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株式会社メディアリンクス、アストロデザイン株式会社、株式会社国際電気、セイコーソリューションズ株式会社、株式会社毎日放送は、2025年10月5日に、同一チャネルのFPU(Field Pickup Unit:テレビジョン放送用の映像と音声を、取材現場から無線で伝送する装置)2対向によってPTP(Precision Time Protocol)非対応のIPネットワークを構築し、PTPを利用した放送TS(Transport Stream)信号を伝送する実験に成功した。

※PTP:高精度な時刻同期を行うための次世代プロトコル 1マイクロ秒(100万分の1秒)以下の時刻同期確度が担保でき、時刻はもちろん、周波数基準として利用可能
※放送TS(Transport Stream)信号:地上デジタル放送やBSデジタル放送で用いられる伝送信号。映像・音声・字幕・データ放送などの信号を一括しMPEG-2 TS形式でパケット化

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実験概要図

今回の検証実験では、国際電気社製のFPUを2対向使用し、双方向にTS伝送可能な回線を、同一チャネルのマイクロ波で構築した。複数の送信機を同一チャネルで運用するとお互いに干渉するため、従来は双方向でそれぞれ異なるチャネルで運用する必要があった。

そこで、国際電気と毎日放送は、同一チャネルで混信していてもデジタル処理によって干渉波を除去できるFPUを開発した。これにより、FPUで使用するチャネルを減らせ、チャネルの利用効率を向上させることが可能である。

FPUのTS入出力をIPに変換するための装置(IPoverTS)には、アストロデザイン社製のCX-5548Aを使用した。PTP伝送に対応した特殊な機器ではなく、汎用的な機器を使用して、FPUによるIP回線を構築した。

※IPoverTS:IPパケットのデータをMPEG-2 TSに組込む方式。本実験では、RFC 4326で定められているULE(Unidirectional Lightweight Encapsulation)Bridge と呼ばれる方式を利用し、TSの伝送路を使用してIP回線を構築

メディアリンクス社製のIP伝送装置を使用し、16.6km離れた生駒山から毎日放送本社へ、PTPと放送TSを伝送した。放送TS信号はSMPTE ST2022-2に準拠したIPパケットにして伝送し、PTPはセイコーソリューションズ社製のPTPグランドマスタークロックで、SMPTE ST2059に準拠したPTPにて伝送している。

※SMPTE ST2022-2:IPネットワークを介して番組素材信号を共有するための伝送に関する標準規格
※SMPTE ST2059:スタジオサブなどで使われているBB(Black Burst)信号の代わりとなる技術。SMPTE ST 2110-10の中で映像音声のタイミング技術として定義

PTP非対応のIPネットワークでは、パケットの伝送遅延が変動し、マイクロ秒単位の時刻同期精度で伝送することは不可能だが、受信側となる毎日放送本社に、伝送遅延の変動を平準化できるRPTP(Resilient PTP)装置DB3200を使用することによって、PTPを利用した放送TS信号のFPU伝送を実現した。

※RPTP:PTP非対応のIPネットワーク上で、PTPを安定同期させる技術。株式会社メディアリンクス、株式会社インターネットイニシアティブ、セイコーソリューションズ株式会社などによって構成されるRPTP Allianceによって確立されている

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実験の様子(本社側)
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実験の様子(生駒側)

今回の実験は、メディアネットワークの高い技術力を持つメディアリンクス、TS処理装置の実績が豊富なアストロデザイン、FPUの新たな取り組みを長年継続している国際電気、放送業界のIP化システムへの移行におけるPTP同期をサポートするセイコーソリューションズ、近畿広域圏で地上基幹放送事業を行う毎日放送の5社が協業した。

地上デジタル放送中継ネットワークを構成する伝送方式を多様化、冗長化することで、今まで以上の強靭化が可能になる。災害時などのBCP対策にも有効な伝送手段になるよう、引き続き検証に取り組んでいくとしている。