Mavic 3レビューメイン写真

■DJIストアの価格
DJI Mavic 3:税込253,000円
DJI Mavic 3 Fly More コンボ:税込341,000円
DJI Mavic 3 Cine Premium コンボ:税込583,000円

4/3型CMOSセンサー搭載で高解像度と広ダイナミックレンジを実現

2018年秋に発売のDJI Mavic 2(PRO、ZOOM)から実に3年、ようやくDJIからプロ向けMavicシリーズ最新機種、DJI Mavic 3シリーズが登場した。

今回機種の目玉はカメラユニットの大型化、マイクロフォーサーズサイズのセンサー採用だ。ドローンといえば、「飛行できる」ことと引き換えに、撮影性能は控えめだった。しかし、 Mavic 3シリーズは、パナソニックLUMIXシリーズのマイクロフォーサーズ一眼カメラ「Gシリーズ」、オリンパスのOM-Dシリーズ、BlackMagic DesignのBlackmagic Pocket Cinema Camera 4K、Z CAMのE2-M4などのカメラに採用しているセンサーと同じサイズを採用しており、ミラーレスやシネマカメラと同等の撮影映像が期待できるわけだ。

長年のZ CAMやパナソニックLUMIXユーザーの筆者であるが、早速DJI Mavic 3 CINEを持ち出し撮影、映像作品を製作したので、まずは視聴してほしい。

ほぼMavic 3 CINEで撮影を行った「Never Die – shot by Mavic 3 CINE-」

■Never Die – shot by DJI Mavic 3 CINE – の撮影仕様

  • C4K 120fps(スローモーションモード)
  • Apple ProRes 422 HQ
  • ノーマルカラー

いかがだろう。これはほぼ全編、ドローン搭載カメラによる撮影映像なのだ。最新最高のフォーマット(Apple ProRes 422 HQ)、高解像度のハイフレームレート(4K 120fps)による品質は地上型カメラに匹敵し、申し分ないのではないか(あとはレンズの相談くらい)。

さて、それではこの最新最高なドローンについて長年のDJIファンでありMavic 3発表会時と同時に同機を速攻で入手した筆者が、DJIドローンのほぼすべてにふれてきた視点でMavic 3をレビューする。

Mavic 3レビュー説明写真
左はDJI Mavic 3、右はDJI Mavic 3 CINE

今回の機種展開は2つ。ベースとなる仕様を備えた「DJI Mavic 3」、前者にApple ProRes 422 HQ記録機能を追加した「DJI Mavic 3 CINE」の2モデルとなっている。

2機種の違いは記録機能のみなので、記事中においては一括して「Mavic 3」と表記して扱う。CINEモデル独自の仕様にふれているところは都度、その旨を記しておく。

機体周辺を大幅に改善

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2つのカメラを搭載

外観において一見して独特の違和感を放つ部分は独自の形状であるカメラユニット。上部に望遠カメラ、下部に焦点距離24mmのレンズを使った高画質カメラを搭載している。先代Mavic 2におけるPROとZOOMを一体に統合させた形だ。

メインカメラはマイクロフォーサーズセンサーと同等のサイズに大型化、HNCS(ハッセルブラッドナチュラルカラーソリューション)をMavic 2から引き続き採用。5.1K 50fps、4K60fps、スローモーションモードは4K120fpsに対応し、CINEモデルではApple ProRes 422 HQでの記録が可能だ。

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リアル4脚立ち

先代Mavicシリーズでは4本の脚で胴体を支えているようにみえて、実際は前脚と腹部で本体を支えていた。Mavic 3では前後の4本の脚それぞれで接地するように改められている。設置面からカメラやセンサー類を守りつつ、高すぎない重心で立ち転けをほぼ起こしにくいデザインとなっている。

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高脚化した機体

気になる機体の部材

機体やバッテリーの一部に採用されているサラッとした素材が、なにかに擦れると白っぽく粉を出し摩耗したようになる。指で揉み消すことができるが、最終的には白い擦れ跡となってしまうのではないかとちょっと心配だ。

