LUMIXのコンシューマー事業とコネクトのプロAV事業が1つに集結
パナソニック エンターテインメント&コミュニケーションは2024年9月11日、ボックススタイル4Kマルチパーパスカメラ「AW-UB50」および「AW-UB10」(UBシリーズ)を発表した。この発表で気になったのは、LUMIXシリーズのボックスカメラ「BGH1」や「BS1H」との違いや新製品がLUMIXブランドでない点だ。さらに、パナソニック コネクト株式会社のイメージング事業部がパナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社へ移管されて第一弾のカメラ新製品という点も関心を引いた。
2024年4月の事業統合によって、コンシューマーのイメージングビジネスユニット責任者の津村敏行氏やプロフェッショナルプロAV事業総括の谷口昌利氏は現在一緒の組織に属する。さらに映像の企画制作・イベントの企画運営・映像編集のパナソニック映像株式会社も同じ組織に移管され、パナソニックはイメージ技術すべてを1つの事業に集結してきた感じだ。そんな新しくなった環境から誕生した初のカメラ製品とあって、いろいろな狙いや思いが込められているはずだ。
新製品の特徴をテーマにパナソニック エンターテインメント&コミュニケーション イメージングソリューション事業部の宮地宗徳氏、粟飯原雅之氏、尾関隆治氏の3人に話を聞いた。
UBシリーズは放送・業務用映像システムとして発売
――パナソニック エンターテインメント&コミュニケーションは、もともと担当商品としていたLUMIXデジタルカメラに加えてパナソニック コネクトの業務用カメラ部門が一緒になったという理解で合っていますか?
宮地氏: その認識で間違いありません。今までは、民生用と業務用に分かれていましたが、徐々に垣根がない時代になりつつあります。ご存じの通り、これまではパナソニック コネクトとパナソニック エンターテインメント&コミュニケーションに会社が分かれていて、展示もはっきり分けていました。それが徐々に解消されていく見込みです。お客様もソリューションで垣根なく商品を選んでいただくようになってきています。展示も時代に合わせていかないといけないと感じています。
――今回発表されましたUBシリーズは、LUMIXブランドではない点が気になりました。LUMIXはプロからアマチュアまでのスチルカメラと動画を中心としたブランドですが、LUMIXとして発売しなかった理由は何でしょうか?
粟飯原氏: まさに今、詳しいところを詰めているところです。例えばLUMIXのBGH1では、それ単品でお使いただく、もしくはBGH1とBS1Hをセットでお使いただくことを想定したコンセプトを組んでいました。
今回のUBシリーズについては、リモートカメラのシステムの中でお使いただくことをメインコンセプトとしています。ですので、プロAVのスイッチャーやコントローラーからリモートカメラを操作できる放送システムの中に入れていただいて、同時にコントロールできるシームレスな統合を特徴としています。ライブイベントでリモートカメラをお使いただいているプロAVのお客様に届けたい思いからLUMIXブランドではないことに致しました。
――今はまだ業務用カメラとLUMIXに一線がある感じですね。
粟飯原氏: そうですね。しかし今後のことを考えると、そこは垣根をなくしていきたいと思います。現時点では、LUMIXブランドを想起されるお客様と、プロAV側のシステムをお使いただいて想起されるお客様と、まだ完全に一緒ではありません。そこの垣根を飛び越えるための1つのプロダクト、もしくはソリューションとして、今回企画を致しました。
――今回の発表はマルチパーパスカメラとして紹介されましたが、御社が考えるマルチパーパスカメラの定義を教えてください。また、今回の新製品はどのような用途を想定されていますか?
宮地氏: マルチパーパスは、スタジオカメラとリモートカメラの間を埋める立ち位置のカメラになります。コンシューマーの世界から見るとマルチパーパスって何?と思われるかもしれませんが、業務用では昔から一般的に使われている呼称になります。
粟飯原氏: それに加えて、映像の出力先も今回のモデルは多彩であるところもマルチパーパスと考えています。HDMIもありますし、SDIもあります。LAN端子も有していますので、ストリーミングもできます。SDメモリーカードに対応したカードスロットを搭載しまして、映像の記録にも対応しています。お客様が使いたい場面において出力先を選択いただけるところもマルチパーパスの定義になると思います。
また、豊富な電源系統も大きな特徴です。LAN経由でのPoE+・バッテリー・ACアダプターに対応します。
――リモートカメラを補完するUBシリーズの機能として、どのような特徴がありますか?
