Blackmagic Designの発表によると、佐渡岳利監督がドキュメンタリー作品「Perfume "コールドスリープ"-25years Document-」の制作にDaVinci Resolve Studioを使用したという。
結成25周年を迎えたテクノポップユニット・Perfumeは、日本国内のみならず海外でも多くのファンを持つ。「Perfume "コールドスリープ" -25years Document-」は、彼女たちの25年にわたる軌跡と、その節目でコールドスリープを決断した裏側に迫るドキュメンタリーだ。
同作の監督は、音楽番組のプロデューサーとして長年Perfumeと仕事をしてきたNHKエンタープライズの佐渡岳利氏。2015年に作られたPerfume初のドキュメンタリー映画「WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT」でも監督を務めた。
同作はオンライン編集およびグレーディングをDaVinci Resolve Studioで行っている。制作やポストプロダクションについて、佐渡氏とオンラインエディターの加藤宜久氏に話を伺った。
25年の軌跡を紡ぐ膨大なフッテージ
佐渡氏:もともとは結成20周年という節目に向けた大きなプロジェクトがあり、2019年のコーチェラ出演あたりから撮影がスタートしました。しかしコロナ禍で制作活動が難しくなり、その後あらためて25周年のタイミングでドキュメンタリーを制作することになりました。彼女たちがコールドスリープを決断することも知らないまま撮影していたので、そのシーンでは僕自身もびっくりしましたね。
過去のフッテージも含めて、素材は50テラバイトに上りました。ライブのリハーサルだと、4K撮影でカメラ3台〜4台で回すのでかなりの量になります。Perfumeがブレイクする前のライブ映像やインタビュー映像は、入手するのが難しく、所属事務所やメンバーのご家族が所有していたVHSやMiniDVの素材を使用しました。再生できるデッキを見つけるのも困難で、個人所有のものをお借りして対応しましたが、デッキにかからないテープもたくさんありました。

DaVinci Resolve Studioによる柔軟なワークフロー
同作は佐渡氏がオフライン編集を行い、オンライン編集およびグレーディングは株式会社CRAZYTVクリエイティブのエディター・加藤宜久氏がDaVinci Resolve StudioおよびDaVinci Resolve Mini Panelを用いて行った。
加藤氏:DaVinci Resolveはグレーディングでは長年活用していましたが、昨年のアップデートで編集作業における課題が解消され、弊社ではオンライン編集で積極的にDaVinci Resolveを使用し始めています。本作はタイトなスケジュールの中、グレーディングとオンライン編集を行き来することを想定し、DaVinci Resolveのみのワークフローが効率的であると判断しました。その結果、編集中に色調整に戻ることが気軽に行えるようになり、監督のクリエイティビティを損なうことなく仕上げることができました。
佐渡氏:様々なコンディションの素材がある中、グレーディング、編集、加工において思い描く結果にすぐに辿り着けました。さらにDaVinci Resolveは書き出しが速いことに驚きました。書き出し時間を逆算して作業するストレスがなくなって素晴らしいです。
素材のクオリティを向上させる様々な試み
同作には多種多様なフッテージが使用されており、それらを1本の作品として違和感なく見せることは大きなチャレンジだったという。
加藤氏:古いフッテージやiPhoneで撮影された素材、カラースペースが分からないような様々な素材があり、トーン合わせに苦労することが想定されました。そこでACEScctを用い、IDTを素材ごとに設定して調整しました。古いフッテージはAI SuperScaleでアップスケールしています。
ドキュメンタリーは同じシーンを撮り直せないため、映像クオリティよりも被写体を追うことを優先せざるを得ない場面が多い。佐渡氏も自らカメラを回しながら、その葛藤と向き合っていたという。

佐渡氏:手ブレ補正機能のないカメラを使っていましたが、ジンバルを付けると機動力が落ちるし、狭いところにすぐに入れないため、手持ちで撮影していました。そのため手ブレは避けられません。また、急に明るさが変わっても撮影中に絞りを変えられないことがあり、そのまま撮影することもありました。さらにPerfumeは3人いるので、全員にピントを合わせられない場面も多々ありましたね。
加藤氏:照明を整えて撮れる作品ではないため、暗すぎるシーンや手ブレの激しいカットもありますが、映画作品としてできる限りベストな状態にするため丁寧に調整しました。このベストな状態にするためのツールが全て揃っていることもDaVinci Resolveが持つ良さです。スタビライザーは、止めすぎると不自然になる場合も、微振動だけ除去し滑らかな動きにするなど制御が容易で助かりました。Magic Maskと深度マップは、人物と背景を分離して調整する際に活用しました。またクオリファイアーは、主に肌を明るく綺麗に見せるために使いました。
佐渡氏:最近はコンサート会場ではLEDビジョンがよく使われているため、撮影素材にモアレが出てしまうことが多く、音楽作品はモアレとの戦いですね。快適に見てもらうために、モアレをできる限り軽減するようにしています。
加藤氏:Fusionページでモアレ部分をマスクで切り出し、その部分をフリーズしたものとスローにしたものをブレンドし、自然に見えるようにしました。また照明のチラつきを抑えるため、Flicker Removeもよく使いましたね。
進化の速さとユーザーの多さによるメリット
同作の完成後、DaVinci Resolve 21が発表された。加藤氏はDaVinci Resolveのアップデートの多さとその安定度を高く評価している。
加藤氏:DaVinci Resolveは新しいバージョンでも安定して使えます。他のソフトウェアではバグが多くて、新しいバージョンをすぐに使うということはありません。DaVinci Resolve 21もすぐにベータ版を触ってみました。ポスプロ作業で欲しかった機能がたくさん実装されていました。
今回追加されたAI UltraSharpenは衝撃でした。従来のシャープ機能には限界があり、使いすぎると画が荒れてしまうことがあります。これがあればピントの甘いショットもさらに改善できたのに、と愕然としました。それでも、このように継続的に進化してくれる点は、非常にありがたいです。弊社からの要望がアップデートで反映されることもあり、それがDaVinci Resolveでの編集が増えている理由の一つです。
