ソニーは、35mmフルサイズ対応Eマウントのフィッシュアイズームレンズ「FE 8-14mm F3.5 Fisheye G(SEL814G)」を発売する。8mmの円周魚眼から14mmの対角魚眼までを1本でカバーする、ソニー初のEマウント魚眼ズームレンズだ。国内では9月29日(火)10時に受注を開始し、10月9日(金)の発売を予定する。価格はオープンで、市場推定価格は税込26万円前後。

焦点距離 8-14mm
焦点距離イメージ(APS-C) 12-21mm
最大撮影倍率 0.22倍
最短撮影距離 0.15m
フィルター径
外形寸法 最大径×長さ φ63.1×82.8mm
質量 約314g
付属品 レンズフロントキャップ(単品販売なし)
レンズリアキャップ(ALC-R1EM)
フード(ALC-SH186)

8mmの円周魚眼から14mmの対角魚眼までをズームでカバー

まず注目したいのは、そのサイズである。8mmから14mmまでをカバーする魚眼ズームレンズと聞けば、大柄なレンズを想像しやすいが、外形寸法は最大径63.1×長さ82.8mm、質量は約314gに抑えられている。

8mm側では円周魚眼、14mm側では対角魚眼となり、大きく異なる魚眼表現を1本のレンズで使い分けられることが特徴だ。

このレンズで興味深いのは、ズームによって単に写る範囲が変化するだけではないことだ。焦点距離を8mmから14mmへ変えていくとイメージサークルそのものが大きくなり、フルサイズ撮影では8mmの円周魚眼から14mmの対角魚眼へと連続的に変化する。APS-Cで使用した場合は35mm判換算12-21mm相当となり、ズーム途中にはAPS-C撮影時に対角魚眼となる焦点位置も設定されている。

8mm側では、180°の画角を円形のイメージとして記録する円周魚眼となる。森の中から真上を見上げた作例では、周囲を取り囲む木々が円形の画面内に収まり、魚眼特有の歪曲を生かした構図となっている。

FE 8-14mm F3.5 Fisheye G 8mm作例
8mm 1/1000 F3.5 ISO 100 α7R VI
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一方、14mm側では対角魚眼となり、画面全体を使った魚眼表現が可能になる。建物内部を撮影した作例では、直線で構成された空間が魚眼特有の大きな曲線として描かれ、通常の超広角レンズとは異なる空間表現となっている。

FE 8-14mm F3.5 Fisheye G 14mm作例
14mm 1/800 F8 ISO 100 α7R VI
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なお、同じ焦点距離でもアスペクト比によって魚眼像の見え方は異なる。広角端では、3:2の静止画で円周魚眼の像全体を捉えられるが、16:9の動画では上下が切り取られる。望遠端では、16:9の動画は3:2の静止画より垂直方向の画角が狭くなる。3:2のオープンゲート動画撮影に対応するカメラでは、3:2静止画と同様に円周魚眼の像全体を生かした表現が可能だ。

魚眼レンズというと「特殊な見え方を作るレンズ」という印象が先行しがちだ。しかし、このレンズは単に特殊効果を狙うだけでなく、構図そのものを組み立て直すためのレンズとして捉えることもできる。円周魚眼から対角魚眼までをズームによって連続的に変化させられる点も、単焦点の魚眼レンズにはない特徴である。

ズーム全域F3.5、高い解像性能と最短15cmの接写性能

光学系は13群16枚で、非球面レンズ2枚、ED(特殊低分散)ガラス4枚、ED非球面レンズ1枚を効果的に配置する。諸収差や色収差を抑えながら、Gレンズとして画面周辺まで高い解像性能を追求した設計で、ズーム全域で開放F3.5を実現している。

レンズ前面にはフッ素コーティングを施し、指紋やほこり、水滴、油、泥などが付着しにくく、付着した場合にも拭き取りやすい仕様としている。

FE 8-14mm F3.5 Fisheye G 14mm作例
14mm 1/20 F3.5 ISO 100 α7R VI
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接写性能も特徴の一つだ。最短撮影距離はズーム全域で0.15m、最大撮影倍率は望遠端で0.22倍となる。

FE 8-14mm F3.5 Fisheye G 接写作例
14mm 1/2000 F3.5 ISO 160 α7R VI
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被写体へ近づくことで、中心の被写体を強調しながら、その周囲を魚眼特有の歪みとともに広く取り込める。一般的な広角レンズで広い景色を捉えるのとは異なり、被写体との距離を詰めるほど独特の遠近感が強調される。撮影距離と焦点距離の組み合わせによって、画面の印象を大きく変えられるレンズである。

高速AFと動画撮影を意識した操作性

AFにはダブルリニアモーターを採用し、高速かつ高精度なフォーカシングを実現する。α9 IIIとの組み合わせでは、AF・AE追従で最高約120コマ/秒の高速連続撮影にも対応する。また、ハイフレームレート動画撮影時にも被写体へのフォーカス追従が可能だ。