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機体のサラサラ部

プロペラが2素材構成

先端部がゴムのような軟素材となっている。プロペラ自身が傷つきにくく、接触した対象物も傷つけにくい。

バッテリーは後部差し込み

Mavic 2シリーズでは機体上面からかぶせるようにはめ込む機構で、バッテリーが不調により膨張し、機体から外れるのではないかという心配があった。本機では後ろ側からの差し込み式となっていてその心配はない。

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バッテリー差し込み中

始動音、障害物検知音が変わった

機体電源投入時に発せられる音声が少し未来的な雰囲気に変わった。障害物検知音もけたたましく耳障りだったものがマイルドになっている。緊張感を煽り過ぎないので、有事の際に落ち着いて対処できるだろう。

ジンバル初期化動作の変更

機体電源投入時のジンバル初期化動作が地味になった。大きくカメラユニットが振り回されないので、接地面などに当たって初期化失敗、設置場所を変えて再始動ということが減っている。

内蔵ジンバルロックの搭載

電源切断の際に小さく「カチリ」と音がして、かるくジンバルが固定される。なお、従来ジンバルロックが兼任していたカバーの役割りはまた別途、あらたに付属のストレージカバーがガバっと大きく覆いかぶせる形で果たす(さらにこれはプロペラもロックしつつ保護する)。

機体稼働中のジンバルの力が強い

機体電源が入っている状態のジンバルにこもる力が大きい。そのままレンズフィルターの脱着交換を行うくらいは平気だ。

プロペラノイズ静粛化

飛行時のプロペラ音がマイルドになった。なにかと気ぜわしい低空飛行の際にストレスが小さくて良い。

上下移動速度アップ

機体の上昇、下降速度が大きくなった。目的の撮影地点まで短時間で到達できるほか、運動性の大きな被写体の追いかけ撮影など、よりテクニカルなワークへの対応も可能。

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飛行中の機体

長時間の飛行が可能

飛行時間は空撮機としては、驚きの46分を実現。先述のプロペラ低ノイズ化や機体運動性能アップと合わせて、上空において落ち着いて撮影に集中できる。

各種撮影解像度でクロップされない

静止画撮影やHD〜5.1K解像度の動画撮影にいたるまで、画角がクロップされない。これまでは、飛行撮影中の解像度やフレームレートを選択し直す場合は、画角調整のために機体を移動する必要があった。ただし、スローモーションモード使用時はクロップされる。解像度、解像感で見るなら、冒頭の作例以上のものも期待できる。

CINEモデルのSSDは取り外せない

CINEモデルに内蔵されている容量1TBのSSDは、取り外しや交換はできない。フライトごとデータバックアップの時間を挟むことができない場合にそれまでの撮影データを抱えたまま空に送り出すことになるので、予備機体の用意によって対処すると良い。

DJI RC-N1やプロ仕様のDJI RC PROに対応

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DJI RC PRO

ディスプレイ内蔵送信機「DJI RC PRO」登場

Mavic 3は標準的な「DJI RC-N1送信機」やプロ仕様の「DJI RC PRO」に対応する。DJI RC Proは、Cine Premiumコンボにも同梱されるほか、税込132,000円で単品発売される。

DJI RC-N1は DJI MINI2、DJI AIR2シリーズにも付属していたもので、アプリがインストールされた任意のスマートフォンを接続し使用する。

DJI RC PROはOSとアプリがインストールされているほか、液晶画面、機能割当て可能なボタンやホイール、MicroSDカードスロット、そして外部にHDMIポートが搭載されている。

DJI RC PROはミニHDMI出力に対応

上述のHDMI出力ポートはミニHDMI規格となっている。汎用性と堅牢性に不足はあるが、他のポートも含めてコンパクトにレイアウトされている。

なお、出力映像はパラメーターやボタン、小地図などもカメラ映像にオーバーレイされた完全なアプリ画面のコピーとなる。これは後々のアップデートで、カメラ映像のみ出力との切り替え可能となることを期待したい。

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HDMIほか底部ポート

対応アプリ「DJI FLY」

Mavic 3では飛行撮影時に使用するアプリは先代のMavic 2シリーズまでで併用とされていた「DJI GO 4」から、近々で発売となっている同社ドローン各種に対応した「DJI FLY」となっている。

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DJI FLYスクリーンショットMavic 3 CINE接続起動画面

