RAIDは、同社取り扱い製品を披露するプライベートショー「RAID映像機器展2024」を8月から10月にかけて全国7都市で開催中だ。さらに全国各地で行われている大手放送機器展にも積極的に出展を行っている。RAIDのこれら出展で興味深いのは、一部会場で初公開や初展示がある点だ。見逃せない新発表をピックアップして紹介する。

SIRIUSのVENICE 2/FX6対応を初お披露目

まずは、「CREATORS EDGE 2024」RAIDブース中から、注目度の高かった新製品や新発表を紹介しよう。ブース内でもっとも注目を集めていたのは、ソニー「VENICE 2」対応「SIRIUS」の初公開だ。

SIRIUSは、PROTECHとRAIDが合同で開発したシネマカメラを放送用カメラにビルドアップする光伝送システムだ。もともとは、REDの小型シネマをライブプロダクションで使用するためのカメラユニットとして開発がスタート。小型のKOMODOとショルダーアダプターとの組み合わせやREDのタッチパネルでコントロールに対応を特徴としている。

RED KOMODOにSIRIUSを搭載した様子

それが同社ブースで、12G対応でソニーをサポートするSIRIUSの新モデルを初公開した。ソニーのコントロールを入力して、ソニーのオペレーションすべてに対応する。新しいSIRIUSはVENICEやVENICE 2で動くし、「FX6」にも対応する。REDに限定しない、オールマイティなカメラアダプタユニットとして登場する。この展示は、恐らくカメラメーカーのソニーにとっても衝撃だったはずだ。

実機デモの詳細を紹介しよう。

SIRIUSとVENICE 2との組み合わせでは、遠隔地側のリモートコントロールユニットからアイリスなどのカメラコントロールが可能。

VENICE 2のコントロールが可能なソニーのリモートコントローラー「RM-B170」

ソニーFX6のデモでは、LANやUSB Type-Cに接続したモニターでカメラの制御が可能。こちらも光伝送を経由してリモートコントロールの遠隔操作が可能になっていた。

ソニーFX6とSIRIUSの組み合わせ

リモートコントローラーを操作して、FX6のアイリスをコントロールしている様子

さらに「まだ言えないことが多い」と前置きをしたうえで明かしてくれたのは、今後のラインナップの拡張予定についてだ。SIRIUSは現在発売中の「送り・リターン:1系統・1系統」のほかに、「カメラアウトとモニターアウトのリターンは2系統欲しい」という現場の意見を反映して「送り・リターン:2系統・2系統」、「送り・リターン:1系統:2系統」に対応した3モデル構成の発売を考えているという。もっともシンプルな「送り・リターン:1系統・1系統」は値下げを予定している。さらに光伝送装置の上位モデル「POLARIS」は、電源容量を拡大してARRI ALEXAシリーズへの対応を予定中としている。

SIRIUS、POLARISの今後の展開は、Inter BEEで正式発表を予定しているという。続報に期待しよう。

RED KOMODOシリーズの大幅な値下げを発表

Creators EdgeのRAIDブースでは、RED KOMODO/KOMODO-Xの価格改定を発表。こちらもかなり話題になっていた。KOMODOは最初に発表した時とほぼ同じ税込874,500円。KOMODO-Xは、一気に約50万円の値下げとなる税込1,226,500円。

個人所有も夢ではない。購入できる価格を実現してきた感じだ。

SmallHDから「BURANO」「FX6」対応のカメラコントロールライセンスが間もなく登場

もう1つ、Creators EdgeのRAIDブースで気になったのは、SmallHDのソニー「BURANO」「FX6」用オプションカメラコントロールライセンスの展示だ。

SmallHDのモニターは、モニターからカメラコントロールが可能になる有料オプションをラインナップしている。そのカメラコントロールに、今後「BURANO」「FX6」対応が登場する。つまりカメラ上に乗せて監視用モニターとして使いつつ、さらにモニターからBURANOやFX6カメラコントロールも対応するようになる予定だ。

カメラコントロールは、別途ライセンスキットの形で販売が行われている。現在、ARRI用、RED DSMC2用、RED RCP2用、ソニー VENICEシリーズ用の4種類を販売中だ。

撮影関係のメニュー項目を操作することでカメラコントロールが可能だ。ユーザーはカメラボディから煩わしい操作をメニューから潜っていかなくても、モニター上で直感的に操作することができるようになる。

SmallHDの対応機種については、現行機種であればライセンスの付与が可能だ。ただしソニーFX6のカメラコントロールはLANコネクターで通信を行うために、SmallHD側にLANコネクタを備えたモデルが対象となるかもしれない。詳細については、正式発表の情報を確認してほしいとのことだ。

「RAID映像機器展」はユーザーサポートを目的として開催

次に、全国で開催中のプライベートショー「RAID映像機器展2024」について紹介しよう。当記事では、北陸放送機器展2024に併せて開催した「RAID映像機器展2024 in 北陸」を取材した。

