いきなり結論を言ってしまうと、まさにMavic 3クラスのサブ機として最適な機体ではないか。圧倒的に小さい機体による新しい撮影の可能性、システム全体の可搬性、運用性。これらに向けて諸仕様を徹底的に見直し、追求しつくされ完成したものが、このたび登場した「DJI Mini 3 Pro」となる。

いつものDJIドローンのように、プロ(ハイエンドユーザー)の要求に応えつつ、初心者・入門者が楽しく安心して取り扱うことができるように考え尽くされている。

パッケージは3種類

Vol.177 DJI Mini 3 Proレビュー説明写真

販売形態は以下の3つが用意されている。

  • DJI Mini 3 Pro(DJI RC同梱):税込119,900円
  • DJI Mini 3 Pro(DJI RC-N1同梱):税込106,700円
  • DJI Mini 3 Pro(機体のみ):税込92,400円

上から紹介するが、このたび機体に加えてもうひとつの目玉となる新登場のDJI RC送信機同梱キットについては後述する。従来型であるDJI RC-N1送信機同梱キットは、導入コストを控えめにしつつベーシックな送信機で楽しめる。機体単体キットは、既に同社DJI Mini 2やDJI Air 2SなどとともにDJI RC-N1を所有している場合に、今後機体だけを買い足して使用する場合などに向けたものとして用意されている。

ちなみに交換プロペラや予備バッテリーについては、上記3種はいずれも最小数の同梱となっており、さらなる必要に応じて以下のコンボキットが用意されている。

  • DJI Mini 3 Pro Fly Moreキット Plus:税込29,480円

なお、バッテリーは大容量のものが用意され、上のコンボキットに2つ含まれる。

外観には障害物センサーを2つ配置

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機体全体

機体前方に障害物センサーが2つ配置され、その間が大きくくぼんでいる。ちょいと斬新なこの形状により、カメラユニットをより上方へ向けたり、ユニットごと回転したりして、縦位置の撮影が可能となっている。斬新なクリエイティブ撮影や点検撮影などに活用できる。

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くぼみからより上方の撮影が可能
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カメラユニットごと縦に回転する
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前方センサーの真後ろに後方センサーを配置

長くなったアームと大型化したプロペラ

使用時に展開する4本のアームは、どのアームから開いても互いに干渉しない仕組みとなっている。閉じるときもノンストレスでスピーディー。アームはやや長くなり、先に取り付けられたプロペラは大型化。これにより飛行性能が向上している。

前方アームを閉じたときに回り込むプロペラは、胴体底面の脚の間に軽く収まるようになっており、運搬時に開いてしまうことや収納先からの圧迫などに気を使う必要が軽減される。

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底面脚に収まるプロペラ

最大飛行時間は34分

最大飛行時間は、小型ドローンとしては驚異の34分。大容量の「インテリジェントフライトバッテリーPlus」使用時ではさらに延びて、なんと47分となっている。

30分を超える飛行時間は、撮影ポイントまでの行き帰りや撮影設定の変更などに、かなり余裕をもってあてられる。慎重さを要求されるシーンでもより落ち着いた対応が可能となる。タイムラプス、ハイパーラプスなどの際、時間が足りないということも減るだろう。

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インテリジェントフライトバッテリー(左)とインテリジェントフライトバッテリーPlus(右)

センサーは1/1.3インチサイズ搭載

カメラユニットのセンサーは1/1.3インチサイズで、絞り値は1.7。よりクリアに高精細な画が撮られる。

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絞り値f/1.7を実現

デュアルネイティブISOによるHDR撮影は、写真撮影時はシングルショットで最適シーンを認識し、自動的に有効化、映像撮影時では30fps以下の設定で自動的に有効となる。

オートフォーカス、マニュアルフォーカスが可能となっており、アプリ画面は指先によるタップフォーカスに対応する。

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タップフォーカスに対応。タップしているところ

カメラユニットは上方に60°まで仰角が可能。後述のポートレートモードと合わせれば、ほぼ真上まで画角に収録可能だ。

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カメラ仰角60°に向けた状態
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通常(横)写真モードによる作例
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通常(横)写真モードによる作例
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カメラユニットを90°回転させて縦位置(ポートレートモード)の写真、映像の撮影ができる
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ポートレートモード写真の作例
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DJI Mini 3 Proは、超解像撮影となる48MPモードも備えている。先述のポートレートモードも組み合わせて撮影が可能だ。

実勢調査カメラ編説明写真
48MP RAW写真撮影に対応
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48MPモードのスチル撮影例
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48MPモードのスチル撮影例
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48MPモードのスチル撮影例
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48MPモードのスチル撮影例
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ちなみにポートレートモードと48MPモードの仕様から、360°全天球撮影機能において真上部分の処理成果に期待したところ、意外にも実写により埋められることはなかった。ちょっと意外だ。画質などは以下の作例を観てほしい。

Post from RICOH THETA. – Spherical Image – RICOH THETA
作例1
Post from RICOH THETA. – Spherical Image – RICOH THETA
作例2
Post from RICOH THETA. – Spherical Image – RICOH THETA
作例3
Post from RICOH THETA. – Spherical Image – RICOH THETA
作例4

4Kで60fps、HDでは180fps撮影に対応

MOV、D-Cinelike、H.265による撮影に対応している。ハイフレームレートは4Kで60fps、HDでは180fpsが可能だ。

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映像撮影設定画面(アプリDJI FLY)

先述のF1.7絞り、仰角60°、HDR、ポートレートモードなどを使用して撮影した映像を観てほしい。なお、ファーストカットと廟のシーンはDJI Mavic 3により撮影、発売予定のNDフィルターは使用していない。

