コシナは、2025年5月15日に発表したフォクトレンダーブランドのEマウントレンズ「PORTRAIT HELIAR 75mm F1.8」の発売日を2025年6月20日に決定した。希望小売価格は税込165,000円。

PORTRAIT HELIAR 75mm F1.8は、フォクトレンダーのフルサイズ用交換レンズとして初の球面収差コントロール機構を搭載した、ソニーEマウント専用の大口径マニュアルフォーカス中望遠レンズ。フルサイズのイメージサークルをカバーし、その光学設計はソニー製ミラーレスカメラのイメージセンサーに最適化されている。

本レンズは、球面収差とボケの関係に着目し、補正不足(アンダーコレクション)および補正過剰(オーバーコレクション)の状態を意図的に制御可能にすることで、多彩なボケ表現を実現した。レンズ構成は3群6枚のヘリアータイプを採用しながら、開放絞り値はF1.8の大口径を実現している。球面収差の変化は絞りの開閉によっても発生するが、新機構のコントロールリングを操作することで、従来にない広範囲なボケの描写が楽しめる。

補正不足の状態では、ピントの芯が不明瞭(ソフトフォーカス)になり、ハイライト部分にフレアが発生する。後ボケはなだらかな描写になる傾向がある。これに対し、補正過剰の状態ではピントの芯が残り、後ボケは硬く(バブルボケ)なる。これらの傾向は、理想的な光学設計の観点からは修正すべき不具合と見なされてきたが、本レンズはそれらの特徴を個性的な写真表現に繋げることを目的として企画・設計された。

球面収差を変動させると光学原理上ピント位置も移動するが、本レンズでは、コントロールリングに連動してレンズ群の間隔を変化させ、ピント位置のずれを相殺する機構を搭載することでこの課題に対応している。コントロールリングの操作時に左手親指が触れる位置にはフィンガーポイントの小突起が設けられており、おおよその補正状態を触覚的に認識できる。

本レンズは電子接点を搭載し、撮影データのExif情報にレンズの使用状況が反映される。しかし、カメラ内での電子的なレンズ光学補正機能には依存せず、レンズそのものの性能を画像として写し込む仕様である。また、距離エンコーダーを内蔵しているため、シフトブレ補正に被写体までの距離情報を使用する5軸ボディ内手ブレ補正機能を搭載した機種にも対応している。フォーカスリングの操作によるファインダーの拡大表示なども可能である。最短撮影距離は0.7mで、ピント合わせはマニュアルフォーカス専用である。

金属製のフォーカスリングにはグリップ力に優れたダイヤパターンが採用されている。これは、市販の動画用フォーカスギア取り付け時にも安定感があり、絞り開放時のシビアなピント合わせにも耐える高精度の金属製ヘリコイドによるグリスアップされた滑らかな操作感覚も特長の一つである。絞りは操作リングに直結したメカニカル制御であり、カメラ側のコマンドダイヤルではなくレンズ側で調整する。絞り羽根の枚数は9枚で、点光源のボケを整った形で描写する。