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  • E PZ 10-20mm F4 G:税込約100,000円前後
  • E 15mm F1.4 G:税込約100,000円前後
  • E 11 mm F1.8:税込約70,000円前後

希望小売価格はオープン

ソニーよりAPS-CフォーマットサイズのEマウント純正ワイドレンズ3本、「E 11mm F1.8」、「E 15mm F1.4 G」、そして「E PZ 10-20mm F4 G」が同時リリースされた。これらワイドレンズの先行レビューをということでPRONEWS編集部よりオファーをいただき、発売日前に実機テストをする機会を得た。

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2022年に入ってから、各社方面よりAPS-Cフォーマットやスーパー35フォーマットの各種製品がリリースされている。2021年までは、新製品といえばフルサイズ35フォーマットの製品一色だったように個人的に感じていたが、ここに来てAPS-Cフォーマットというものが見直されているのだろうか。映像分野でいえばスーパー35フォーマットは長い歴史があり、業界人であれば最も親しみのあるフォーマットの一つではなかろうか。

もちろんながら、フルサイズ35フォーマットやそれ以上のフォーマットは、感度特性や解像度の面から有利であることは間違いないが、日進月歩で進化するセンサー技術競争に裏打ちされているため、センサー性能はどんどん高まっており、APS-Cセンサーボディであっても十分な性能を持ったカメラボディが既に存在する。また、フルサイズ35センサー機であってもクロップ運用ができる場合もあるなど、APS-Cフォーマットやスーパー35フォーマットには業界にとっても潜在的かつ安定的なニーズがあることは、読者の皆様も肌身で感じておられるのではなかろうか。

また、APS-Cフォーマットにはボディ側においてもレンズ側においても設計上で小型化できる強みもあり、画の品質を一定以上保ちつつ機動力を持たせたコンパクトな撮影環境が作れるという大きな強みもある。さらに、長年慣れ親しんだ画角感覚というものもあり、目にも手にも染み込んでいる方も少なくないだろう。そうした意味で、機材のダウンサイズの波の裏でAPS-Cフォーマットに再注目が集まるという流れは、決しておかしくないと私は感じている。

この新発売の3本のレンズ、事前にメーカー公式Webサイトでスペックを予習した頃に受け取ったということもあるが、まず手に取った初見でムービー用途を相当意識して作られていると感じた。特に今や映像制作の体制は少ユニット化が加速し、時にはワンオペ撮影や演者自らの自撮りなども多用されている。

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レンズ3本を自撮りテスト

今回のこの3本のレンズは、どれも広角域のレンズであるが、手に取ると本当に驚くほど軽く、近接撮影にも比較的に強く、防塵防滴に配慮した設計、それでいてAFも速い、という共通点がある。システム全体が軽量となり、取り回しの良い機動力抜群のシステム運用に貢献してくれるはずだ。特にVlog用途では、小型ジンバルに載せて自撮りするとすれば、昨今のα機が持つ、瞳AFと人認識とが相まってベストチョイスとなりうるポテンシャルを秘めていると感じた。

今回のテストにおいては、自分自身は通常では自撮りという行為はまずしないわけだが、これだけ自撮りを意識したレンズ群であるのだから、頑張って自撮りテストを行なってみるしかあるまい、と重い腰を上げた。ZHIYUN製のCRANE M3という小型ジンバルにα6600をボディにチョイスし組み合わせ、RODE Wireless GOにラベリアを装着し、自らに仕込んだ構成で大阪梅田近辺にて自撮りしてみたのだ。

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音声モニターはソニー製のBluetooth型ワイヤレスマイクのECM-AW4を使い、α6600のイヤホン端子からの音声を飛ばして簡易モニタリングすることにした。これは、自分自身においてのある意味での初挑戦でもあり、YouTuberの方々の日々の苦労を感じ取れたテストDayとなった。

ちなみに撮影後、自分自身が出演しながら撮影するという行為は本当に難易度の高いものだと痛感したのだが、やはり演者というのはすごい人たちばかりなのだとも感じた次第。恥ずかしながらも自撮りを交えたレビュー動画を編集してみたので、笑いながらでもご視聴いただければと思う。やはり自分は出演者としては未熟で、滑舌の問題で聞き苦しいことはご了承頂きたい。

