txt:猿田守一 構成:編集部

HXR-NX100とは?

今回新たにSonyより、NXCAMの小型ハンドヘルドカメラのHXR-NX100がつい先日発売された。Sonyの発表によると、

  • 1.0型 Exmor R CMOSセンサーを搭載
  • 3連マニュアルリング搭載
  • 広角29.0mm
  • 全画素超解像24倍ズーム

となかなか使い勝手並びに高画質化されている印象である。1.0型 Exmor R CMOSセンサーというと民生機ではFDR-AX100、業務機ではPXW-X70が同センサーを使用している。

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写真左より「HXR-NX100」、「PXW-X70」、「HXR-NX3」

気になるところではPXW-X70とレンズ周りのどの辺りが違うのか?というところだろう。Sonyサイドの話では、撮像版は同じではあるが光学系は一部レンズ周りの部品を共有しているものの、調整等も含めた設計は新設計となっている。レンズに関してはX70はZeiss、NX100はGレンズという差別化がされている。両者とも光学12倍。そこから先は24倍まで画質の劣化が非常に少ない超解像ズームとなる。また、NX100は解像度劣化の無い超解像ズーム×2倍のデジタルエクステンダーを装備している。

有効画素約1420万画素の1インチセンサーによる恩恵により29mmから1392mmまでのズーム比を獲得できた。またNX100は3連リングが搭載されているので、操作性はX70より上がっているのではないだろうか。NX100の位置づけに関して言えば上位機種のNX3の下位小型バージョンといったところだろう。

NX100は今までのNXシリーズに搭載されていたAVCHD、DV方式に加えXAVC S方式が新たに加わった。SDカードに50Mbps 4:2:0 8bitで記録できる。一方X70はHD記録に関しては50Mbps 4:2:2 10bitが選択できる。

今回NX100のレポートにあたり、Sonyさんよりデモ機をお借りしてX70との比較テストを行おうとしたが、X70のデモ機が間に合わないということで今回はNX100の兄貴分であるNX3との比較検証を行うことにした。本来であればX70のXAVC L 4:2:2 10bit記録との比較を行いたかったのだが、残念である。

これらを踏まえてNX100の外観をチェックしてみよう。

NXシリーズを継承しつつ重量感のあるNX100の安定感

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意外とずっしり

このカメラのフォルムの特徴はNXシリーズを継承し、小型ながらレンズ鏡筒に3本のリングを配置してあるところだろう。X70と似たような構成の光学系と言うことでお手軽な軽い印象を持っていたが、届いた箱を開け手にとってみると意外とずっしりとした重さに驚いた。カタログ値ではレンズフードやバッテリーを含んだ場合2.2kg。一方X70は1.4kgといったところ。NX3が2.66kgなのでほぼ今までのNXシリーズよりちょっと軽い弟分といったところだろうか。

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ボディーデザインは今まで通りのSonyのNXシリーズのトレンドを踏襲した形となっている。とは言っても変更になった部分は存在する。まず目についたのが電源スイッチの位置である。今まではグリップ部のトリガースイッチ部分にあった回転式のスイッチが廃止され、ボディー側面下部に配置された。この辺りは間違えて親指を引っ掛けて電源を落としてしまう事故を防ぐことが出来るデザインになったと思う。

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また下部に配置されたゲイン、ホワイトバランス、シャッターのそれぞれのボタンは前方にある上下スイッチにより数値が変化する仕組みになっている。あえて言うならこのボタンがクルクルボタンの代わりになった様だが、メニュー関連は動かない。意外とこの上下スイッチは使いやすいかもしれない。ただ残念なのはホワイトバランスをセットする際、側面パネル上部のアサイン1にホワイトバランスのセットボタンがある。

この位置にあるよりは下部のホワイトバランスボタンのすぐ上などに、間違えて押されないような押しにくい形状のボタンを設けて欲しかった。アサインボタンは他の機能を割り振ったほうが使い勝手が良いと感じる。

