富士フイルム株式会社の映像制作用カメラ「GFX ETERNA 55」の導入検討・個別相談会が、2025年10月15日と16日の両日、東京・半蔵門のシステムファイブにおいて開催中だ。
同機は、2025年9月に開催されたIBC 2025でも比較的自由に触れる形態で展示されたものの、国内で実機を自由に試せる機会は今回が初めてである。2024年11月のInter BEE 2024での発表以来、多くの映像制作者がこの機会を待ち望んでいた。
今回の相談会で特に注目を集めたのは、同時発表されたズームレンズ「GF32-90mmT3.5 PZ OIS WR」との組み合わせによる操作性であった。このレンズは、PLマウントのPremistaシリーズを想起させる大型の筐体であるが、重量はその半分程度となる約2kgに抑えられている。
実際に体験できた重要なポイントは、オートフォーカス機能が実用レベルで動作していたことである。35mm判の約1.7倍の面積を持つラージフォーマットセンサーを搭載するカメラにおいて、シネマスタイルのズームレンズで高速かつ正確なオートフォーカスが利用できる点は、撮影現場、特にワンマンオペレーションや少人数のクルーにとって大きな変革をもたらす可能性がある。
さらに、このレンズは3連リングに加え、左側にシーソースイッチ式のズームレバーを搭載している。フォーカス、ズーム、アイリスの全てが電子制御されており、カメラ本体からのコントロールも可能だ。ズームレバーの傾き具合によってズーム速度を滑らかに可変できるなど、これまでのシネマレンズにはない直感的な操作性を実現している。
もう一つの大きな注目点は、ジンバル「DJI RS 4 Pro」への搭載実演である。GFX ETERNA 55のボディに単焦点レンズを装着した構成で、サードパーティ製の特別なアクセサリーを用いることなく、純正のコンポーネントのみで完璧なバランスが取られていた。これは、バッテリーを小型のものに交換するなどの工夫に加え、より重量のあるカメラに対応しアームが長い「RS 4 Pro」を組み合わせることで実現しており、これまで大掛かりな機材が必要だったラージフォーマットカメラでの撮影に、新たな機動性をもたらすことを証明した。
今回の相談会は、GFX ETERNA 55が単に高画質な映像を記録するだけのカメラではなく、レンズシステムとの連携による先進的な機能や、ジンバル運用といった現代の多様な撮影スタイルに柔軟に対応できる拡張性を備えた、極めて実践的な映像制作ツールであることを明らかにした。
オートフォーカスを搭載したラージフォーマット対応のシネマズームレンズの登場は、映像制作の常識を覆すほどのインパクトを秘めており、今後のコンテンツ制作に新たな表現の可能性を切り拓くものとして、大きな期待が寄せられる。