txt:猿田守一 構成:編集部

新たな業務用ハンドヘルド型カメラ登場

HD収録から徐々に4K収録の要望が増えつつある現在はまさに過渡期と言える。既に先輩格のAG-DVX200が赤い彗星との愛称で親しまれてから、すでに1年半近く経過している。そんな中、Panasonicより新たな業務用ハンドヘルド型カメラのAG-UX180が発売された。このカメラはDVX200のマイクロフォーサーズセンサーより小型の1インチMOSセンサーを搭載。フルHD1920/120fpsや17:9(4096×2160)の4K24p収録を可能とした業務レンジのカメラとして、既に発売されているUX90の上位機種として発売された。撮像素子を1インチMOSとした事でコンパクトな光学系を実現。今まで業務用クラスのハンドヘルドカメラの主流であった1/3インチサイズの撮像素子よりボケ味を生かした収録も可能となった。また収録フォーマットもMPEG-4 AVC/H.264 High Profile(MOV/MP4/AVCHD)と最近のトレンドを踏襲している。

引ける20倍レンズ

UX180で採用された光学系はワイド端24mm(35mmレンズ換算4K24p収録時)と、今までのこのクラスのカメラとは一線を画す仕様となっている。筆者が普段使用している2/3インチのレンズのワイド端は標準的な7.6mmであるが、UX180の広角域はさらに広い。今回1,500人ほどの収容人数のホールで比較してみたが、この程度の引き絵が撮れるという事はかなりのアドバンテージになると思う。また20倍の倍率を備えているので特に寄り切れないと言った不満は感じなかった。

またFHDモードの場合、最大30倍まで解像感を損なわずに寄れるiAズームを搭載している。光学20倍から先はiAズーム領域となるが、切り替わりは違和感なくスムーズに変わってくれる。おまけ的ではあるがデジタルズームも搭載している(×2、×5、×10)。

http://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2017/03/ong24_UX-180_02.jpg HA18×7.6 最広角
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http://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2017/03/ong24_UX-180_03.jpg UX180最広角4096 24P
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http://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2017/03/ong24_UX-180_04.jpg HA18×7.6最望遠
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ステージ物で24pという事は少ないと思うが画角の参考になればと思う。UHD(3840×2160)やFHD(1980×1080、16:9)での撮影ではこの参考画像の両端が左右少し切れた状態になると考えてもらえればよいだろう。

LEICA DICOMARレンズの解像度感は今回使用したデモ機では特に気になるところは無かった。周辺解像度の低下や周辺減光もあまり感じられない。ただしレンズの開放F値はF2.8~F4.5なので広角からズームすると明るさは落ちてきてしまう。本来ならばF2.8通しのレンズが理想なのだが、この辺りは光学系のサイズや重さ、価格に跳ね返ってくるところなのでメーカーとしてもなかなか仕様の決定には頭を悩ませたのではないだろうか。

本機のズームレンズは3連リングを装備しており、それぞれフォーカス、ズーム、アイリスと独立して操作できる。4KまたはUHDでのフォーカスは撮影シーンにもよるがマニュアルで合わせるよりもオートで合わせた方が良好な場合が多いと感じる。

マニュアル操作時でもFOCUS ASISTボタンをうまく利用しピントをシャープに捉える様にしたい。FOCUS ASISTボタンには拡大表示の「EXPAND」と「PEAKING」をメニューから設定できる。今回オートフォーカス時に何度か大きくピンを外すという事が見受けられた。これは照度的に十分な明るさが得られない時に起きた現象だ。この事はどんなカメラでも言える事なのだが、舞台など被写体の明るさが大きく変わる様な事が予想される場合はマニュアルに設定した方が良いだろう。

ズームに関してだが、本機はデモ機という事なのかマニュアルでのゆっくりとしたスローな操作は非常にカクカクしたものであった。ズームリングのロータリーエンコーダーの分解能が低い?という印象と、信号を拾ってからの信号処理が滑らかでないためモーターの動きがデジタル的にカクカク動くという印象を受けた。この事は超スローズームをズームリングで行うと端的に表れる現象であったが、ある程度内部プログラム的に対処できそうな部分であるので製品版では改良されているのではないかと思われる。

逆にズームレバーを使ったズームはとてもスムーズなので、滑らかなズームを求めるのならズームレバーを用いた撮影スタイルが良いかもしれない。しかしズームレバーでの操作中にズームリングに触れてしまうとズーム動作は止まってしまうので注意が必要だ。

光学手振れ補正はAC160と比較すると補正エリアが900%広くなった。またメニューで手振れ検知のレベルを調整できるので、手持ちや車載など手振れ周期の違う振動にも細かく対応できる。またHD撮影モード時は光学手振れ補正に加え電子手振れ補正が有効になり、回転軸方向を加えた5軸補正が働くようになる。

