
ARRIは、第97回アカデミー賞最優秀作品賞ノミネート作品10本のうち、5本がARRIで撮影されたことを発表した。
ARRIで撮影された最優秀作品賞ノミネート作品は以下の通り。
- Anora
- The Brutalist
- Dune:Part Two
- The Substance
- Wicked
ロサンゼルス全域で発生した大火災による壊滅的な被害にもかかわらず、映画芸術科学アカデミーが主催する第97回アカデミー賞授賞式が2025年3月2日、ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催された。

アカデミー賞作品賞は「Anora」が受賞
カンヌ国際映画祭でプレミア上映され、パルムドールを受賞した「Anora」は、このアカデミー賞シーズンでも高い評価を得ており、ノミネートされた6部門のうち5部門を受賞した(作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞、主演女優賞)。
インディーズ映画監督のショーン・ベイカーが監督した「Anora」では、ブルックリンを拠点に活動するセックスワーカーで、ロシア人オリガルヒの息子イワンと恋愛関係になるアノラを、主演女優賞を受賞したマイキー・マディソンが演じている。二人の関係は、当初は取引的なものだったが、愛、裏切り、社会の期待をテーマにした複雑な物語へと発展していく。ベイカー監督は、ハリウッドの多くの規範を否定することで、その名を世に知らしめた。同監督は、低予算、注目されていない俳優、難しいテーマを受け入れ、アメリカ社会の代表的でない側面にスポットライトを当てることを好むという。
「Anora」の撮影は、リアリズムと没入感のあるストーリーテリングに対する同映画のこだわりを示した。「Anora」は、ドリュー・ダニエルズ撮影監督により、ARRICAM LT 35mmフィルムカメラで撮影され、ワイドスクリーン2.40:1、4-perfアナモフィックでフレーミングされ、ヴィンテージのLOMOプライムレンズとズームレンズ、低照度シーン用のAtlas Orionレンズが使用された。
テスト時にはバーバンクのARRIレンタルのチームが、制作開始時にはニューヨークのARRIレンタルのチームがサポートした。ダニエルズ撮影監督は、1970年代のニューヨークの犯罪ドラマに敬意を表し、クラシックな要素と現代的な洗練さを融合させたビジュアル・スタイルを採用した。ブライトン・ビーチやコニーアイランドなど、ブルックリンの地域の硬質なエッセンスを捉えた、質感のある本物のルックを用いたという。

アカデミー作品賞にノミネートされた他の9作品のうち、4作品はARRIのカメラで撮影され、3作品はARRIレンタルがサービスを提供した。「The Brutalist」「Dune:Part Two」のチームはARRIのカメラとサービスを利用し、作品賞とともに撮影賞にもノミネートされた。
「Dune:Part Two」
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による「Dune:Part Two」は、砂漠の惑星アラキスを舞台にしたポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)の壮大なサガの続きである。家族の仇を討つためにフリーメンと手を組み、圧政を敷くハルコーネン政権に立ち向かうポールの旅が描かれる。アカデミーでは5部門にノミネートし、視覚効果賞と音響賞の2部門を受賞した。
ヴィルヌーヴ監督による壮大なSF映画の同作では、2022年にフランチャイズ第1弾でオスカーを受賞した撮影監督グレイグ・フレイザーACS、ASCが再び起用された。広大な砂漠のシーンの映像的壮大さと芸術的深みを表現するために、フレイザーは「Dune:Part Two」の撮影には、ALEXA 65とALEXA Mini LFカメラを使用し、ARRIレンタルの専用オプティクスを含む多様なレンズを使用した。ARRIレンタルは、IMAX認定カメラ、レンズ、グリップ機材も提供した。
ALEXA 65をいち早く採用したフレイザー撮影監督は、同作でもこのカメラシステムを使いたいと考えていたという。ARRIとの以前のインタビューで、フレイザー撮影監督は次のようにコメントしている。
フレイザー撮影監督:大型センサーのALEXAカメラの基本的な流れはそのままに、ALEXA 65とALEXA Mini LFを組み合わせて、すべてを球面撮影することにしました。これにより、IMAX版のオプションが広がり、65mmとMini LFの組み合わせは良いと感じました。

