■価格
MKE 400-II:オープン価格、市場想定価格は税込28,600円
MKE 400-II Mobile Kit:オープン価格、市場想定価格は税込34,100円
■国内発売日
2022年1月27日
■問い合わせ先
ゼンハイザージャパン
一眼カメラなどのシューに直接取り付けるオンカメラマイクの新製品登場
一般的に映像の中で、音声の重要性というのは画の解像度やダイナミックレンジ、ルックなどという目で見てわかる情報より割と軽視されがちだと思う。しかし、音声のクオリティが映像全体のクオリティに大きく影響を与えることは普段PRONEWSをご覧の皆様はすでにご存知のことだろう。
「いい音で録れていて当たり前。音が悪ければ映像作品としてマイナス評価」という減点方式の評価をされる音声の世界で、特に収録に苦労しているのは筆者だけではないはずだ。
先日、映像撮影の現場で活躍する多くのマイクを開発している老舗メーカー、ゼンハイザー社より新しいマイクが登場した。それが「MKE 400-II」である。
ゼンハイザーのMKEシリーズといえば誰もが思い浮かべるのは「MKE 600」というショットガンマイクだろう。テレビ・映画撮影などのプロフェッショナルな現場で定番となっているMKH416というマイクに近い音質・性能ながら価格を抑え、電池内蔵によりファンタム電源不要で手軽に使用できるこのマイクは今や多くのカメラマンが所有し、「神マイク」とまで言われるマイクだ。
MKEシリーズのオンカメラマイクは他に「MKE 200」、「MKE 400」というモノラルマイクとMKE 440というステレオマイクが既に発売されている。これらはMKE 600とは異なり一眼カメラなどのシューに直接取り付けるタイプのマイクで、昨年(2021年)11月に発売されたMKE 200はその小ささを活かし、近年流行しているVlog撮影などで既に多くのビデオグラファーたちが愛用している。
今回はそんな実績のあるMKEシリーズの最新マイクとして発売されたMKE 400-IIを使用する機会を頂いた。実機を触ってみると音質だけではなく細かい使い勝手に至るまで丁寧に設計されていたことがわかったので早速レビューをしていこうと思う。
先代「MKE 400」との違い
今回は同時に本モデルの先代モデルのMKE 400も借りることができた。まずはMKE 400とMKE 400-IIを比較して、どうアップデートされたのか見ていこうと思う。
MKE 400は単4電池1本で動作したがMKE 400-IIは単4電池を2本使用する。
使用電池が2本になった弊害として電池込みの重量となるとMKE 400-IIはMKE 400に比べると約1.5倍の重量になってしまっている。
MKE 400-IIのマイク出力はマイク手前側。後ろのほうが良かったのでは?と使い始める前は思ったが、MKE 400のように後ろ側にケーブルが垂れ下がると液晶モニタにケーブルが被ってしまい使い勝手が悪かった。気になるレンズ側への干渉はまったく気にならない。
それぞれソニーのキットレンズを付けた「ZV-E10」に装着してみた。デザインの統一感は断然MKE 400-IIが良いと感じる。
電池駆動で小型軽量。充電式でない筆者好みのマイク
このMKE 400-IIは単4電池2本で100時間以上動作する。筆者はズボラな性格をしているため、この手の電池内蔵マイクは撮影後電源を切り忘れて次回使用するときには使えない…という悲しい思いを度々している。
だがMKE 400-IIはカメラと接続しプラグインパワーが供給されると自動的に電源が入る。そしてプラグインパワーが切れると、マイクの電源も連動して自動的に切れるようになっている。これはとても嬉しい機能だ。カメラにマイクを付けっぱなしでもカメラの電源さえ切ればマイクの電源が切れるので、マイクだけ電源を切り忘れていつの間にかバッテリー切れという悲しい事態が起きない。
プラグインパワーの入・切を検知して自動的に電源が入る。なお、緑色に光る電源LEDは実はボタンになっており、プラグインパワーを供給しない機器に接続する場合は手動で電源をONにできる。
そして使用電池が万が一切れていてもコンビニに駆け込めば簡単に調達できる単4電池駆動はありがたい。
小型なマイクの場合、小ささと軽さ、そして長時間運用を実現するためにリチウムイオン電池が採用されることが近年多い。USB電源などで繰り返し充電して使えるメリットは大きいと思われがちだが、どうしても使っていくとバッテリー性能は落ちてくるうえ、自然放電もあるので使用前日などわざわざフル充電しておくのは大変だしストレスを感じる。
以前は単3電池駆動のワイヤレスマイクもエネループのようなニッケル水素電池を使用していた筆者も、最近ではアルカリ乾電池を大量に購入して、撮影のたびに新品に取り換える。というワークフローに変更することで充電というタスクを一つ減らすことに成功した(中途半端に余った電池は我が家に4人いる子ども達が玩具で消費してくれている)。
筆者としては「絶対に収録中に電池切れを起こせない」という一発勝負の撮影や配信のときに新品のアルカリ乾電池を入れるだけで確実に動作してくれる電池交換式のマイクの存在はありがたいのだ。
ウインドシールドに内蔵されたマイクとショックマウント
