txt:川井拓也(株式会社 ヒマナイヌ) 構成:編集部
今、音声コンテンツに最適な機材は「ZOOM PodTrak P8」に決まり!
二度目の緊急事態宣言も発出され、リモートワークで巣ごもりの方も多いと思う。そんな時には自宅のデスク周りの最適化に余念がないという方も多いのではないだろうか?ライブ配信対応のセッティングにしたりZoomのウェビナーに最適化するなど工夫は人それぞれかと思う。ちなみによく混在するが小文字Zoomは、コミュニケーションツールを扱うアメリカ企業であり、大文字ZOOMは、日本の音響機材メーカー企業である。
そんな中、音声コンテンツの発信にうってつけの機材を紹介したい!それがZOOM社の「PodTrak P8」である。映像のない音声コンテンツの利点はたくさんある。まず自分が映らなくていいので身支度がいらない。Zoomなどで複数人でのコミュニケーションも多くなったと思うが、ズラッと並ぶ顔の中に自分の顔が露出するのは気恥ずかしく慣れないという人も多いだろう。またオンライン飲み会で自分が発話するタイミングもリアルと違って難しく、ひとつの話題に付き合わないといけないのも辛い…。
自分の考えや思いを情報発信するのであれば、実は映像よりもポッドキャストの方が気軽で素早くはじめられる。多くの人が映像メディアに殺到してる隙にのんびりマイペースでラジオ!自由に気軽にはじめるのもまた一興なのだ!映像が生業の筆者も実は音声コンテンツの可能性には魅了されている。
気分が上がる機材でモチベーションアップ!
音声コンテンツのお手本は、いうまでもなくラジオである。軽妙なトークに洒落たジングル、リスナーの心に語りかける距離感。ラジオにはテレビや動画コンテンツにはない親近感がある。
そして何よりラジオ番組の醍醐味はほとんどがライブ番組であることだ。テレビを注意深く見ていると録画編集されたものが多い。テレビは、ニュース、天気予報、スポーツ中継などは、生放送だが、それ以外は、ほぼ編集されたものである。そして視聴者の意見を即座に反映させるようなコンテンツも少ない。
その点、音声コンテンツの雄、ラジオは違う。FAXやメールを使ってリスナーの反応を直接取り込み番組は進行していく。こうしたラジオの特徴をポッドキャストにも反映させたい!そう思ったときに手に入れたのが、PodTrak P8である。コンパクトで電池駆動も可能なボディにカラフルなヘッドフォン端子と大きな液晶。カジュアルで凝縮感のあるデザインが絶妙である。一台で全てが揃う幕内弁当のような重宝さ。早速味わっていこうではないか!
PodTrak P8はライブ配信が好きな人向け
音声コンテンツも編集も可能だ。トークを録音して編集アプリでジングルを挿入したりBGMをかぶせたり、自宅でMAして完成させることも出来る。編集が好きな人はその手法でじっくり制作するのもいいだろう。しかしそれをライブでおこなうラジオ放送のように行いたい。
BGMをかけながらジングルのアタックでコーナーに入りそのまま生でトークをしたい、ラジオ愛あふれるライブレコーディング派ならPodTrak P8がぴったりだ。6本のXLRマイクに加えスマホなどの音声、ジングルなどを登録してパッドを叩いてポン出し、それらを録音できる。ポッドキャスターが操作しながらトークすることを前提にした設計なのでボタンレイアウトはシンプルで説明書を読まなくても直感的に使える。
PodTrak P8はミキサーと何が違うのか?どんな人に向いているのか?
PodTrak P8は一見するとミキサー然としている。もちろんミキサーとしての機能は一通り備えているが、出力系統はTRSジャックによるスピーカーアウト端子とUSBアウトのみでPAミキサーとして使うにはやや心もとない。やはり本領を発揮するのはポッドキャストでミックスした音声をUSBアウトでパソコンに取り込みそのまま音声配信したり、本体のSDカードスロットで録音してアップロードするという使い方となる。
PodTrak P8はATEM Mini Pro ISOの音声版と考えると理解が早い!
PodTrak P8が面白い部分は、パラで全チャンネルを個別に同時録音できる機能だ。例えばマイクを6本とスマホの音楽にパッドに登録されたジングルをミックスして録音する場合、ミックスされたポッドキャスト用のステレオ音声以外になんと8本の個別音声ファイルが自動で録音される。マイク6本分のモノラル音声ファイルとステレオによるスマホの音楽トラック、ステレオのジングルトラックである。ミックス前のパラ素材に戻れるのでライブミキシングでバランスが悪くても編集でやり直せるというわけだ。
このパラ素材の編集はパソコンの音声編集アプリで行う。アプリは市販の好きな音声編集アプリを使えば良い。MacならGarageBand、WindowsならAudacityが定番だ。なお、この8本の音声トラックをPodTrak P8本体で再生させて再ミックスすることは出来ない。映像制作になじみのあるPRONEWS読者の方々であれば、スイッチングアウト以外に各カメラのパラも録画できるスイッチャーBlackmagic Design「ATEM Mini Pro ISO」の音声版と考えるとPodTrak P8の特徴をつかみやすいだろう。
ミキサー特有の用語は少なく、シンプルなインターフェイス!
