アドビは、映像編集ソフトウェア「Premiere」の最新アップデートを発表した。今回の更新では、製品名の変更に加え、編集作業の効率を向上させる複数の新機能がベータ版として導入された。
まず、製品名称が変更された。従来「Premiere Pro」として提供されてきたデスクトップ向けソフトウェアは、名称から「Pro」が外れ「Premiere」となる。これに伴い、モバイル版と合わせて「Premiere」ファミリーとして展開される。
今回のアップデートの中心は、マスク機能の大幅な強化である。新たに、AIを活用した「オブジェクトマスク」(パブリックベータ)がツールパネルに追加された。これにより、ビデオフレーム内の人物やオブジェクトをAIが自動で識別・分離し、手動のロトスコープ作業なしで、範囲を限定した編集やトラッキングが可能となる。この機能はクリップの途中からでも双方向へのトラッキングが可能で、例えば動く人物の背後にテキストを配置するような編集を、より短時間で実現できる。
また、ビデオフレーム内の選択領域を特定する高精度なツールとして、「長方形/楕円/ペンマスク」(パブリックベータ)が搭載された。これにより、適用範囲を限定した調整やエフェクトの追加、修正がより容易になる。さらに、トラッキング速度の向上、双方向トラッキング、3D遠近法トラッキングを実現するために再設計された「高速ベクターマスク」(パブリックベータ)も搭載された。
2025年9月のプラグイン開発会社Film Impact社の買収により、利用可能なエフェクトも大幅に拡充された。Film Impact社のダッシュボードを通じて、追加されたエフェクトの一覧や効果を確認できる。これにより、例えば映像にモザイクをかける処理などを、従来より簡単な手順で行えるようになった。
編集素材の管理・検索機能も進化した。メディアインテリジェンス機能にはオーディオ検索が追加された。現在は英語のみの対応だが、キーワード入力により関連性の高い音声素材を候補としてリストアップする。また、類似フレームの検索機能も新たに搭載。これは、プログラムモニターの映像と構図や被写体が似たクリップを検索パネルに一覧表示する機能であり、膨大な素材から目的のシーンを探す作業の効率化に貢献する。
このほか、Frame.ioとの統合機能が改善され、V4パネルでも従来のV3とほぼ同等の連携が可能となったほか、ストックパネルの統合なども行われた。
加えて、アドビとYouTubeの連携も発表された。将来的には、Premiereモバイル版とYouTubeショートが連携し、プラットフォームに適した動画コンテンツを、より簡単かつ迅速に制作できる環境の提供を目指す。この機能の具体的な搭載時期は後日発表される予定である。