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また、ディスプレイ格納部分に今まであった再生系のボタン類が綺麗に無くなっている。この部分はメニュー関係を操作する十字キーのみの配置となった。今までNX系やEX系のハンドヘルドカメラに搭載されていたクルクルピッのボタンはこのカメラには付いていない。筆者的には今までのクルクルボタンは非常に使いにくく、何とかならないかと感じていたが、このカメラではごくオーソドックスな形状に変更になった。

しかし、三脚に乗せて撮影する場合この位置に操作ボタンがあると見え難いため、操作性の面ではもう一ついい考えはないものかと思う。しかし価格帯からしてリーズナブルな設定なので、こういう選択肢にならざる終えなかったのかもしれない。

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写真左:NX100、写真右:NX3

写真でもお分かりいただけるとおり、NX100のビューファインダーの接眼レンズはかなり小さい。中のデバイスは小型化されたのかどうかは確認できなかったが、見え方はNX3とほぼ同じだった。この部分の開口面積が狭いと見難いのでNX3と同じ程度にしてもらいたかった。

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オーディオ部分は今までXLR端子の近くに配置されていたファンタム・レベル選択スイッチが側面のオーディオエリアに統合されすっきりと分かりやすい配置になった。

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本機での大きな特徴でもある、エントリーモデルに対しての3本リング採用。実際にそれぞれ動かしてみるとズームリングの回転角がかなり広いことに気がつく。グルグル回すという程ではないが、比較したNX3より1.5~2倍近く回っている印象を受けた。実際の回転角を計測しなかったのが残念だ。

アイリスリングは微妙な調整にも明るさがカクつくことなく、とてもスムーズに追従してくれる。ピントリングも違和感無く操作できた。他の機種と同じくNDフィルターは3段階設定できる(設定値は1/4、1/16、1/64)。

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バッテリーを装着する後部にはSDカードスロットが2枚挿さる様になっている。記録モードとしては同時・バックアップ・リレー記録に対応。RCAの上にあるBNCはHD-SDI出力ではなくアナログのビデオ出力端子だ。その他HDMI、DC入力、マイクロUSB、iLink、ヘッドフォンが配置されている。

三脚取り付け用のネジ穴が、今回1/4インチと3/8インチの2つになった。これは筆者としては大歓迎な部分である。中型以上の三脚に乗せる場合、三脚のプレートに付いているネジが3/8インチということはよくある。現場によってはそのような三脚を使わなくてはいけない場面もあるので、この3/8インチ穴があると助かる。とても良い所に気がついてくれました。

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写真左側:NX3、右側:NX100

NX3とNX100の前面から見た写真ですが、前玉のサイズがNX100のほうが一回り小さい事がわかる。本来撮像素子が大きい分、光を多く取り込むのが望ましいが、本機に関してはX70やAX100の光学系の流用なのでこのサイズになったのだろう。元々本機で使用されているExmor R CMOSセンサーは裏面照射型の低ノイズの明るいセンサーであるため、レンズ設計がしやすくなったというメリットが有ったのかもしれない。

NX3 NX100
焦点距離 f=4.1~82.0mm
35mm換算 28.8~576mm
f=9.3~111.6mm
35mm 換算29.0~348.0mm
絞り F1.6~F11 F2.8~F4.5 (開放値)
ズーム 光学23倍 超解像度ズーム40倍まで 光学12倍 超解像度ズーム24倍まで
デジタルエクステンダー×2倍(48倍)

画質比較(EDIUSより書き出し)

■最広角
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NX3
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NX100
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■光学最望遠
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NX3
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NX100
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■超解像ズーム
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NX3
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NX100
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■超解像ズーム×2倍デジタルエクステンダー
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NX100
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大画素数がもたらす新たな世界