動画撮影ではフォーカスブリージングにも配慮されている。光学設計によってブリージングを効果的に抑制するとともに、対応するカメラ本体のブリージング補正機能にも対応する。

さらに、リニア・レスポンスMFに対応する。フォーカスリングの操作量に応じてフォーカスを直感的にコントロールしやすく、動画撮影時のマニュアルフォーカス操作にも適している。

特徴的なのが、「AF」「MF」「FH(フォーカスホールド)」の3ポジションを備えたフォーカスモードスイッチだ。MFでピントを合わせた後にFHへ切り替えることでフォーカス位置を保持でき、意図しない操作によるピント位置のずれを防げる。星空撮影やVR撮影など、一度決めたフォーカス位置を維持したい場面で有効な機能である。

ズームロックスイッチも備え、フルサイズの円周魚眼と対角魚眼、APS-Cの対角魚眼に対応する3つの位置でズームリングを固定できる。

ズームロックスイッチ

意図しないズームリングの動きを防ぐため、以下の3つの位置でズームリングを固定できる。

① フルサイズ 円周魚眼(広角端・8mm)
② フルサイズ 対角魚眼(望遠端・14mm)
③ APS-C 対角魚眼(中間位置)

鏡筒にはフォーカスリング、ズームリング、絞りリングを備えるほか、フォーカスホールドボタンや絞りリングのクリック切り替えスイッチも搭載する。静止画だけでなく、動画やVR撮影までを意識した操作系となっている。

防塵・防滴にも配慮した設計で、各接合部へのシーリング、ボタンやスイッチへのシリコンラバー製ガスケット、マウント部のラバーリングなどを採用している。

また、レンズ後部にはリアフィルターホルダーを備える。前玉が大きく張り出した魚眼レンズでは一般的なねじ込み式フィルターを装着しにくいため、リア側からフィルターを使用する構造だ。フィルターを加工するためのカッティング用テンプレートも付属する。

専用設計の着脱式レンズフード「ALC-SH186」も付属する。フードは14mm側の対角魚眼での使用を想定しており、それ以外のズーム位置ではケラレが発生する。逆向きに装着すれば、すべてのズーム位置でケラレを避けることが可能だ。レンズキャップはフードに装着する仕様で、フードを装着していない状態では取り付けられない。

FE 8-14mm F3.5 Fisheye G 8mm作例
8mm 1/8000 F3.5 ISO 250 α9 III
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小型設計を生かし180°・360°VR撮影へ展開

このレンズでもう一つ注目したいのが、VR撮影への展開である。

約314gという軽さだけでなく、最大径63.1mmという細身の鏡筒が、VRシステムを構築するうえで重要な意味を持つ。ソニーの「VENICE Extension System Mini」と組み合わせ、2本のFE 8-14mm F3.5 Fisheye Gを並べることで、180°3D VR撮影用のステレオカメラシステムを構築できる。

VENICE Extension System Miniのカメラヘッド部の幅は63.9mm。2台を隙間なく横に並べた場合、センサー中心間距離を約64mmにできる。FE 8-14mm F3.5 Fisheye Gの最大径は63.1mmで、このコンパクトさによって2本のレンズを人間の瞳孔間距離に近い間隔で配置できる。

VR撮影では、左右のカメラの間隔が立体視した際の見え方に大きく影響する。人間の瞳孔間距離に近い約64mmのセンサー中心間距離とすることで、自然な立体映像の撮影を可能にする。

ここで、最大径63.1mmというレンズのサイズが別の意味を持ってくる。単に携行性を高めるための小型化ではなく、2本のレンズを近接して配置するVRシステムの構築にも生かされているのである。

さらに、3台のVENICE Extension System Miniを組み合わせることで、360°VR制作への展開も可能だ。複数の映像をつなぎ合わせる360°撮影ではカメラやレンズの配置が重要になるが、この構成ではノーダルポイントのずれを抑えながら、3台それぞれから8K映像を収録できるコンパクトなシステム構成を実現するとしている。

魚眼ズームが広げる新たな映像表現

ここまで見てくると、「FE 8-14mm F3.5 Fisheye G」は、単に魚眼特有の見え方を楽しむためだけのレンズではないことが分かる。

円周魚眼と対角魚眼を1本で使い分けられることに加え、15cmまで被写体へ近づくことで、魚眼ならではの強い遠近感を生かした表現が可能になる。さらに高速・高精度AFや動画撮影を意識したフォーカス機能を備え、小型設計を生かして180°、360°のVR制作へと用途を広げている。

魚眼はもともと個性の強いカテゴリーだが、このレンズでは「何を撮るか」だけでなく、「どこから、どの焦点距離で、どこまで被写体へ近づくか」によって表現が大きく変わる。

静止画から動画、そしてVRへ。8mmから14mmという短いズームレンジながら、その中には数字以上に大きな表現の変化がある。魚眼という個性の強いカテゴリーだからこそ、撮影者の発想によって用途も大きく広がる。さまざまな撮り方を試してみたくなる1本である。