「RAID映像機器展」は三大都市圏の放送機器展に足を運べない方向けのイベントと思われがちだがそれは違う。ユーザーサポートを目的として開催しているという。

RAID映像機器展では、REDのカメラユーザーを対象にカメラクリーニング、SmallHDのモニターユーザー対象にモニターキャリブレーションを無償で行う。取材時に訪れた「RAID映像機器展2024 in 北陸」でも、ケーブルテレビ局からREDのクリーニングの持ち込みがあった。

本来は、クリーニングやモニターキャリブレーションはRAIDの窓口への郵送で対応となるが、業務で使用中の機材の発送は難しい。だったら、RAIDが全国を回って出張サポートの機会を設けようというのがRAID映像機器展開催の真骨頂であるという。

機器展会場に入って驚いたのはおもてなしの豪華さだ。ホテルのバイキングスタイルのサンドウィッチとポテト、コーヒーが用意されており、じっくり実機に触れて体験したり、話を聞くことが可能になっていた。

Thypochからシネレンズライン「Simera-C」登場

「RAID映像機器展2024 in 北陸」の展示商品で、一番興味を引かれたのはThypochブランドのシネレンズライン「Simera-C」だ。これはこれまでのRAID映像機器展では出展してこなかった商品の展示。しかも世界初公開前の展示だ。

28mm・35mmのT1.5のプロトタイプの実機が展示した。今後のラインナップは、21mm、28mm、35mm、50mm、75mmの5本を予定しており、すべてT1.5で統一して登場予定としている。

基本的には内部の設計構造自体は今までのミラーレス向けに発売中のSimeraシリーズを踏襲。フォーカスの回転角やギアの搭載などの部分でシネマ向けに最適化している。Eマウントで発売をスタートし、今後のRFマウントの登場を予定している。

ATOMOSモニター&レコーダーに対応するExascend製8TB SSDを展示

もうひとつ注目を集めていたのは、Exascendの2.5インチSSD「EXSE4」約8TBモデルの展示だ。EXSE4は、ATOMOSの「Ninja/Ninja Ultra」対応のSSDで、もちろんAtmosの認定を受けている。

これまで、NinjaやNinja Ultra対応のSSDといえばAtomX SSDminiの選択が一般的で、容量は500GBや1TBに限られていた。ExascendのSSDは、これまでの「960GB」「1920GB」「3840GB」のラインナップに加えて、新たに7,680GBが登場。約8TBの容量を活かして、ProRes RAWをノンストップで記録可能。

また、ATOMOSは収録の使用前には必ずレコーダーでメディアをフォーマット(Secure Erase機能)して使用してほしいとしている。一方、ExascendのSSDは、高度なガベージコレクションアルゴリズムを備えているため、頻繁にフォーマットする必要はないとしている。「ATOMOS推奨メディア一覧」では、Secure Erase機能を不要と発表している。

■NINJA ULTRA対応ドライブの例

                                         
メディアブランド ExAscend ExAscend ExAscendExAscend
メディア名 SE4 SE4 SE4SE4
メディアタイプ SSD SSD SSDSSD
容量 960GB 1.92TB 3.84TB7.68TB
Secure Erase機能不要 不要不要不要
ProRes RAW HQ 最大8K 30p、5K 60p、4K 120p Camera to Cloud
ProRes RAW HQ 最大6K30p、4K 60p、2K 240p ProRes 422 HQ / DNxHR HQX 最大4k DCI 60p、2K 240p Camera to Cloud
ProRes RAW 最大6K 30p、4K 60p、HD 120p ProRes 422 HQ / DNxHR HQX 最大4k DCI 60p、HD 120p
ProRes RAW HQ 最大4K 30p、HD 120p ProRes 422 HQ / DNxHR HQX 最大4k DCI 30p、HD 120p

●印はテスト済みおよび承認済み

Exascendから「CFexpress Type A to Type B」変換アダプター登場

3つめはExascendの「CFexpress Type A to B Adapter」の展示だ。ソニーのCFexpress対応カメラはType Aが多く、キヤノンとニコンはType Bが多い。2種類のメディアの規格に困惑しているクリエイターも多いはず。

同アダプターは、Type AのCFexpress カードをType Bに変換可能。差し込むだけで、高速転送速度が可能としている。一部のミラーレスカメラで動作実績があるという。

RAID映像機器展2024は今後も大阪、東京、名古屋で開催予定だ。近郊に事務所を構えている方で興味を持った方は、ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。

RAID映像機器展2024 in 東京

  • 開催日:2024年9月26日・27日
  • 会場:フジヤカメラ店 動画館 店内
  • 住所:東京都中野区中野5丁目62−9 KIK NAKANO 1st.BLD 1F

RAID映像機器展2024 in 名古屋

  • 開催日:2024年10月7日・8日
  • 会場:株式会社みんなと本社
  • 住所:愛知県名古屋市昭和区御器所3丁目25−7