ソニーのマーカーレス技術がテーマパークへ。東京ジョイポリス30周年の新アトラクション
東京・お台場の屋内型テーマパーク「東京ジョイポリス」に、新アトラクション「NARUTOミュージックダンサー」が2026年7月24日(金)よりオープンした。 開業30周年イヤーを迎える同施設が、ソニーマーケティングと共同で展開する体験型コンテンツである。
本アトラクションは、「NARUTO-ナルト-」の世界観と音楽、全身を使ったリズムゲームを組み合わせたものだ。プレイヤーは画面上のガイドに合わせてポーズを取り、ナルトやサスケとともに任務へ挑戦する。
その体験を支えているのが、ソニーのマーカーレスモーションキャプチャー技術である。専用スーツや身体に装着するセンサーを必要とせず、複数台のカメラで撮影した映像から、ソニー独自のAIモデルがプレイヤーの骨格情報を高精度かつリアルタイムに推定する。
今回のプロジェクトは、東京ジョイポリスを運営するCAセガジョイポリス株式会社とソニーマーケティングが、それぞれの強みを持ち寄ることで実現した。
東京ジョイポリスは、国内外から多くの来場者が訪れる屋内型テーマパークである。一方、ソニーは映像、センシング、AIなどの技術を活用し、現実の場所で新たな体験を提供するロケーションベースドエンタテインメント(LBE:Location Based Entertainment)への展開を進めている。
両社が企画段階から議論を重ねて実現したコンテンツに選ばれたのが、世界的な知名度を持つ「NARUTO-ナルト-」である。言語に頼らず、音楽に合わせて身体を動かす体験は、国内の来場者だけでなく、海外から訪れる観光客にも参加しやすい。
使用楽曲には、テレビアニメ「NARUTO-ナルト- 疾風伝」のオープニングテーマとして知られる、いきものがかりの「ブルーバード」が採用された。作品を代表する楽曲の一つと、身体の動きを読み取る技術を組み合わせることで、作品世界へ自然に入り込める体験を目指している。
ソニーのAI姿勢推定技術が支えるLBEへの展開
プレイエリアには、1部屋につき8台のカメラが設置されている。複数方向からプレイヤーを撮影し、ソニー独自のAIモデルが映像を解析することで、全身の骨格情報を高精度かつリアルタイムに推定する仕組みだ。

従来のモーションキャプチャーでは、身体にマーカーやセンサーを装着する方式が広く用いられてきた。本システムでは、そのような事前準備を必要としない。プレイヤーは普段着のまま入室し、そのままゲームを始められる。
複数のカメラを組み合わせることで、プレイヤー同士が重なった場合にも、それぞれの姿勢を推定しやすくしている。アトラクションは1人から最大5人までの同時プレイに対応しており、システム構成によっては10人以上の同時トラッキングにも対応できるという。
マーカーや装着機器を必要としないことは、一般来場者向けの施設における運用面のメリットとなる。装着や調整にかかる時間を抑えられるほか、幅広い来場者が参加しやすく、施設側にとっても運用しやすい。
アトラクションの入口からプレイルームまでの通路は、「NARUTO-ナルト-」の世界観を意識した洞窟風の意匠で構成されている。待機エリアの壁面には、ゲーム中に使用する6種類の基本ポーズが掲示されており、来場者は順番を待ちながら動きを確認できる。


受付では、プレイデータの管理に使用する「任務カード」が手渡される。このカードは体験終了後の動画や写真の確認・購入にも使用され、入場からデータの持ち帰りまでを結び付ける役割を担う。
プレイルームは、ナルトを中心とした演出を楽しめる部屋と、サスケを中心とした演出を楽しめる部屋に分かれている。基本的なゲームシステムは共通だが、キャラクターの音声やクライマックスの必殺技などが異なる。
プレイ時間は約5分。プレイヤーは第7班を支援する「サポート班」として任務へ参加し、画面に表示されるガイドに合わせて全身を動かしていく。
身体そのものがインターフェースになるゲーム体験
ゲームが始まると、「ブルーバード」に合わせてポーズガイドが画面に表示される。プレイヤーは腕を上げる、身体をひねる、しゃがむ、ジャンプするといった動きを組み合わせながら、画面上の指示を追っていく。
一般的なリズムゲームでは、ボタンやコントローラーを操作することが多い。これに対し、「NARUTOミュージックダンサー」では、プレイヤーの身体そのものが入力手段となる。
