富士フイルムは「プロジェクター内覧会2025」を東京および大阪で開催した。東京会場は、2025年5月13日から5月16日まで、東京目黒のJR目黒MARCビルで開催された。本稿では、東京会場最終日である5月16日の様子について紹介する。

富士フイルムは例年春に「FUJINON内覧会」を実施しており、過去の内覧会では2024年にDuvoとGFXシネマ、2022年にはプロジェクターとシネマレンズが主要なテーマであった。内覧会の時期や内容は年ごとに調整されており、今年は放送関連製品とプロジェクターの発表時期にずれがあったため、プロジェクターに特化した形で開催された。

今回の内覧会には、主に二つの目的があった。一つは、富士フイルムが2023年11月に本社機能の一部をJR目黒MARCビルに移転したことに伴い、そのオフィス12階に新設した常設ショールームの開設披露である。もう一つは、近日発売予定の4K対応プロジェクターZUH6000(2025年夏発売予定)を業界関係者に先行公開することであった。東京と大阪で予定された開催のうち、東京での4日間は連日予約がほぼ埋まり、フル稼働の状態であった。取材時も途切れることなく、業界関係者が来場していた。

新設されたショールームは、広々とした空間が特徴であり、プロジェクター製品を常時見学できる点が特筆される。これまで、この規模の製品を常時見学できる場所は少なかった。購入を検討する顧客は、自身の素材を持ち込み、実際に試写を行うことも可能である。プロジェクターやそれ以外の展示機能に加え、このスペースの多様な活用方法が現在検討されている。

さて、今年の展示における注目は、2025年2月に開発が発表された「FUJIFILM PROJECTOR ZUH6000」である。この製品は同年2月の開発発表を経て、今後正式発表される予定であり、今回のイベントは正式発表に先駆けて業界関係者への先行披露の場となっている。展示されている実機はプロトタイプであり、量産機ではないものの、日本国内のみならず、展示イベントでの公開は世界で初めてとされている。

天吊でZUH6000を稼働させた様子
こちらは卓上でZUH6000を稼働させた様子

ZUH6000は富士フイルムが手掛ける4台目のプロジェクターであり、世代としては第3世代に位置づけられる。しかしながら、ZUH6000はこれまでの世代とは異なる、新しいシリーズと捉えることができる。製品名の頭文字「ZUH」の「UH」はウルトラハイデフィニションを意味する。画像処理ユニットに最新のDLPチップを搭載することで、高精細な4K映像を投写でき、6000lm(ルーメン)の鮮明な映像で提供できる。これまでのモデルがフルハイビジョン(2K)対応であったことに対し、解像度が向上している点が、従来のシリーズとの明確な差別化要因となっている。

また、色の再現性も大幅に改善されており、富士フイルム独自の光学エンジンを進化させ、現行機種と比べて約1.5倍優れた色再現性と、なめらかな階調表現を実現している。特に赤色の表現力においては約2倍の向上を達成している。解像度と色の再現性の向上により、映像品質全体が大きく引き上げられている。

さらに、様々な環境への対応を可能にするため、細やかな調整機能が充実している。これにより、主に商業施設など、多様な設置環境において、使用されるコンテンツの品質を最大限に引き出すことが狙われている。

会場デモンストレーションでは、ZUH6000の2台展示が特に注目された。各プロジェクターは約200インチの投影を行い、2台のZUH6000によるマルチプロジェクションによって、合計400インチの単一画面が構成されていた。ZUH6000から投影面までの距離は約2mと短く、この距離で200インチの完全な正方形の映像を実現している点は特筆すべきである。さらに、2台のプロジェクターをマルチプロジェクションし、横幅約9m、高さ約2.8mの巨大な映像を生成していることにも注目が集まった。

目測だが、スクリーンとプロジェクターの間隔は約2m
200インチ映像のマルチプロジェクション化による上映に驚きを覚えた

プロジェクターが実現する映像の美しさは、改めて評価されるべき点である。一般的にLEDディスプレイは高輝度であるため、プロジェクターの映像は相対的に評価が低いと見なされがちである。また、プロジェクターは環境に依存する特性があり、特定のトーンに調整しなければ視認性を確保できない場合がある。一方でLEDディスプレイは高輝度と高解像度を誇るが、その特性から感覚的な拒否反応を覚える場合も存在する。その点、プロジェクターによる映像は、視聴者にとって「人に優しい」という印象を与える場合があることを、この内覧会のデモで改めて認識した。

ZUH6000のもう1コーナーのデモ。この短い距離でこれだけの巨大映像を投影可能だ

近年、没入型空間の需要が高まっている。しかし、LEDディスプレイの高輝度は身体的な拒否反応を引き起こす可能性があり、こうした空間への利用には不向きな場合がある。その点、ZUH6000のようなプロジェクターは、優れた色再現性となめらかな階調表現が可能である。さらに至近距離から大画面の映像を投写できるため、今後ますます没入的な空間演出に有効活用されていくだろう。

水平方向の回転調整、上下左右の傾き調整、および前後位置調整が可能な各種調整機能を備えた天吊り金具「FPM-K100S」が展示されていた

プロジェクター内覧会2025の大阪会場は、2025年5月29日から5月30日、メットライフ本町スクエア 地下1階 B会議室で予定している。