コンパクトな本体には必要最小限の物理スイッチがあり細かな設定はタッチスクリーンで行う。XLR入力の物理キーはマイクのファンタム電源のオンオフとミュート、オンエアーキーとフェーダーのみ。ファンタム電源のオンオフが全チャンネル個別に切り替えられるのでダイナミックマイクとコンデンサーマイクは柔軟に組合わせ可能なのがうれしい。
各チャンネルの設定は4つの項目のみのシンプル設計。マイクプリアンプの項目でゲインとリミッター、ローカットのオンオフを設定。どちらもオンオフ以上の細かなパラメーターの設定はない。EQにあたるのはトーンの調整で、これも低音と高音のスライダーを左右に動かすだけ。左に動かせば低域強調、右に動かせば高域強調、つまみが真ん中だとなぜか低域と高域を少し強調するという仕様。このあたりは慣れが必要だが男性ゲストのマイクは少し左へ、女性ゲストのマイクは少し右へくらいの調整が出来ると考えておけばいいだろう。
コンプレッサーとディエッサーも同じスライドバーで設定する。かかり具合を小さくするか大きくするかだけ。どのスライダーもタッチスクリーンをダブルタップすると初期値に戻るので迷った時も安心。入力段の設定はこれだけなのでミキサーに慣れている人だと拍子抜けするくらいシンプルだが、ポッドキャストを初めて作るぞ!という人にはミキサー特有の用語が最小限なので使いやすい。
製品の性格を決定づける6人分のヘッドフォン端子!
本体デザインの特徴は右上にあるカラフルな6人分のヘッドフォン端子。マイク入力も6人分なので最大で6人が同時にしゃべるポッドキャストに対応している。これまでこれだけヘッドフォン端子が多くついている機器があっただろうか?
出演者がそれぞれ自分の好きなヘッドフォンを接続し好きな音量で聞きながらトークする。そのシーンを想像しただけでも楽しい。大学の部室などにPodTrak P8があればそこはたちまちカレッジラジオ局のスタジオになるというわけだ。端子がすべてミニジャックなのもカジュアルで良い。
36種類のオーディオを登録できるサウンドパッド!
サウンドパッドは物理ボタンとして9個あるが、4つのバンク機能を切り替えることで36種類のオーディオファイルを登録してポン出しすることが出来る。この機能をいかに使いこなすかがP8活用の鍵となる。
登録できるオーディオファイル形式はWAV/44.1kHz/16bit/24bit/モノラル/ステレオで長さに制限はない。サウンドパッドとしての物理フェーダーは1つだが個別のサウンドファイルの設定項目の中で再生ボリュームを設定できるのでBGM用の音楽は小さめ、ジングルのアタックは大きめなど事前にバランスを決めて仕込んでおけば物理フェーダーは動かさずに運用できる。再生の方式は「OneShot」「Pause」「Loop」「Hold」の4つから選択可能だ。
「OneShot」は押すたびにファイルを一度だけ再生する。ジングルや効果音向け。「Pause」は押すたびに再生と一時停止になるので事前収録したインタビューなどを再生しながら時々コメントをはさむ時などに重宝する。「Loop」はBGM音楽などに使いやすい。「Hold」は押してる間はループ再生し、離すと停止するので拍手や笑い声などにぴったり。4つあるバンクは番組ごとに作ってもいいし、効果音、BGMなど種類で分けるのもあり。サウンドパッドに登録する効果音やフリー音源を探しながら自分の番組のスタイルを模索するのは実に楽しい。
PodTrack P8があるとポッドキャストをやりたくなる!人をやる気にさせるガジェット!
ポッドキャスターが自分のトークに集中できるように極限まで絞り込まれた機能と操作性。話者とミキサー操作を別の人がするのではなくポッドキャスター自らが操作する前提のインターフェイスデザインになっているのが心憎い。ポッドキャストにここまでフォーカスしてデザインされたガジェットはない。横にあるだけで人をやる気にさせる稀有なガジェット。操作の習熟のための時間は必要なし。明日からラジオをはじめるたいならPodTrak P8が最高の相棒になるだろう。
百聞は一見に如かず。PodTrak P8を使って1本作ってみた。工場出荷時のデフォルト音源しか使っていないがラジオっぽさは感じていただけるだろう。このトークのテンションはあきらかにP8が作り出しもの。スマホに向かって録音するだけではこうはならないのだ。道具から入る。改めてそんな言葉を思い出した。
txt:川井拓也(株式会社 ヒマナイヌ) 構成:編集部