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Blackmagic Designの発表によると、フジテレビ系ドラマ「絶対零度」の制作において、DaVinci Resolve Studioが使用されたという。タイトな連続ドラマの制作スケジュールの中で、スピード、信頼性、そしてクリエイティブな自由度が評価されており、DaVinci Resolve Studioのほか、DaVinci Resolve Mini PanelやAdvanced Panel、Video Assist 12Gも使用された。

「絶対零度」はフジテレビ系で断続的に放送されている刑事ドラマシリーズで、シーズン5まで制作されている。最新のシーズン5の舞台は情報犯罪特命対策室(通称DICT)。主演の沢口靖子をはじめとする新キャスト陣がDICTの一員として数々の情報犯罪に立ち向かう姿を描いている。

同作の撮影監督を務めた相馬大輔氏とカラリストの大谷寬氏(株式会社バスク)が「絶対零度」のグレーディングやワークフローについて語った。

DaVinci Resolve Studioを現場でも活用

DaVinci Resolveは、ポストプロダクションだけでなく撮影現場でも活用されている。

大谷氏:

撮影データのバックアップにDaVinci Resolveのクローンツールを使っています。ヴェリファイコピーもできるので、弊社ではずっとこれを使っています。また、映像と音声を別々に収録しているので、それらを合わせてLUTを当て、オフライン用のデイリー素材を作る際にも活用しています。

さらに、Video Assist 12GレコーダーがDaVinci Resolveと並び撮影現場で活躍した。2カメ体制での撮影だったため、2台のVideo Assistで各カメラ撮影素材を収録しながら、スクリプターがシーンを確認し、現場で確認しきれなかった部分については、素材を持ち帰って見直すという運用が行われていた。シンプルな操作性により、技術スタッフ以外にも使いやすいため、今回の撮影でも導入された。

相馬氏:

実は記録さん(スクリプター)の間では、Video Assistのシェア率が高いんです。今回の撮影でも使っていました。現場はとにかく時間がないので、よほど重要なシーンでない限り、撮影素材を細かくチェックする余裕はありません。ただ、記録さんはあらゆる情報をシートに記録する必要があるので、その日の撮影データが収録されたSDカードをあとで見直す、という使い方をしています。

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様々なLUTを作成してシーンごとに使い分け

同作は、撮影からポストプロダクションまで、DaVinci Resolve Studioを軸にルック設計が行われた。撮影に先立ち、DaVinci Resolve Studio上でLUTを作成し、撮影中はシーンに応じて、それらのLUTを使い分けて運用。さらにポストプロダクションでは、各ショットに対してグレーディングによる細かな調整が施された。

相馬氏:

監督の田中さんも僕も「絶対零度」は初めてだったので、どんなトーンにしたいか話し合いました。「ボーンスプレマシー」や「City of God」など好きな映画をどんどん挙げていって、最終的に6作品決めて、大谷さんにタイトルを共有しました。

大谷氏:

急に映画タイトルが6作品送られてきて、"このルックを作れってことか…"とかなり焦りました。直前まで別の仕事があったので、準備期間がほぼなかったんです。しかも6作品ともトーンがバラバラ。その映画のどの部分をイメージしているのかはハッキリ分からない状態で作り始めたんです。とにかく予告編を確認して作り始めました。その日の10時には相馬さんが打ち合わせに来られる予定だったので、数時間で6つのLUTを用意しました。

相馬氏:

その後、相談しながらLUTは14個に増えました。そのViewLUTをカメラに入れてシーンごとに使い分けました。現場では、次は「アルゴ」で!みたいな感じでした。

大谷氏:

「City of God」風のLUTはかなりキツめのトーンだったので、本当は使って欲しくなかったんです。テストフッテージに使う分にはいいんですが、実際の撮影素材だと想定してない光が入ることもあり、色が破綻する可能性があるため、おそらく使わないと思ったんですが…

相馬氏:

実はそのLUTメインで撮ったエピソードもありまして。撮影中、赤が反転しちゃうんですが、「大谷さんがうまくやってくれるから大丈夫」ってスタッフに言い聞かせていました。助手が心配していましたけど(笑)。

大谷氏:

他のスタッフからも「素材にエラー出てます!」って報告が来るんですが、「いや、エラーじゃないから、無視して」って説明して、グレーディングで調整し直しました。こんなこと今まで経験なかったです(笑)。

相馬氏:

なんなら、グレーディングの時に時間軸のあるシーンを差別化したくて、「City of God」のさらにこってりしたバージョン「City of God 2」も作ってもらいましたからね。

デジタル感をトーンに取り入れる

情報犯罪をテーマにした同作では、映像表現にも「デジタル感」が求められた。

相馬氏:

この作品は情報犯罪をテーマにしたドラマですが、あるエピソードではストーリーが人情寄りで、あまりデジタル感がなかったので、デジタルっぽさをトーンとして入れたかったんです。休憩中に喫煙所の前に貼ってあった「絶対零度」のポスターを見たら、色収差のようなRGBがずれたデザインだったんです。これだ!と思って大谷さんに相談しました。

大谷氏:

スプリッター/コンバイナーノードを使ってRGBのズレを表現しました。さらに動きが欲しいとのことで、キーフレームを使って動きを出しました。本作では、フレアを足すなど、オンライン編集でやるような処理も多く、すべてDaVinci Resolveで完結しています。2026年からは、弊社でもオンライン編集のシステムをDaVinci Resolveに切り替えます。以前から一部のエフェクト処理に関してはDaVinci Resolveを使っていますが、Magic Maskは特に優秀ですね。

DaVinci Resolveのスピードと信頼感

大谷氏:

最近はニュートラルルックのテレビドラマが主流なので、ここまでコントラストが高くて色が強いトーンは珍しいと思います。情報犯罪がテーマのため、激しいアクションが少ない作品なので、色で映像にインパクトを与えられたと思います。

同作は異なるメーカーのカメラを2台使用しての撮影で、レンズも素材のコーデックも解像度も違うため、色以外のディテールの違いも顕著であった。さらにAカメラとBカメラがほぼ同じ割合で使われていたので、視聴者にカメラの切り替えを意識させないような調整が必要だった。

大谷氏:

DaVinci Resolveのリモートグレード機能を活用し、同じカメラの素材に同じグレーディングを適用しました。さらに本作は長回しが多かったので、キーフレームを打ってカメラの動きに合わせて色を調整していきました。

最後に大谷氏は同作におけるDaVinci Resolveの役割についてこう締め括った。

大谷氏:

連続ドラマはとにかくスケジュールがタイトです。仕込みの段階で相馬さんのやりたいことを作り上げておく必要がありました。さらに本作では全編ノイズリダクションもかけていて、本来2日間でやらなければいけないことをほぼ1日で行っていましたが、DaVinci Resolveのレスポンスと処理スピードに本当に助けられました。さらに、書き出しもエラーなく安定して行える。このスピード感と安心感がなければワークフローが成り立たなかったですね。