先代のMKE 400から大きくアップデートされたのはそのフォルムだ。初代MKE 400はマイクの音響管部分が露出しウインドシールドに覆われている、いかにもガンマイク。という形だった。
ところがMKE 400-IIはショックマウントもマイク本体も筒状のウインドシールドに内蔵されている。これはいわば映画撮影等でよく見る、マイクブームの先端についている「カゴ」と呼ばれるマイク全体を覆うウインドシールドと同様のシステムである。これにより音響管へのタッチノイズや風の影響をより抑えることに成功しているのだ。
新旧モデルの比較。いかにもガンマイクという旧型に比べMKE 400-IIはデザインが洗練されている。
付属のウインドジャマーを取り付けたMKE 400-II。被せるだけなのですぐに取り付け・取り外しを行える。
筆者が所有しているRycote社のウインドシールド。MKE 600やMKH416をウインドシールドに入れるとこのサイズのカゴになるが、同一の機構を持っているMKE 400-IIのコンパクトさがよく分かる。
ウインドシールド内にショックマウント含めたマイク本体が内蔵されたことにより、他にもメリットが生まれた。カメラバッグ収納時など、これまではショックマウントが露出していたためバッグ内で負荷がかかりショックマウント部分へのダメージが懸念された。
ところがMKE 400-IIではショックマウントがウインドシールド内に内蔵されたことにより、ショックマウントにかかる負担が軽減され耐久性も向上するのではないかと予想している。
実際に撮影で使ってみて感じる音質と使い勝手
音質についてもMKE 400からの違いを比較していこうと思う。
まずは2本のマイクを同じ場所に起き、室内で自分の音声を収録してみた。音声はわずかにMKE 400-IIのほうが低域から広域までしっかり拾ってくれている(MKE 400、MKE 400-IIともにLoカットはオフ)。無音部分のゲインをかなり上げてみると、MKE 400の方には400Hz付近でトーン信号のようなノイズが確認できた。簡易的なアナライザアプリで録音したファイルを開いてみると確かにその帯域にノイズが存在する。その他にもMKE 400-IIはノイズが少なく、マイク自体のS/Nが良いことがわかる。
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また、事務所で使用しているGENELEC 8010からスイープ信号(20Hzから20kHzまで周波数が上がっていくテスト信号)を流して、スピーカーから15cmにおいた2本のマイクの特性も見てみた。厳密な測定環境ではないので参考程度にしかならないが、たしかにMKE 400-IIの方が低域・高域ともにしっかりと集音している。このあたりが最初に感じたレンジの広さなのだろう。
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スマートフォンでの撮影にも威力を発揮する
スマートフォン接続は付属している4極のTRS-TRRSコイルケーブルを使用する。通常カメラと違ってマイクとヘッドフォンの端子が別れていないスマートフォンではマイクを繋いでしまうと音がモニタリングできない。
しかし、このマイクにはマイク自体に3.5mmのヘッドフォンコネクタを装備しているのでスマートフォン使用時でもしっかりと音をモニタリングしながら撮影できるので安心だ。
弟分のマイクであるMKE 200にはヘッドフォン出力は装備されていないので、しっかり音をモニタリングしながら撮影をしたい。というユーザーにはMKE 400-IIはぴったりのマイクであるだろう。
縦位置での撮影にも対応しているが、スマホのUSB-C/3.5mmTRRSアダプタが干渉してしまいスマホを高い位置のみの設置となるのが残念だ。
オンカメラだけではもったいない。組み合わせ次第で可能性を無限に引き出せるマイクだ
このマイク、基本的にはオンカメラで使うことを前提に設計されているのだが、コールドシューの底には1/4ネジが切ってあり、三脚やブームポールなどに取り付けることも可能だ。試しに筆者が所有する「RODE Wireless GO II」と組み合わせてみたところ、驚くほど簡単にガンマイクをワイヤレス化することができた。RODE Wireless GO IIは2波受信可能なので撮影時にラベリアマイクとガンマイク2本といったよくあるマイク構成を楽にセットアップできる。
また、マイク自体が小型で軽量のため、クランプなどと組み合わせれば車内での撮影時など、狭い場所での撮影環境でもマイクの設置場所の自由度がかなり高く、カメラにマイクが見切れることなく設置することも可能だ。
最近主流のマイク入力のある2.4GHz帯のワイヤレスマイクを使用すると超小型なワイヤレスガンマイクシステムが簡単に作れる。
超軽量のブームポールなどを使って、映画やドラマ撮影の録音部も顔負けな本格的な音声収録システムを作ることも可能だった。
サカイアキヒロ|プロフィール
1984年生まれ。業務用音響機器メーカーでデザインエンジニアとして勤務する兼業映像クリエーター。 長年エンジニアとして培った音響とネットワークの知識を活用し、急激に需要が高まったBtoBのライブ配信現場でテクニカルディレクター兼音響スタッフとしても活動している。最近はYouTubeで機材レビューや配信技術などの動画を発信中。