SIGMA×KYOTOGRAPHIE共同制作の川田喜久治展、アルル国際写真祭に登場。フランス初大規模個展「Endless Map – Invisible」

2025.06.24

Kikuji Kawada
From the series The Last Cosmology
© Kikuji Kawada, Courtesy PGI

SIGMAとKYOTOGRAPHIE（京都国際写真祭）は、川田喜久治氏の作品展「KIKUJI KAWADA:Endless Map – Invisible」を共同制作し、アルル国際写真祭2025「アルル・アソシエ（Arles Associé）」に参加する。

PGI 高橋朗氏のキュレーションによるKYOTOGRAPHIE 2024プログラム「見えない地図」を基盤とした同展は、同氏の代表的なシリーズ《地図》《ラスト・コスモロジー》《ロス・カプリチョス》《ヴォルテックス》から主要な作品を集めたものだ。日本を代表する写真家である川田喜久治氏の世界を、歴史ある国際写真祭において世界中の愛好家に見てもらえる貴重な機会となる。

Sigmaは、”The Art of engineering. Engineering for Art.”（芸術の域まで技術を高め、技術を芸術に尽くす）を掲げ、写真映像文化・芸術の発展に寄与することを自らの使命として写真・映像文化活動の協賛・主催を行ってきた。KYOTOGRAPHIEとの長きにわたるパートナーシップはその主軸を成すものであり、昨年に引き続き共同制作者として「アルル・アソシエ」に参加できるのは大きな喜びだとしている。

写真展について

「Endless Map – Invisible」は、写真家・川田喜久治のフランスにおける初の大規模個展だ。川田はVIVOの共同創設者であり、戦後の日本写真界を代表する人物の一人だ。

同展は、アーティストを代表する東京のギャラリーPGIの高橋朗氏をキュレーターに迎え、2024年のKYOTOGRAPHIE京都国際写真祭での展示をさらに発展させた内容となっている。広島・長崎への原爆投下から80年の節目となる今年、「Endless Map – Invisible」では、川田の代表的な4つのシリーズから写真が初めて一堂に会する。写真家の妥協なきまなざしを通して、戦後60年にわたる日本の歴史をたどり、そこでは時間と記憶の層が交錯し、世界の劇場が立ち上がる。

「Endless Map – Invisible」で紹介される4つのシリーズを通じて、川田喜久治は深く詩的でありながらも強い意志を感じさせる世界観を提示している。

「地図」（1959-1965）および「Endless Map」（2021）

書物そのものが一つのオブジェともいえる作品「地図」は、のちに「Endless Map」として再構築され、日本の敗戦によるトラウマを力強く証言するものとして制作された。この作品は、当時主流だったドキュメンタリー写真の枠を超え、写真表現における語りのあり方において大きな転換点を示した。

「ラスト・コスモロジー」（1995）

昭和からミレニアムへと移り変わる時代を詩的に見つめるこのシリーズでは、川田の宇宙への魅了が浮き彫りとなり、空が運命や災厄の舞台として描かれている。

「Los Caprichos」（1972年〜現在）

フランシスコ・デ・ゴヤの同名作品に着想を得て始まったこのシリーズは、近年になって川田自身が再び手に取るようになった。日本の高度経済成長期を鋭く見つめ直す作品群だ。

「Vortex」（2022）

抽象とめまいへの探求をさらに深めた「Vortex」は、内面的な崩壊や宇宙的な探査のかたちを表現している。川田は断片、揺らぎ、痕跡の美学をさらに発展させ、写真を不安定な世界に対峙する思考の道具として提示している。

川田喜久治「本に生きる人生」

展覧会の締めくくりに、来場者は川田喜久治の出版物のセレクションを鑑賞する。その中には初版本も含まれ、川田本人の映像インタビューも併せて紹介する。

川田喜久治略歴

川田喜久治（1933年茨城県生まれ）は、戦後日本写真界における重要人物の一人だ。川田は大学卒業後、新潮社に写真家として入社。その後1959年に、佐藤明、丹野章、東松照明、奈良原一高、細江英公とともに、伝説的な写真家集団「VIVO」を共同で設立した。川田は、社会政治的にも美学的にも激動であった時代に、日本の写真表現を根本的に刷新した世代に属する。

1965年に出版された写真集「地図」は、写真史上、もっとも偉大な傑作の一つとされており、敗戦と原子力災害をめぐるこの省察は、政治的なメタファーと物語実験に富み、写真集という形式の常識を覆した。川田は自身の作品を「時代に潜むデーモンを驚きの影として写しとめるもの」と表現し、「記憶も作家のスタイルを映す鏡になるかもしれない」とも語る。92歳の現在も新たな視点を追求し、自身の作品を再解釈し続けている。

また、Instagram（@kawada_kikuji）を通じて写真表現を発信し続け、観客とのつながりを保ち続けている。

開催概要

タイトル：KIKUJI KAWADA: Endless Map – Invisible
キュレーション：高橋朗（PGI）
共同制作: SIGMA × KYOTOGRAPHIE
会場：VAGUE, Arles ※14 Rue de Grille, Arles
期間：2025年7月7日（月）～10月3日（金）　※写真祭は10月5日（日）まで

※本展はアルル国際写真祭「Arles Associé（アルル・アソシエ）」プログラムとして開催する

特別展示について

SIGMA AIZU JAPAN | “The Art of engineering. Engineering for Art.”

会場では、SIGMAのものづくりを支える理念を象徴的に表現した、シンプルながら印象的な展示が行われる。最新のミラーレスカメラ「SIGMA BF」を中心に、福島県・会津にある唯一の生産拠点で育まれてきた職人技と、写真芸術への深い敬意を軸とした持続的な哲学が映し出されている。この揺るぎない姿勢は、KYOTOGRAPHIEとの協働、そして写真家・川田喜久治の作品への支援にもつながる。同展覧会を通して、来場者には、SIGMAのものづくりと、写真芸術とのあいだに通じる価値観や美意識を体感してもらえる。