Blackmagic Designによると、ジョセフ・カーン氏の新作「Ick(原題)」の撮影およびポストプロダクションに、Blackmagic Designワークフローが使用されたという。これには、Blackmagic URSA Mini Pro 12K OLPFおよびBlackmagic Pocket Cinema Camera 6Kデジタルフィルムカメラを使った撮影、DaVinci Resolve Studio、Blackmagic Cloud、そしてBlackmagic Cloud Store Mini 8TBネットワークストレージ・ソリューションを使った編集およびカラーコレクションが含まれている。
「Ick」は、度を超えたホラー、コメディ、エイリアンによる侵略、風刺などの要素が入り混じった作品である。同作の脚本・監督を務めた、グラミー賞受賞歴を持つカーン氏は、卓越したビジュアルと高速のアクションシーンで知られており、過去10年間で最も象徴的なミュージックビデオを撮影してきた。
2024年のトロント国際映画祭で封切られた「Ick」は、アメリカのイーストブルックという町で、20年もの間つる植物の成長を無視してきた結果、つる植物が進化し、襲ってくるというストーリー。ブランドン・ラウスとミーナ・スヴァーリが主演を務める同作は、実用効果と視覚効果(VFX)をミックスし、ハイクオリティで、時に笑いを誘う度を超えたグロテスクな映像をもたらす。
「Ick」はテキサス州ヒューストンで、デイビッド・ウェルドン撮影監督により撮影された。ポストプロダクションは、撮影中はヒューストンで、その後はロサンゼルスで作業を行ったエディターのチャンクラー・ヘインズ氏と、アシスタント・エディターのエドワード・シュレーア氏、ロサンゼルスの異なる場所から作業を行ったサム・クック氏が担当した。カラーコレクションはPicture Shopのウォルター・ヴォルパット氏が担当した。
同作の成功には、撮影とポストプロダクションの境界を曖昧にすることと、リモート・コラボレーションが不可欠であった。これを実現するために使用されたのが、DaVinci Resolve Studio、Blackmagic Cloud、Blackmagic Cloud Podネットワークストレージ・ソリューションである。
ウェルドン撮影監督は、カーン監督が実現した撮影とポストプロダクションの間のクリエイティブな過程について、次のように説明する。
ウェルドン撮影監督:ジョセフが作品のすべての部分に関して明確なビジョンを持っていたこと、そしてペースの速さという観点からすると、ミュージックビデオの撮影のような感じでしたね。"町が大変なことになっていて、人々が言うことを聞かず破滅にいたる"という典型的なモンスター映画だったかもしれません。
しかし、Blackmagicカメラのフォームファクターを利用してクリエイティブなショットを撮影したり、カメラを狭いスペースに配置したり、カメラのデュアルネイティブISOを活用し、撮影現場を素早く移動したりすることで、ユニークな作品となっています。
「Ick」は、ヘインズ氏にとって、DaVinci Resolve Studioで全編編集した初めての長編映画だという。ヘインズ氏は、ヒューストンでカーン監督と対面で仕事をした。
ヘインズ氏:ジョセフは、非常に先見性のある監督です。エディターとしては、監督が望む場所にたどり着く方法を見つける必要がありますが、ResolveとBlackmagic Cloudを使用してジョセフとコラボレーションできる機能は、クリエイティブな面で大きな助けになりました。
カーン監督は、DaVinci Resolve StudioのFusionページとDaVinci Neural Engine AI機能を使用して、自身が思い描くVFXシーンのモックアップを作成していた。その後、Blackmagic Cloud PodとBlackmagic Cloudを使用して、モックアップを編集チームと共有したという。
ヘインズ氏:コラボレーティブ・ワークフローは上手く機能しました。シンプルで使い勝手が良く、現場にIT担当がいる必要はありませんでした。Cloud Podのおかげで、ジョセフは編集に関して細かい指示を出すことができたんです。ジョセフはシーケンスを複製して簡単に私に送ることができました。
シュレーア氏:アシスタントエディターの観点では、ResolveとBlackmagic Cloudのおかげで、チャンクラーはサムと私を即座にワークフローに引き入れて簡単に作業できました。クリエイティビティが途切れることはありませんでした。
DaVinci Resolve StudioとBlackmagic Cloudを使用したワークフローの利点の一つは、ヘインズ氏が同作の1,000以上のVFXショットを管理しやすくなったことだという。
ヘインズ氏:私は多くのVFXショットをトラッキングしていたのですが、Cloud Store Miniを使えば、これらのシーケンスの作業に簡単に取り掛かることができました。5つの会社からVFXショットを入手していましたが、Cloud Store Miniワークフローを使ってDropboxに追加するだけでした。
「Ick」では、URSA Mini Pro 12K OLPFおよびPocket Cinema Camera 6Kカメラが使用された。高速ショットや、メインの撮影終了後に撮影された様々なインサートショット、ピックアップショットなど、幅広いシーンを撮影し、最終的に4Kで仕上げられた。
ウェルドン撮影監督は、同作でBlackmagicカメラを使用した利点について、次のようにコメントしている。
ウェルドン撮影監督:URSA Mini Pro 12K OLPFは、多くのことを実現できます。まず、4K配信のガイドラインを満たす撮影が可能です。これは、インディーズ映画にとって非常に重要です。また、厳しい予算中でも、URSA Mini Pro 12KとPocket 6Kカメラを柔軟に使用して、複数のシーンで他のカメラと完璧にマッチする映像を得られました。
インディーズ映画の制作では、常に予算を削減する方法が求められます。同作は単一のカメラによる作品ですが、Ronin 2のFish Tank Cam(小型水槽のセットアップ)やハイスピードモードなどを使用し、カメラを手に取ってすぐに撮影を始められるように、カメラを準備しておく必要がありました。
作品全体をアナモルフィックで撮影しましたが、8Kで撮影できたことで、VFXでパンチインや調整が必要な場合にも柔軟に対応できました。グリーンバックで撮影した映像を8KのVFXチームに提供し、それを基に3D環境を構築するショットもたくさんありました。これにより、これらのショットに多くのディテールを加えることができました。