操作性

側面パネルの操作系はわかりやすいボタン配置になっている

このカメラのGAINボタンはボタンを押す毎にL→M→H→L…と一方向に順次切り替わる仕様だ。GAINボタンを押したあとにダイヤルを押すとダイヤルでゲイン調整ができ、AWBボタンでVARを選択するとダイヤルで色温度を調整可能だ。

記録系

一般的なトレンドでもあるダブルSDメモリーカードスロットを搭載している。リレー記録・サイマル記録(2枚同時に同じもの)・バックグラウンド記録(スロット1はREC/STOP、スロット2は常時記録)が可能。またスロット別にUHD/FHDが記録できるデュアルコーデック記録を搭載している。

Panasonicのwebページより引用

HD収録時VFRバリアブルフレームレート記録では2fps~60fphまでの記録が可能。またスーパースローも最大120fps(59.94Hz時)で収録できる。

USERボタンは充実の13個

USERボタンは本体のボディに9個、LCDタッチパネルに4個備えている。44種類の機能をそれぞれのボタンにメニューから合わせることが可能だ。

スライド式3.5型LCD(タッチパネル式)は115万ドットで比較的高精細な画面である。パネルの位置もこの位置だと視認性が良いのでオペレートがしやすい。またビューファインダーは0.39型のOLED(有機EL方式)177万ドットと大変高精細である。

最近ビューファインダーにOLEDを搭載したカメラは他社製も含め殆どがアイセンサーを搭載している。このセンサーはビューファインダーをのぞきこんだ時にOLEDが作動する仕掛けだ。この機能はOLEDの性能を維持するために、必要な時以外は点灯させない仕組みなのだ。本来OLEDの反応速度は液晶以上に速いのであるが、本機に関してはセンサーがVFに顔などの物体が近付いた事を検知してからOLEDが作動するまで時間がかかる。かかると言っても1秒程度なのだが、この待たされる事にカメラマンはストレスを感じてしまう。メニューではこのセンサー感度の設定はできるが反応時間の項目は無い。この辺りが解消されると良いかもしれない。

撮影アシスト機能としてLCD/EVFにWVM(ウェーブフォームモニター)やVECTOR(ベクトルスコープ)を表示する事ができる。このクラスのカメラでこれらの機能が付いているのはとてもありがたい。また水準器表示も可能となっている。ハンディ撮影時などの水平基準取りに重宝する。

その他多岐にわたる調整項目

メニューボタンを押すとまず下記の画面が表示される。一番最初のトップメニューがシーンファイルというのも結構驚きである。他社カメラにはない独特のメニュー構成は本機の映像表現への意気込みが感じられる。自分的にはメモリー周りのフォーマットや収録形式の選択など普段よく使う項目を上位にしてもらうと扱いやすいと感じる。また撮影や音声の設定も2ページ目というのもアクセスに時間がかかるので上位表示が必要だと思う。

今回デモ機をお借りした間で時間の関係上検証できなかった部分は残念ながらいくつもある。特に16軸独立色補正機能は試してみたかった。この機能は特定の色成分に対しての彩度調整、位相調整が可能なので、この機能を使えば他のカメラとの微妙な色調整を簡単に行うことができる。また、収録時に空の色を深くしたり、深い緑色の山を黄緑色の新緑の色に変えたりという表現が出来るようになる。また8モードガンマもそれぞれのシーンにより使い分けたい機能の一つだ。

総評

Panasonic製カメラは普段手にする機会があまり無かったため、正直メニュー操作に非常に手間取った。ここにあるはずだと思っている項目がその付近には無かったり、画質調整など繰り返し操作したい部分を一旦メニュー画面から抜けてしまうと、再びその調整項目にたどり着くためにクルクルピっと行わなければならないのは正直辛い。メニュ項目から抜け出たところで再びすぐその部分に戻れるような機能を付けてもらえるとありがたい。まあ慣れという事なのかもしれないが、その辺りのメーカーの考え方やポリシーを早く理解できるようになりたい。

4K 17:9という広い画角は今までの16:9とは違う雰囲気を醸し出している。またFHDでは60p ALL Iフレームというフレーム間圧縮が無いモードも装備されている。これらの高画質な映像をUX180はFHD、UHD、4Kとまだまだ多岐にわたる制作環境の中で十分な存在価値を醸し出しているのではないだろうか。

WRITER PROFILE

猿田守一

猿田守一

企業、CM、スポーツ配信など広範囲な撮影を行っている。PRONEWSではInterBEE、NAB、IBCなどの展示会レポートを行った経験を持つ。