Blackmagic Designの発表によると、「ザ・ボーイズ」のシーズン5がDaVinci Resolve Studioでグレーディングされたという。

Company 3のシニアカラリスト、シギー・フェストル氏は、「ザ・ボーイズ」の第1シーズンからカラーグレーディングを担当しており、テレビ界で最もスタイリッシュで視覚的な挑戦を続けるシリーズの1つに、独自のビジュアルを提供している。ロサンゼルスに拠点を置くフェストル氏は、業界でも屈指の多様な実績を誇り、これまでに「ウェンズデー」、「ナルコス」、「ロスト・イン・スペース」、「ザ・ボーイズ」のスピンオフ作品「ジェン・ブイ」などを手掛けた。「ザ・ボーイズ」の最終シーズンである第5シーズンでは、フェストル氏は、編集、写真編集、グレーディング、VFX、オーディオポストプロダクション・ソフトウェアであるDaVinci Resolve Studio、特にその深度マップツールを多用し、これまでのどのシーズンよりも番組のルックを進化させた。

Blackmagic Designはフェストル氏にインタビューを行い、グレーディングに対するアプローチの変遷、深度マップによる色に対する考え方の変化、そして1つの番組に10年近く携わることで何を学んだかについて聞いた。

――DaVinci Resolve Studioにおいて、深度マップが定番ツールとなっているそうですね。どのように活用されているのかを教えてください。

フェストル氏:

私たちはカラーリストとして、一般的に2D画像の色とコントラストという観点から物事を考えるので、深度はどちらかというと二次的な考慮事項です。オブジェクトを異なる方法で扱いたい場合に、それらを分離できるツールはこれまでも存在していました。例えば、ビネット、Power Window、シェイプ、キーなどです。しかし、DaVinci Resolveでオブジェクトを分離する技術にどれほど長けていても、キーイングがどれほど強力であっても、処理に時間がかかる上、結局は2D画像内でオブジェクトを分離しているに過ぎません。
DaVinci Resolveの深度マップ機能は、イメージ全体を自動的にマッピングし、各オブジェクトとカメラとの距離を測定します。従来のVFXと比べて非常に高速なので、カラーグレーディングの一環としてシーン全体をマッピングできます。非常に効果的な機能であり、私にとってはもはやセカンダリーカラーコレクションではありません。デフォルトのノード構造の一部として組み込んでいます。「ザ・ボーイズ」で深度マップを最大限に活用し始めて以来、私は色をより立体的に捉えるようになり、背景と前景で異なる表現を適用するようになりました。

――シーズン5で深度マップを使用したショットの例をいくつか挙げてください。また、このツールによりアプローチはどのように変わりましたか?

フェストル氏:

不気味で不安を掻き立てるような、廃病院でのシーンです。いくつかの理由で深度マップが不可欠でした。監督たちはその場所が少し暗いと感じていましたが、従来の手法で映像全体を明るくすると、映像がフラットになってしまうことがあります。深度マップを使用することで、背景だけを明るくし、前景はリッチで深みのあるシャドウを残すことができました。また、ボリューメトリックのかすみと光のハレーションを追加して、少し煙っぽい雰囲気を出しました。次に、私が「深度認識カラー」と呼んでいる手法を適用しました。これは、従来の温かみのあるハイライトと冷たいシャドウの分割に似ていますが、ここでは背景に寒色系の緑色を加え、前景の人物には暖かく自然なスキントーンを残しました。

――Z深度分割カラーとボリューメトリックライトの散乱の組み合わせにより、シーンが暗すぎるという印象がなくなり、自然に撮影したようなルックを実現できました。

フェストル氏:

私が深度マップを効果的に活用したもう1つの場面は、明るい逆光の状況で背景の明るさを抑えることでした。これはHDRではしばしば問題となる状況です。これにより前景の人物が前に押し出され、ショットの明確な焦点となります。

――大規模なVFXショットを扱っている場合、深度マップは他の作業の前に適用しますか、それとも後に適用しますか?

フェストル氏:

後で使用することが分かっていれば、深度マップをプレースホルダーとしてシーンに追加しておき、最終版のショットができた時に調整することもあります。あるいは、まだ適用していなくても必要だと感じた場合は、デフォルトのノード設定に含まれているため、簡単に追加できます。

――「ザ・ボーイズ」には最初から関わっていらっしゃいますが、シーズンを重ねるごとにカラーグレーディングはどのように変化しましたか?

フェストル氏:

この番組が始まってから8~9年の間に、DaVinci Resolveはツールセットを劇的に拡張してきました。その一方で、ショーランナー、撮影監督、VFX監督といった人たちが、従来の枠を超えて何ができるのかを真に理解した上で、カラーグレーディングのセッションに参加するケースが増えています。
準備と制作に関わる全員が、カラーグレーディングで何ができるかをしっかりと理解していれば、撮影への取り組み方に影響を与えると思います。深度マップは比較的新しいツールですが、深度マップでできることに多くの人が興味を持っています。

――深度マップは主に大規模なVFX制作に役立ちますか、それとも小規模なインディーズ作品でも活用できますか?

フェストル氏:

インディーズ作品にとって、より役立つ可能性があると思います。制作チームは、撮影当日に背景用の照明を適切に設置する時間がないこともあります。背景を違った形で表現したいと思っていても、俳優や前景に集中せざるを得なかったり、リソースが不足していたりするかもしれません。カラーグレーディングが担えることは年々増えています。

――カラーリストは、このツールを本格的に活用する際にどのような点に注意すべきですか?

フェストル氏:

どんな道具にも限界があり、酷使すれば壊れてしまうという制約がありますが、深度マップも同じです。深度マップは、フレーム内の要素を奥行きに基づいて分離する優れた方法ですが、分離した後にどうするかはアーティスト次第です。カラーグレーディングの他の作業と同様に、適切な目と経験を持ち、何をしているのかを理解している人の手にかかれば、うまく機能します。それがなければ、不自然に見えたり人工的なルックになってしまいます。

――「ザ・ボーイズ」では各エピソードの監督や撮影監督とどのように連携して作業を進めましたか?

フェストル氏:

最初の作業は一人で行います。番組開始当初から携わってきたので、番組のルックや注意すべき点は熟知しています。撮影監督は、スケジュールにもよりますが、私と一緒に、あるいは別々に、必ず映像を確認する機会があります。その後、ショーランナー、制作責任者、監督、VFXスタッフなど、チーム全員が集まり、部屋がいっぱいになります。

――深度マップ以外に、シーズン5で特に役立ったDaVinci Resolve Studioのツールはありますか?

フェストル氏:

Magic Maskは、私がかなり頻繁に使用しているツールです。以前は時間がかかっていたフレームの分離を素早く実行できます。また、さまざまなOFXプラグインを組み合わせて、かすみ、ハレーション、煙などのエフェクトを作成し、自分なりのやり方で独自のルックを作り出しています。

――プロジェクトに対して芸術的にどのように貢献したいと考えていますか?

フェストル氏:

現在利用できるツールを使えば、カラーコレクション以外にもはるかに多くのことができます。時には、従来のカラーグレーディングとVFXの中間に位置するポストFXの領域にまで作業が及ぶこともあります。私はその領域も楽しんでおり、自分のスキルを最大限に活かせると感じています。最終的には、映画制作者のビジョンを実現し、観客を物語の世界に引き込むために、自分ができるあらゆることをしたいと思っています。

「ザ・ボーイズ」の全5シーズンは、現在Prime Videoで独占配信中。