txt:千葉孝 構成:編集部
セキュリティ対策抜群のHDD~EclairPRO USB3.0 Portable Storage
皆さんの撮影現場で撮影データのバックアップ体制はどのように構築されているでしょうか?ご存じのようにここ数年、ポータブルSSDの価格がどんどん安価になり、転送速度の速い製品や大容量の製品、強固なケースを売りにする製品などが数多く市場に出回っています。今や高速データ転送が可能なポータブルSSDドライブは撮影現場になくてはならない物となりました。
しかしその反面、万が一SSDドライブにトラブルが発生するとハードディスクよりも復旧の可能性が低いという事はご存じでしょうか?
内部で磁気ディスクを高速回転させ、磁気ヘッドを用いてデータを書き込み・読み込みしているHDDと比較し、SSDの場合は内部に物理的動作する部品を持たず、データはすべてメモリーチップに保存しています。そのため何らかのトラブルがあった場合、HDDと比較して復旧がより困難になってしまう傾向があります。
内部コントローラーチップのみの損傷であればコントローラーチップをエミュレートすることでデータサルベージできる可能性もありますが、データ自体を保存してあるメモリー領域に問題があった場合、データサルベージはほぼ不可能と言っていいかと思います。
この様な理由で転送速度が早く小型で耐久性もあるポータブルSSDですが、半面、データ保護とセキュリティー面に関しては一抹の不安が残ります。
今回ご紹介するバイオス社のEclairPRO EP25CB3シリーズですが、SSD全盛の現在にあえてHDDを投入するという意欲的な製品です。製品はUSB3.0接続、Mac/Windows両対応のポータブルHDDとなっており、現在1TBモデルと2TBのモデルがリリースされています。ではその外観の特徴から見ていきましょう。
本体はプラスティックケースに覆われた一般的な2.5インチを内蔵した外付けHDDです。外周にはゴム素材のバンパーなどはありませんが、本体は米軍軍事規格(MILスペック)に準拠した設計となっており、内部の衝撃性吸収シリコンゴム+高剛性シャーシの効果による高い対衝撃性を実現しています。
HDDの中身
普段の忙しい撮影現場での運用でも安心して使えそうですね。また、持ち歩くときや棚で管理するときに便利なプラスティックケースも付属しています。
付属のプラスティックケース
プラスティックケース上部にはくぼみがあり、棚に陳列した際などに指を入れて取り出しやすくなっている
その他の特徴としては、USB3.0のケーブルが本体に付属しており、別途ケーブルを用意することなく簡単にPCと接続ができます。ケーブルは約20センチの短いものですが、50センチのUSB3.0延長ケーブルも付属してますのでデスクトップPCの背面コネクターに接続するような場合でも問題ないかと思います。
本体には小さめのパワーアクセスランプが搭載され、アクセス状態を確認できます。
底面にはゴムカバーで覆われたセキュリティースロットが搭載されているので、展示会等、不特定多数の手に触れるような場所で使用する場合、盗難防止に利用できます。
では肝心のスペックについてみていきましょう。この製品独自の特徴の数々は、日頃から業務で大容量データを取扱う映像クリエイター専用と言ってもいい充実した内容になっています。
まず大きな特徴として、この製品は高度なセキュリティー対策としてデータ暗号化機能(AES256bit)が搭載されており、保存したデータは内部で自動的に暗号化され、ユーザーがHDDにアクセスするためには毎回認証が必要になるというものです。
これは万が一、HDD自体が外部の手に渡った場合でもデータの解析を防止する機能となります。普段の撮影で機密保護が必要な撮影素材を取り扱うデータマネージャーには必須機能と言えるのではないかと思います。
ユーザー認証を行うにはHDD内にある暗号認証ソフトウェアを使用します。パソコン自体に専用ソフトウェアをインストールする必要がないので、外出先のPCでも簡単に利用できるのは便利ですね。
また、認証には通常のパスワード並びに非接触型のICカードを利用することができます。運用はICカードのみ、パスワードのみ、または両方使用しなければ認証出来ないなど、ユーザーの使用環境によって多彩な設定が可能です。
ICカード自体は皆さんが日常で使用されている交通系ICカードや電子マネー、または対応しているスマートフォンが使用可能で、最大5枚までHDD本体に登録することができます。カードリーダーはHDD本体にカードリーダー機能を搭載していますので、お手持ちの非接触型ICカードをHDD本体にタッチするだけでロックが解除できます。
映像制作のプロジェクトにおいては一つのハードディスクが複数のスタッフの手に渡ることも珍しくなく、今まではハードディスクにロックをかけた場合、パスワードの管理も手間がかかっていましたが、普段の生活で使用している非接触型ICカードをプロジェクトに関わるスタッフがそれぞれで使用する事で、セキュリティーに対しての手間が大きく軽減されそうですね。
ここで実際にICカードの登録を行ってみました。初期設定で一度だけカードを登録することで次回からユーティリティーを立ち上げ、カードを本体にかざすだけでHDDの使用領域(ユーティリティーフォルダーとは別のドライブとして認識)しました。また、Windowsマシンのみ、HDDを接続すると自動的にユーティリティーが立ち上がる設定もできますので、より手軽に認証が可能となってます。
認証は非接触型ICカード以外にもおさいふケイタイ対応のiPhone(iPhone7以降)であれば利用可能です。SUICAなど交通系カードをスマホに登録して使用している方はこちらのほうが使い勝手がいいかもしれませんね。
さて、内部で信号を暗号化するという便利な機能ですが、肝心の転送速度に暗号化の影響が無いのかマークベンチソフトを使い、計測してみました。
テストでお借りしたのはEP25CB3-1T01の容量1TBの製品です。結果は暗号化による速度低下はあまり感じず、通常の外付けHDDと全く同じ感覚で使用できることが分かりました。また、新製品として、高耐久性はそのままで、ICカードによる認証機能を省いたEP25SB3も併売されています。
製品の特長を駆け足で見てきました。このようなセキュリティーレベルの高い製品を映像制作現場に導入することで一層の安心感をもって作業にあたる事ができます。
しかし既存のSSDの利便性も捨てがたいものはありますので、セキュアな本製品を導入し、使用範囲を上手に切り分ける事により、一層安全でスピード感のあるワークフローを構築する事が出来るのではないでしょうか?
ここで筆者が提案したいのは、SSDの利便性は捨てがたいため、忙しい撮影現場でのファーストバックアップにはSSDドライブを使用し、撮影部から制作部にデータを移行するセカンドバックアップの時点でセキュアなHDDを使用するというものです。基本的に撮影部管理下の撮影済みデータは制作部にデータが渡った時点で破棄する事が前提だと思いますので、このようなスピード感のあるワークフローがベストかと思います。
制作部は仕上げまでの長時間、ポスプロやコンポジットなど他部署にデータを安全に移行、保管する必要があり、社外へ大切なデータを持ち出す場合も多いかと思います。より安全安心なデータ管理が求められている現在、セキュリティー面で信頼できるHDDの導入が必須ではないでしょうか?
■EclairPRO USB3.0 Portable Storage購入先