFを導入。デュアルピクセルCMOS AF IIと呼ばれるキヤノン独自のAFシステムを搭載して、よりブラッシュアップした小型シネマカメラを実現してきている。

6Kフルサイズ裏面照射積層CMOSセンサーを搭載

静止画モデルでも裏面照射積層CMOSセンサーを採用しているが、EOS C80のセンサーは配線層や読み出し層を少し変えた6Kフルサイズ裏面照射積層CMOSセンサーを採用している。画素の呼び出しの速度やノイズ感の少なさなど動画に優れたセンサーとなっている。

6Kという解像度の使いやすさもポイントとしている。納品形態はまだまだフルHDもしくは4Kが中心であり、最終的な4Kでの仕上げ時に「もう少し画角に余裕がほしい」と思うことがある。6Kセンサーはそんな4K納品にベストマッチな画素数といっていいだろう。

高感度を含む3つのBase ISO

従来機種の「EOS R5 C」では2つのBase ISO設定をもっていたが、EOS C80ではEOS C400でも話題になった3つのBase ISOに対応する。広いISO感度の範囲をカバーした、安定した高画質を実現できる仕組みをもっている。

Canon 709やCMT 709を搭載

EOS C80には、「カスタムピクチャー」にEOS C400にも搭載されている「Canon 709」を搭載する。色味は、黒を締めて中間輝度域のコントラストを上げたクリアな印象を特徴としている。また、スキントーンを重視した設計で、微妙な肌の色の変化を素直に再現する。かつフィルムライクなルックを特徴としている。また、編集工程に時間をかけられないシチュエーションにも最適なルックでもあるという。Canon 709はファームアップで順次、これまでのCINEMA EOSにも対応中だ。

もう一つ、CMT 709と呼ばれる少しダイナミックレンジが広くて、モニタリング用途にも使えるLUTを搭載する。編集工程の最初のスタート地点として使いやすい色味としている。

肌のトーンを最重要視しつつフィルムライクな画作りを実現するCanon 709。撮って出してみたいな場面でも便利だ

機動力、信頼性

ミラーレスの血を継いでいる。EOS C70共通の特徴である、グリップに操作系を集約する仕組みを採用している。

薄型電動式NDユニット稼働の様子。従来のCINEMA EOSカメラと同等の5段階(拡張時)の明るさ調整が可能

EOS C70と共通でRFマウントの中にしっかりとNDユニットを内蔵する。明るさ調整は2Stopごとに可能で、通常モードでは6Stopまで設定可能。拡張モード時で最大10Stopの明るさ調整に対応する。

ノンストップ記録を可能にした排熱機構

ボディ左側面に吸気口を搭載
ボディ右グリップ側2ヶ所に排気口を搭載

EOS C80は長時間撮影でも停止しない仕組みを取り入れている。吸気口と排気口は、カメラ内部の基盤に直接空気が当たらない上位機種と同等の独立気室ダクト構造を採用。吸気と排気によって埃やチリなどのセンサーへの付着やカメラ内部に悪影響を及ぼさない仕組みを実現している。比較的過酷な環境であったとしても動画撮影に対応できるような配慮を採用している。

動画撮影に最適化されたAF

CINEMA EOSのオートフォーカスは、静止画の素早く正確な直線的に照合するオートフォーカスだけでなく、動画撮影向けの滑らかで自然なフォーカスの仕組みも採用している。

動画撮影の業界には、元来のマニュアルフォーカス文化が今でも根強く残っている。CINEMA EOSは、そんな映像表現に寄り添ったオートフォーカスを目指しており、まるで人がフォーカス送りをしているかのような滑らかに被写体へ移っていくフォーカス制御の実現を特徴としている。

また、オートフォーカスのスピードやレスポンス、オートフォーカスの動作条件、人の顔を検知した時のみフォーカスをするなどの制御項目を豊富に用意している。撮影者の意図に合わせてカスタマイズできるオートフォーカスを実現可能だ。

デュアルピクセルCMOS AF II

人物が後ろ姿になっても追尾を続けてくれる

静止画で進化してきたオートフォーカスを採用してきている。EOS C70ではピントの検出範囲は画面内縦横約80%の範囲に限られていたが、EOS C80はデュアルピクセルCMOS AFの第2世代を搭載することで、全域の追従に対応する。

また被写体の検出対象の「人物」から、一度捉えたら逃がさない対象として「瞳」「顔」「頭部」に加えて、「胴体」に新しく対応した。

また、「被写体」の「人物」に加えて「動物」の検出にも対応。「犬」と「猫」のみの対応となるが、しっかりと動物にピントを合わせて追うことが可能だ。

デュアルSDカードスロット

インターフェースには、SDカードの2スロットを採用する。最近の記録メディアはCFexpressが流行りだが、EOS C80ではUHS-IIのSDカード2スロットを採用。例えばバックアップのための同時記録や編集用プロキシの同時記録、異なるフォーマットや解像度の同時記録などに対応する。

充実のインターフェース

EOS C70との違いとして、SDI出力端子、内蔵Wi-Fi、Ethernet端子、マルチアクセサリーシュー端子を搭載する。ソロスタイルのクリエイターはSDI端子を使用することは少ないかもしれないが、大きな現場などへの対応の面では歓迎だ。

左側面の本体上部にSDI端子を搭載
左はEOS C70、右はEOS C80。EOS C80はSDI端子が追加された
左側面に3ピンのミニXLR端子を2つ搭載する
    テキスト
左はEOS C70、右はEOS C80。ジョイスティックは斜めにも操作しやすい形状に変更している。握ったときに触りやすい位置に場所が変わっている
※画像をクリックして拡大
EOS C80のジョイスティックの形状
左はEOS C80、右はEOS C70。EOS C80は底面の光軸方向に1/4インチの三脚ネジ穴が1個増えている

内蔵Wi-FiやEthernet端子からリモートコントロールが可能。縦と横のUIにも対応する。こちらもEOS C400と同等となっている。

縦撮りの三脚穴はEOS C70から搭載している。EOS C80よりメニューの縦表示にも対応する

最後に、EOS C80とEOS C400の違いを紹介しよう。両機は、同じRFマウントで35mmフルサイズCMOSセンサーを搭載する。ISO感度やBase ISO、NDフィルターも同じ。もっとも大きな違いは最大フレームレートで、EOS C400は6K60P、EOS C80は6K30Pに対応。それに合わせて記録メディアや端子の対応に違いがある。

一方、ソニーFX3やFX6とキヤノンEOS C80を比較するなら、EOS C80は内部でのRAW撮影に対応。このあたりが大まかなアドバンテージといえそうだ。

キヤノンは、「EOS C80タッチ&イベント」を開催する。11月発売予定のEOS C80を、東京と大阪のキヤノンフォトハウスで早速体験できる。完全予約制。興味のある方はぜひ応募してみてはいかがだろうか。

■イベント概要(完全予約制)

  • キヤノンフォトハウス銀座
    日時:9月13日(金)・14日(土) 11:00〜17:30(各20分)
  • キヤノンフォトハウス大阪
    日時:9月20日(金)・21日(土) 10:30〜17:00(各20分)

予約方法:9月11日(水)10:00 Canon.jp専用ページにて受付開始