カメラが捉えた動きをAIが解析し、その結果をスコアや映像演出へ反映する。プレイヤーの動きに応じてエフェクトが重なり、ゲームの進行と連動していくため、技術を操作しているというより、作品世界の中で身体を動かしている感覚に近い。
複数人が同時に動く場面でも、それぞれの動きは継続して認識されていた。プレイヤー同士が交差する場面を含め、ゲームの進行に大きな違和感はなく、遅延はほとんど感じられず、自然なレスポンスだった。
ゲーム終盤では、身体を大きく動かしてチャクラを溜め、キャラクターとともに必殺技を放つ演出が用意されている。
ナルトを中心としたルートでは「螺旋丸」、サスケを中心としたルートでは「千鳥」が登場する。プレイヤーが決めたポーズとタイミングに合わせて、画面上にエフェクトがリアルタイムで合成される。
ここで重要なのは、単に派手な映像を表示しているのではなく、プレイヤー自身の動きを起点として演出が成立していることだ。身体の動きと映像の反応が結び付くことで、自分が作品の場面へ参加しているような感覚が生まれる。
映像制作やXRの分野で使われてきた姿勢推定とリアルタイム処理の技術が、一般来場者向けのアトラクションへ自然に組み込まれている点は、本システムの大きな特徴である。
プレイ体験を「思い出」で終わらせない仕組み
体験を終えて出口へ向かうと、プレイ中の映像がディスプレイに映し出される。そこには、先ほどまで夢中になって身体を動かしていた自分の姿が、「NARUTO-ナルト-」の世界観に合わせたエフェクトとともに再生されていた。
特にクライマックスで放った必殺技の演出は印象的だ。ナルトを中心としたルートでは「螺旋丸」、サスケを中心としたルートでは「千鳥」がリアルタイムに合成され、自分自身がアニメのワンシーンへ入り込んだかのような映像に仕上がっている。
プレイ中はゲームに集中しているため、自分の動きを客観的に見る機会はほとんどない。しかし、終了後に映像として振り返ることで、ポーズや演出との連動を改めて楽しめる。この「振り返り」まで含めて体験として設計されている点は興味深かった。
出口には専用のキオスク端末が設置されており、受付時に受け取った任務カードを読み込ませることでプレイデータを呼び出せる。購入できるのは、動画、写真、動画と写真のセットという3種類のデジタルコンテンツである。
近年ではテーマパークでも写真販売は一般的になっているが、本アトラクションではプリントではなく、デジタルデータでの提供を前提としている。スマートフォンへ保存し、そのままSNSなどで共有できる点は、現在の利用スタイルにも合った仕組みといえる。
動画には楽曲は収録されていない。これは著作権処理を考慮した仕様であり、SNSへ投稿する際には、各サービスが提供する音楽ライブラリから「ブルーバード」を選択し、映像と組み合わせて公開する形となる。
プレイだけで終わらせず、体験を持ち帰り、さらにSNSで共有するところまで含めて設計されていることも、本アトラクションの特徴の一つだ。
技術を「見せる」のではなく、「体験させる」
今回の取材を通じて印象に残ったのは、ソニーがマーカーレスモーションキャプチャーやAIといった技術を前面に押し出していないことだった。プレイヤーはセンサーを装着することも、複雑な操作を覚えることもない。画面のポーズに合わせて身体を動かすだけで、キャラクターや映像演出と一体化したゲーム体験を楽しめる。
その裏側では、映像制作やXRの分野で培われたマーカーレスモーションキャプチャー、AI姿勢推定、リアルタイム処理が、プレイヤーに意識させることなく機能している。技術そのものではなく、体験や作品を主役にする姿勢が、このアトラクションにも貫かれていた。
今回のシステムは、テーマパークに限らず、ライブイベント、展示施設、スポーツエンターテインメント、商業施設など、人が身体を動かす空間への展開も考えられる。アトラクションは最大5人までの同時プレイに対応し、システム構成に応じて、さらに多人数のトラッキングも可能だという。
「NARUTOミュージックダンサー」は、世界的人気IPを活用した体験型アトラクションであると同時に、映像制作技術がリアル空間で新たな体験価値を生み出す可能性を示した事例でもある。技術が主張することなく、作品体験だけが自然に残る。映像制作技術の次の舞台は、スクリーンの中だけではない。