撮影してきた素材を見てみるとNX100は全体的にコントラスト、解像度感が高くすっきりした印象を受ける。これは光学12倍ズームを使い切った後の超解像ズーム領域でも大きな画質の低下は無く十分使える絵を出してくれる。NX3と違い光学部分が12倍までなので、最望遠では40倍(NX3)と24倍(NX100)と開きが出てしまう。しかし、光学12倍までと控えめにしたためにそこから先の超解像度ズームは非常に良好な画質を得ることに成功している。

■超解像ズーム
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NX3:超解像度ズーム40倍
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NX100:超解像度ズーム24倍×2(デジタルエクステンダー)
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■最広角
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NX3
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NX100
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本機は総画素数2000万画素、有効画素数1,420万画素の撮像素子を有効に使い、ダウンコンバートにより1920のHD映像を作り出している。デジタルエクステンダーはこのありあまる画素部分のセンター部分をスキャンする事でフルHD以上の画素が残ることになり、解像度が落ちていないという事になるようだ。

今回借用したデモ機では録画中にデジタルエクステンダースイッチを入、切しても作動しなかった。もしかすると撮像素子の読み出し範囲を変えるために録画中では作動させないのかもしれない。実際に発売される最終ファームでどのように変わるのかチェックしたい。

■開放値での低被写界深度画像
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NX3
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NX100:最広角
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撮像素子が大型化すると被写界深度の浅い絵が撮れるようになる。しかしこれはレンズのF値との関係があり、明るいレンズで開放で使うと被写界深度を浅くすることが出来る。今回取り上げたNX100は開放値がf2.8~f4.5と広角域とズーム域で開放f値が変化する。そのためボケ味を出す為にズームをしてもf値が4.5まで上がってしまうので(絞り込むのと同じ)、1/3インチのNX3とあまり変わらない(若干背景はボケるようだ)という事になる。大型の撮像素子に見合うだけの開放f値の低い明るいレンズであれば盛大にボケ味を出せるようになるだろう。

高画質を後押しする記録モード

このカメラにはXAVC S 50Mbpsモードが搭載された。今までのAVCHDの最高画質モード60p 28Mbpsよりも倍近いビットレートで記録することが出来る。今回その辺りの詳細は他に譲るとするが、より高画質にという各メーカーの熾烈な戦いが垣間見れる。

総括

NX100は2/3インチ放送用カメラよりも大きな撮像素子を搭載しつつ、高倍率、高画質を達成した入門機という設定に驚きを感じた。光学部分をAX100やX70と共通する部品を用いる事でコストダウンを図った機種ではあるが、光学部分をアップグレードし、ズーム全域でf2.8というレンズが実現できればもっと面白いカメラになると思う。ズームリングの操作感が今までのNXシリーズと若干違うのでマニュアル操作での使い勝手は慣れが必要かもしれない。しかし、思った以上の画質を得る事ができたという事も大きな収穫だった。まだまだ進化は止まらない!

今回この記事を書くにあたってSonyのHPを確認したがそこにはNX5は既に無かった。SonyとしてもPXWシリーズとNXシリーズと被る部分があるので、NXシリーズに関してはHD-SDIが付いていないリーズナブルな業務用という位置づけにシフトしている様に感じた。

お詫び:今回フィールドでのテスト撮影に当たってNX100とNX3は工場出荷状態に戻した状態でテスト撮影を開始したが、テスト終了後にNX100のピクチャープロファイルがPP4となっていた事が発覚。そのため撮影動画からの切り出し画像はNX3と黒レベル、色の濃さに違いが出てしまいました。ご了承ください。確認の為再度工場出荷状態に戻したがピクチャープロファイルはPP4のままでした。製品版では改良されていると思われます。

WRITER PROFILE

猿田守一

猿田守一

企業、CM、スポーツ配信など広範囲な撮影を行っている。PRONEWSではInterBEE、NAB、IBCなどの展示会レポートを行った経験を持つ。