DJI Mini 3 Pro sample footage

ちなみに上述の作例に加え、縦長比率の映像も制作した。一般的な4K解像度を90°回転したもの(縦3840x横2160ピクセル)となっている。スマートフォンに収まり、よくハマるはずだ。

DJI Mini 3 Pro sample footage [Portrait]

シネマのような映像を撮り出すマスターショット

Mini 3 Proには、「マスターショット」と呼ばれる、タップするだけで自動的に撮影シーンを認識し、複雑な飛行経路を作成、そして編集もこなして動画を作成してくれる機能を搭載している。機能開始後約2分間で、様々な飛行方法による自動に被写体の撮影を行う。撮影中は画面に飛行・撮影方法の「技名」が表示されるのがおもしろい。撮影成果は、豊富に用意されているテンプレートを選択するだけで、理想的なショートフィルムとして自動編集される。

以下に作例を示す。完成作品、実際の撮影中画面、テンプレート選択画面、別途保存される生データの順に構成している。

短編映画を自動的に生成するクイックショット

クイックショットも、送信機画面上にて被写体を指定、いくつか用意された飛行パターンを選択することで機体は自動で運動し、撮影を行う。今回はクイックショットの中から、数ある飛行パターンの中でも360°写真と映像の組み合わせとなる、「アステロイド」を使用して作品を制作した。なお、本来はトラッキングした被写体の引き映像から高度を上げた360°写真に遷移した映像が出来上がるが、逆再生に再編集し、音楽も別のものとしてある。

送信機はDJI RC-N1とDJI RCに対応

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DJI RC-N1とDJI RC

新たなコントローラーとしてDJI RC送信機が用意されている。専用フライトアプリ「DJI FLY」がプリインストールされ、高輝度(700nit)の画面を搭載、背面や肩部にボタンやホイール、底面にはUSBやMicroSDポートが配置されている。

先にDJI Mavic 3(CINE)に合わせて登場しているDJI RC Proの簡易版といったところだが、特別なシーン以外では十分、軽いし、バッテリーの持続時間は少機能な分、上回っていたりする(DJI RCは4時間。DJI RC Proは3時間)。

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DJI RC

DJI RC-N1送信機は、クランプによって任意のスマートフォンやタブレットPC(きちんと純正マウンターも用意されている)を装着し、アプリDJI Flyをインストールして使用する。筐体及び画面サイズ、液晶輝度、タッチ感度、アプリ応答速度などでこだわりたい場合は有用だ。特にiOS版のDJI Flyを使用できるのはこちらだけとなる。

DJI RCよりハードウェアスイッチ類が少ないので、同時、複合的な操作を多用する場合はちょいと物足りないかもしれない。

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DJI RC-N1

なお、2機種ともアンテナは内蔵式となっており、ユーザーが意識して展開する必要はない(案外、このひと手間が面倒だったりする)。

SNSなどでの公開、シェアが簡単

クイック転送機能を仕様することにより、撮影した写真、映像ファイルは送信機を介さず、機体から無線接続したスマートフォンに転送できる(映像はそこそこ時間を要する)。SNSなどでの公開、シェアがとても簡単だ。ポートレートモード撮影と合わせると、今どきの縦画面ソーシャルメディアと相性が良いだろう。

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アプリは直接、機体を無線検索する
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接続後、転送ファイル選択画面となる

作例を縦画面ソーシャルメディアのパイオニア、TikTokに投稿した。Instagram Reels、YouTubeショートへ向けても同様に使用していける。

@demon_gokucho This film was shot in Portrait Mode on the DJI MINI 3 PRO.#DJI #MINI3 #MINI3PRO #PRONEWS ♬ A Dark Knight – Hans Zimmer & James Newton Howard

今後期待したいこと

機体や撮影については、最小クラスということを考えれば最初に記した通り、プロ必携と言えるほど十分だ。一方、新登場のDJI RCには、USB Type-Cポートが用意されているので外部モニター出力を期待したいところだ。アプリDJI Flyに関しては同アプリを使用する他機種と共通して、パラメーター類の非表示(カメラ映像だけを表示する)、バッテリー自己放電時間(日数)の表示や任意設定が可能となってほしい。

また、2022年6月20日、無人航空機機体登録制度が施行となる。併せて機械面で必要となるリモートID機構についてDJI Mini 3 Proでは、今後ファームウェアアップデートにより対応となっている。

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リモートID対応機一覧表

まとめ

最後にいきなり別角度の所見を持ち出して恐縮だが、DJI Mini 3 Proはその機体サイズにしては実用しての耐風性能が高いと感じられた。

長年のドローン撮影者としてはかなり重視したい点で、風を無視できる運用シーン拡大によりいわゆる「撮れ高(質・量)」を大きくできる。初心者・入門者も落ち着いて飛行撮影できる。

その他、本文中で紹介した仕様・機能は購入導入検討材料として前向きに作用するし、どれもこれもそのバランスのとれぶりも含めて最新最高と言える。カメラドローンカテゴリーのパイオニアなのだから当然ではあるのだが、DJI製のプロダクトはいつもこうだから困る(笑)。

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モデル:SASSAN(JK探検隊)

伊丹迅
綺麗め女子、ネコ、風景を写真・映像で素敵に表現する作家、ドローンパイロット。「Panasonic S5/S1/S1R/S1H User’s Information Board」「Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K & 6K info」「DJI RS2/RSC2、RONIN、RONIN 4D使用者懇談会」「DJI MAVIC・SPARKオーナーズ」などのFacebookグループを管理運営する。徳島ドローン協会 設立者/事務局長。正体は悪魔音楽集団「ギロチン伯爵」主宰/ヴォーカリストの悪魔、デーモン獄長。

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編集部

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。