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NTT西日本グループは、2025年大阪・関西万博の会期中、複数の放送局へIOWN APNを利用したリモートプロダクション環境を提供し、在阪放送局と共同で実施した実証実験に成功した。

同実証の結果、IOWN APNの持つ「大容量・低遅延・ゆらぎゼロ」の特徴により、番組制作に求められる高品質かつ安定した映像伝送を高いレベルで実現した。これにより、番組制作ワークフローの効率化と設備投資最適化に向けた可能性が示唆された。今後は環境提供に向けた検討を加速させ、早期のサービス事業化を目指すとしている。

取り組み結果

同取り組みでは、NTTスマートコネクトのデータセンターと万博会場および放送局を、IOWN APN技術を用いた「All-Photonics Connect powered by IOWN」で接続した上でデータセンターに集約した制作機能を利用し、共同利用型のリモートプロダクション環境を提供した。

利用実績

在阪放送局4局に、番組制作の一環として、IOWN APNをリモートプロダクション環境での利用に加え、映像データの伝送路として活用した。

(1)リモートプロダクション環境を「中継番組制作」に利用
万博会場で撮影した複数の映像をデータセンターへ伝送し、データセンター上の制作機能を放送局から利用し、中継番組を制作

(2)映像データの「伝送路」としての利用
万博会場で撮影した複数の映像を放送局へ伝送し、放送局のスタジオ(副調整室)と連携し番組を制作

評価結果

〈技術観点〉

同実証では、冗長を考慮したネットワーク環境のもと、リモートプロダクションが支障なく行えることを実証した。

  • リモートプロダクションに必要な各種通信(映像、音声、時刻同期信号、制御系通信、インカム、Tally等)
  • SMPTE ST2110による非圧縮での映像伝送
  • All-Photonics Connectを2経路利用した、SMPTE ST2022-7によるメディア面の冗長

〈運用観点〉

実際の番組制作における有用性を検証・評価した結果、運用面において以下4つのメリットがあることを実証した。

  • 拠点間の円滑なコミュニケーションの実現
  • 一貫した制作ワークフローの確立
  • 柔軟性の高い運用
  • 設備投資の最適化

各社のコメント

朝日放送テレビ株式会社:IOWN APN回線の特性について、局外設備が局内と等価的に扱えることに驚きを感じました。今後、全国に低廉化した回線が張り巡らされることに期待しています。また、局間で設備を共用できることも大きな魅力であると感じています。

関西テレビ放送株式会社:8台のカメラとバーチャル背景を使い、リモートプロダクションで音楽番組「いのち輝く吹奏楽」を配信しました。IOWN APNやIPスイッチャーを実際の現場で運用できた貴重な機会であり、その中で課題も多く見つかりました。今後、設備・運用・費用の面で具体的な検討を進めていきたいと思います。

読売テレビ放送株式会社:超低遅延回線のIOWN APNを使用することで、万博会場と放送局の距離を感じることなくストレスのない番組制作ができました。リモートプロダクションのシステム・回線等のコストなどの課題もありますが、今後の運用を検討するにあたり、大きな一歩になりました。

今後の展開

NTT西日本グループは、今回の実証で提供したNTTスマートコネクトのデータセンターをハブとし、複数のイベント会場と制作拠点をAll-Photonics Connectで接続し、リモートプロダクション機能を共同利用型で提供する「メディアハブ(仮称)」のサービス化に向けた検討を本格化させるという。

特にリモートプロダクションについては、今後より多くの番組で活用できるよう、今回の実証実験で明らかとなった課題解決に取り組みつつ、積極的に提供環境の整備を進めている。なお、IOWN APNの特性である大容量・低遅延・ゆらぎのない通信環境に対応した中継拠点として、関西では京セラドーム大阪、阪神甲子園球場など、主要な拠点での活用を進めており、その他の拠点についても順次拡大を予定している。

今後は、リモートプロダクション利用可能な会場の拡大に加え、AIを活用した映像分析や編集支援などの機能強化を進める。これにより、映像制作のDX推進のみならず、コンテンツ品質の向上にも貢献し、メディア業界全体のさらなる発展を力強く牽引していくとしている。

Inter BEE 2025セミナー

同取り組みの詳細は、Inter BEE 2025開催期間中に登壇予定の以下のセミナーにて紹介する。

  • 日時:2025年11月19日(水)14:00~15:30
  • 場所:幕張メッセ内、国際会議場1階「104」
  • テーマ:万博における共同利用型リモートプロダクションを運用して得た知見と課題(仮)
  • 登壇企業:NTTビジネスソリューションズ、NTTスマートコネクト、パナソニック コネクト、日本放送協会、朝日放送テレビ、関西テレビ放送、読売テレビ放送