粟飯原氏: パンやチルトの動きはUBシリーズではできませんが、センサーサイズの大きさやレンズ交換に対応している点はリモートカメラにはない特徴です。
リモートカメラとUBシリーズは、お互いを補完する関係と考えています。例えばステージの全景の撮影はリモートカメラで撮っていただいて、ピアノの手元の特徴的なアングルはUB50やUB10で撮影する。それを同じシステムの中でお使いただくことを想定しています。
リモートカメラと組み合わせて使えるフォトスタイルや専用のネットワークプロトコルに対応
――UBシリーズの気になる点は、やはりLUMIX時代に発売されましたBGH1、BS1Hとの違いです。最近発売されたLUMIX新製品には、像面位相差やProRes RAWの内部記録などの新しい機能を積極的に取り入れてきていますが、今回のUB50/UB10は、BGH1/BS1Hからどのような点が変わっていますか?
粟飯原氏: まず変わった点で申し上げますと、先ほどの繰り返しになりますが、リモートカメラと同じシステムで使えるところです。専用のプロトコルに対応しておりまして、LANケーブル1本でリモートカメラと同様に色調整ができます。複数台のカメラを同時に運用する際に問題となるのが、画質の色味の調整です。そこで新しくリモートカメラに準じるフォトスタイルを標準装備します。そういったところが大きな変化点になります。
像面位相差やProRes RAWの内部記録などへの対応ですが、結論から申し上げますと対応していません。なぜかと申しますとProRes RAW対応の実現には、高速書き込みが必須になります。SDカードではスピードが不足しますので、CFexpressカード対応が必要になります。
CFexpressへの対応は、本体サイズの大型化は不可欠になりまして、ProRes RAW対応とサイズ感の維持は両天秤となります。その結果、UBシリーズのメインのユースケースは内部記録よりもリモートカメラと一緒にお使いただくことと考えています。
像面位相差も同様の話になりまして、熱の関係で小型のボディサイズを実現しにくい事情があります。そのためUBシリーズではサイズ感を重視する観点で、AFのフォーカス部分は従来モデルと同じものを採用しています。
――UBシリーズはリモートカメラとの連携の部分が強化した感じですね。
尾関氏: そうですね。補足しますと、NDI HX2の対応予定でございますので、そのようなストリーミングのIPプロトコル対応のあたりもBGH1からアップデートされる予定にはなります。よりプロユースでお使いただけるシステムとなるところが、BGH1からの違いとなります。
――UB50とUB10の違いは、BGH1とBS1Hと一緒ですか?
粟飯原氏: BGH1とBS1Hの関係が、このままUB50やUB10に当てはまります。もっとも大きな違いはセンサーサイズの大きさです。あとはBGH1とBS1Hの関係と同じです。
――センサーが違うところによる使い分けの何かポイントがあれば、教えてください。
粟飯原氏: 静止画の場合で言うと、フルサイズの方が絞りの浅い表現が可能で、静止画はボケを活かした印象的な静止画の撮影に対応します。動画の場合で言うと、先ほど申しましたようにフルサイズは絞りの浅い表現が得意な反面、複数の演者さんが登場するシーンでは絞りきれないことがあるかもしれません。そういった場面にはちょうどいいボケ感を表現できるマイクロフォーサーズを選んでいただくことにより、しっかり捉えた表現が可能です。
またボディのサイズはほぼ同じなのですが、レンズを含めたシステムのサイズになると、センサーサイズの小さいマイクロフォーサーズはレンズを含めたシステム全体をコンパクトにまとめられます。隠したい場合や目立たせたくない場合はマイクロフォーサーズをお勧め致します。
宮地氏:2モデルは、お値段の違いもあります。フルサイズのUB50よりもマイクロフォーサーズのUB10のほうが価格を抑えられます。台数を増やしたい場合など、用途に合わせて使い分けていただけることも可能です。
――最後に改めてUBシリーズのアピールや意気込みをお願いします。
尾関氏: 今回はシナジー商品の第一弾です。もともとLUMIXのBGH1のDNAをきちんと組み込みつつ、プロAVとコンシューマーイメージ側のシナジーを取り入れた第1弾の商品形になります。
粟飯原氏: プロAVには、デジタルシネマ用4Kカメラ/レコーダー「VARICAM」で開発された「V-Log」などがありましたが、そちらはプロAV側から民生側に展開された技術です。それが今回組織が同じになり、より連携を加速させた製品の第一弾です。
宮地氏: 設計はコンシューマーにお願いして、エッセンスはプロAVの連携システムを取り入れました。これまでは完全に別々で開発をしていたものが、ポートフォリオの設計も含めてワンチームで行うようになりました。今後どんどん交わっていく商品が登場する予定です。
粟飯原氏:今後の商品展開に乞うご期待ください。