NHK放送技術研究所(以下:技研)は、放送局におけるドローンの活用範囲を広げるため、ドローン用の無線伝送技術の研究を進めている。今回、放送事業用の自営無線回線を用いた「空飛ぶロボカメ」と「IP回線中継ドローン」を開発した。
空飛ぶロボカメは、既設 of 受信基地局の方向に電波の送信方向を自動で切り替えることで、空撮映像の安定的な長距離ライブ伝送を実現した。また、「IP回線中継ドローン」は、空撮映像だけでなく、ドローンの監視・制御信号や地上端末との通信も自営回線で伝送可能とした。
これらの技術により、従来のドローンでは難しかった「長距離かつ安定した高画質中継」や、自営回線による「空撮映像とドローン操縦の長距離同時伝送」が可能になる。
既設の受信基地局に高画質映像を伝送する空飛ぶロボカメ
通常、ロボットカメラ(ロボカメ)や取材ヘリコプターで撮影されたライブ映像の伝送には、FPU(Field Pick-up Unit)と呼ばれる放送事業者に免許された無線伝送装置が用いられている。今回、このFPU送信機をドローンに搭載し、既設の受信基地局に高画質映像を伝送する空飛ぶロボカメを開発した。
技術のポイント:アンテナ切替装置
FPUで送信した電波は、放送局の屋上や山頂の鉄塔などに設けられた受信基地局で受信する。長距離かつ高画質な映像を伝送するには、指向性をもったアンテナを使い、受信基地局にアンテナ方向を制御して電波を送信する必要がある。しかし、取材ヘリコプターなど送信機が移動する場合に用いられているアンテナやアンテナの方向制御機材は大きく、ドローンへの搭載が困難だったという。
そこで、複数の小型アンテナを360°全方向に向けて円周上に配置し、ドローンと受信基地局の位置情報に基づいて電波を送信するアンテナを目的の受信基地局の方向に切り替える「アンテナ切替装置」を開発した。正確に電波の送信方向を制御できるようになり、長距離でも途切れにくい映像伝送が可能となった。
実証実験の結果
2025年12月に行った実験では、技研(東京都世田谷区)の敷地内を飛行するドローンから、約8km離れたNHK放送センター(渋谷区)屋上の受信基地局まで、約40Mbpsの伝送レートで高画質な2K空撮映像を安定して伝送できることを確認した。実験の結果から、さらに距離を拡大できる見込みを得ており、今後もフィールドでのトライアルを重ねていくとしている。
さまざまな信号をやり取りできる「IP回線中継ドローン」
空飛ぶロボカメで用いたFPUは送信専用であるため、ドローンから基地局に映像を伝送することは可能だが、ドローンが基地局から信号を受信することはできない。そのため、監視・制御には一般的なドローンと同様に携帯電話回線などを利用する必要がある。
今回、この監視・制御信号も災害時に輻輳しない自営回線で伝送できるよう、信号の双方向伝送が可能な「小型双方向FPU」を開発し、これをドローンと基地局のそれぞれに設置してIP回線を構築する「IP回線中継ドローン」を開発した。
技術のポイント:小型双方向FPUとIP化
新開発の「小型双方向FPU」により、以下のことが自営回線だけで実現できるようになった。
- 空撮映像の送信:ドローンに搭載されたカメラの映像をIPパケット化して伝送可能
- ドローンの監視・制御信号の送受信:携帯電話回線が圏外の地域や、通信が輻輳する災害時でも安定して利用可能
- 地上端末への通信中継:ドローンに搭載した無線LANのアクセスポイントにより、地上端末との通信を中継することで、災害などで通信手段が途絶えた地域にドローンが臨時のIP回線を提供するといった応用も可能
実証実験の結果
2026年3月に行った実験において、基地局から約7km離れたドローンとの間で約10MbpsのIP回線を構築し、ドローンから基地局への映像伝送と、基地局からドローンへの監視・制御を同時に行えることを確認した。
今後の展望
これらの技術は、2026年5月28日(木)~31日(日)に開催する「技研公開2026」で展示される。
今後は、開発した無線伝送技術とドローンを用いて実運用を想定した検証を進め、さらなる性能改善に取り組み、無線伝送技術の進化を通じて、より臨場感のある映像や安心・安全を支える情報の提供に貢献していくとしている。