「The Substance」
作品賞には、主演女優賞にノミネートされたデミ・ムーアが出演した「The Substance」が選ばれた。型破りなボディ・ホラー映画の監督はコラリー・ファルジャ、撮影はベンジャミン・クラチュンBSCが担当した。通常、ホラーというジャンルはアカデミーからあまり注目されないが、「The Substance」は5部門でノミネートされ(作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞)、アカデミー賞を受賞した。
「The Substance」の撮影は、同映画の不気味で不穏な雰囲気の重要な要素であると同時に、変容とアイデンティティという深いテーマを補完している。クラチュン撮影監督は、シュールで夢のようなクオリティと、強烈で内臓を刺激するボディ・ホラー・シークエンスを融合させながら、映画の物語を視覚的に盛り上げるために様々なテクニックを駆使したという。特に、正確で美しい肌色を表現できるALEXA Mini LFが選ばれ、「The Substance」に使用された。
また、アクションをスムーズかつ俊敏に撮影するために、ARRI TRINITYカメラスタビライザーも使用された。同映画の大胆な色使いは、物語を通してエリザベスの心理的・肉体的な変化を反映している。ボディマウント・カメラ・リグなどの実用的なエフェクトは、視聴者を登場人物の体験に引き込むのに役立ち、親密感と不快感を増幅させる一方、意図的に厳しく露光された照明が主人公の弱さを表現しているという。

「Wicked」
観客にも批評家にも人気の高い「Wicked」は、高い評価を得たブロードウェイ・ミュージカルを2部構成で映画化した前編となるミュージカル・ファンタジー映画。作品賞のほか、主演のシンシア・エリヴォ(主演女優賞)とアリアナ・グランデ(助演女優賞)、音楽(オリジナル楽曲)、衣装デザイン、メイクアップ&ヘアスタイリング、プロダクション・デザイン、視覚効果など9部門でアカデミー賞にノミネートされた。
同作品は、メイクアップ&ヘアスタイリング賞とプロダクション・デザイン賞を受賞した。また、撮影部門でASCにノミネートされ、その他にも多くの国際的な賞にノミネートされた。
ジョン・M・チュウが監督し、撮影監督をアリス・ブルックスASCが担当した「Wicked」の撮影は、魔法のようなオズの世界に命を吹き込む鮮やかで想像力豊かなビジュアル・スタイルで称賛されている。ブルックス撮影監督は、親密でありながら映画的な雰囲気を保ちつつ、幻想的な雰囲気を作り出すために照明と色彩を駆使したという。観客は、ブルックスの演劇とダンスの経歴が、ダイナミックな振り付けとパフォーマンスを捉える能力にいかに影響を与えたかを認識することができる。この超大作のために、ブルックス撮影監督はARRIレンタルのALEXA 65カメラを選択した。
ARRIとのインタビューで、ブルックス撮影監督は次のようにコメントしている。
ブルックス撮影監督:私たちはオズの広大な大地を撮りたかったのですが、この映画の真髄は2人の女性のクローズアップにあり、ALEXA 65ならそれが撮れるとわかっていました。

また、撮影部門にノミネートされた5本の映画のうち4本はARRIで撮影され、5本のうち3本はARRIレンタルによって撮影された。アカデミー撮影賞は「The Brutalist」が受賞した。ARRIで撮影された撮影部門ノミネート作品は以下の通り。
視覚効果部門のノミネート作品5本はすべてARRIカメラで撮影された。アカデミー視覚効果賞は「Dune:Part Two」が受賞した。ARRIで撮影された視覚効果部門ノミネート作品は以下の通り。
- Dune:Part Two
- Alien:Romulus
- Wicked
- Kingdom of the Planet of the Apes
- Better Man