DJIドローン操縦用アプリ「DJI FLY」に対応

アプリデザイン、設定

多機能複雑だったDJI GO 4から一転、フラットで淡白なレイアウトデザインとなっている。各機能の確認やアクセシビリティは良好。

カラー設定や細かな(彩度、コントラスト、シャープネスなど)撮影設定の選択が見あたらないが、最新最高の品質に対応しているのでポストプロダクションによる対処で問題はないだろう。

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DJI FLYスクリーンショット平時画面

ちなみにMavic 3 CINEとMavic 3のアプリ接続時に異なる部分は「ProRes」の選択追加のみだ。

DJI FLYスクリーンショット Mavic 3 CINEのカメラ設定
DJI FLYスクリーンショット Mavic 3のカメラ設定

撮影中画面について

メイン画面は常時、各種パラメーター類はカメラ映像にオーバーレイされた状態となる。画角内の構図やコンテンツ配置を考える際にはカメラ映像だけの表示にできると余計な想像力を必要としなくていい。

また、カメラ画面をタップし、ドラッグすることでカメラがパン可能となるが、範囲は正面から ±5°となる。パンの際は機体ごと振り向くことも多いが、調整時に表示される目盛り上はもう少し余地があるので、アップデートなりで振れ幅が大きくなることに期待したい。

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DJI FLYのジンバルパン±5表示

アクセサリーを全て収納できるキャリーバッグ登場

各コンボ形態の製品には専用バッグ、「DJI コンバーティブルキャリーバッグ」が含まれる。毎度DJIの専用品にお馴染みの各パーツがコンパートメントにそれぞれキチッと収まる仕様に加えて、3つのキャリング形態に切り替えられる様になっている。

これについてはより詳細に解説とカタログ映像を用意したので、下記より視聴していただきたい。

[Mavic 3/CINE] DJI CONVERTIBLE CARRYING BAG -Value and Usage-

DJI CONVERTIBLE CARRYING BAG FILM LOOKBOOK

Mavic 4に期待したい機能

大幅な機能改善を実現しているMavic 3だが、筆者的に搭載してほしかった機能がいくつかある。

内蔵ND

飛行時間が延長されたので、フィルター類交換のためにいちいち地上に下ろすことにならなければより効率的に撮影に使用できる。

ATTIモード

ATTIモードとは、人工衛星による機体の位置制御を無効とし、IMUや気圧センサーなどによって飛行する状態のことで、MAVIC3では任意にこのモードに設定することができず、なにかと不便だ。歴代Mavicになかっただけに期待はできないのだが、当該機能を装備している‎PhantomシリーズやInspireシリーズの新型登場が不透明なだけに、最新のプロ向け機体としては欲しい機能だ。

待望通りのプロ向けドローン登場

Mavic 3シリーズは、それまでの自社製品や他社製品を包括しつつも、これまでの既存機種を凌駕した新製品だと筆者は評価している。Mavic 3本体やDJI RC PRO送信機については、価格なりの威厳とプレミアムなまとまり感は半端でなく大きいと感じている。

カメラユニット、センサーによる撮影画質も、単にマイクロフォーサーズとして大型化しただけではなく、最新世代のカメラ、処理系統による画作りをっぽい味を感じさせる印象だ。

最後に、購入検討中である向きはぜひ飛びや飛ばした感触を直接確認してほしい。この点もこれまでにない、新世代的な感覚である。

なお、引き続き、筆者開設・管理のfacebookページ「DJI MAVIC 3/Cine user’s information group」でも追いかけ、紹介していくつもりだ。

Mavic 3レビュー説明写真
飛行中のMavic 3 CINE
  • 記事中モデル:伊豫明音、宮﨑恵理
  • パッケージモデル、映像出演:SASSAN
  • ロケ協力:鳴門カフェAO

伊丹迅

綺麗め女子、ネコ、風景を写真・映像で素敵に表現する作家、ドローンパイロット。「Panasonic S5/S1/S1R/S1H User’s Information Board」「Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K & 6K info」「DJI RS2/RSC2、RONIN、RONIN 4D使用者懇談会」「DJI MAVIC・SPARKオーナーズ」などのFacebookグループを管理運営する。徳島ドローン協会 設立者/事務局長。正体は悪魔音楽集団「ギロチン伯爵」主宰/ヴォーカリストの悪魔、デーモン獄長。