印象はとにかく軽い

さて、まずはレンズ3本を受け取ってから、APS-Cカメラのα6600に装着してみた。共通して感じる印象は、とにかく非常に軽いということだ。言い方が悪いかもしれないが、まるでオモチャのように軽い。

それでいて、外装の作りは梨地シボ加工がされた半マットな質感で、マウント部も金属マウントであり、決して作りが悪いということはない。「見た目の印象からは異なり手に持つと異常に軽かった」というのが適切な表現かもしれない。

単焦点となるE 11mm F1.8が181g、E 15mm F1.4Gでは開放絞りがF1.4と明るいレンズでありながらも219g、そしてパワードショートズームのE PZ 10-20mm F4 Gは開放F4で178g。重さを数字で見るより、手に持った瞬間の方が衝撃的であった。

α6600をボディとして今回はセレクトしているが、こちらがバッテリーとSDカードを含めておよそ500g。11mmレンズと10-20mmズームレンズでは本体と足してもシステム重量が700gを切ることになり、本当に軽い。F1.4の明るい15mmでも720g程度ということで、今回事例としてセレクトした小型ジンバルCRANE M3が約700gなので、組み合わせても約1.4Kgと軽量なシステムが構築でき、長時間運用しても体力的に耐えられるということで、機動力はまさに抜群といってよい。

いざテスト撮影へ

最近α7 IVボディを個人的に購入したところだったため、今回の撮影には導入はしていないが、各レンズの装着テストだけは行ってみた。このα7 IVはフルサイズαシリーズの第四世代無印のベーシック機だが、3300万画素のちょうどよい画素数のセンサーに加え、S-Cinetoneに対応したことや4K60P収録まで内部RECで対応するなど、高次元の写真と動画のハイブリッド機となっている。

そこで注目ポイントとしては、4K30Pまではフルサイズ35フォーマットでの収録であるのに対して、4K60P収録においてはセンサークロップによるAPS-Cサイズでの収録となる点だ。この事例では、Eマウントフルサイズ機においてもクロップ撮影によるAPS-C収録において十分に活用できるということになるわけだ。では、肝心の写りはどうなのか。半信半疑のままにテスト撮影に向かった。

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超広角レンズといえば、周辺減光の大きさや歪みなど、これまでの常識からすれば多少はあるのが当たり前だと思っている。ましてや、おもちゃのように軽いレンズたちである。きっと周辺減光はそれなりにあるだろうと予測しながら撮影をしてみると、その期待は良い意味で裏切られた。

まず、レンズそのものの特性を確認するべく写真撮影で確認を取ることにした。写真撮影においてはRAW撮影することにし、レンズ特性がわかるようになるべく補正を切り確認することにした。この3本どのレンズにおいても開放からスキッと抜けるような解像感がある。周辺減光はややあるが気になるほどではない。直射日光が入射したシーンではさすがにゴーストとフレアが出ているが、それでもよく抑えられており、現代ソニーレンズらしいあまり癖のない鮮やかで解像感のある描写が得られた。まさに優等生な写りである。

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歪みに関しては全体的に樽型。だがこの歪みについては、ボディ側補正ありきの設計のため、レンズプロファイルを切るとそれなりの歪みが見てとれるわけだ。実際にはレンズプロファイルはONの状態で撮影する場合がほとんどと思われるため、実質的には問題にはならないだろう。実際に映像モードでの撮影では、ボディ側歪み補正が効いていると思われるので歪みの少ない映像が得られた。

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この写りが、200g前後の超軽量レンズでかつAPS-Cフォーマットから生み出されたとは俄には信じがたい写りなのである。まさに現代レンズといえる仕上がりだ。

AF性能は本当にびっくりするぐらい食いつきがよく、俊敏に稼働していた。テストの上ではジンバルごと腕で寄り引きしてみたが、α6600の瞳AFも協調したからだろうか、しっかりと追従してきた。この3本の新レンズでは、AF駆動用のリニアモーターを2個搭載することでAF性能を高めているということだそうだ。防塵防滴に配慮した設計というのも嬉しく、急に小雨が降ってきた程度では慌てる必要もなさそうだ。

E PZ 10-20mm F4

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まずは、E PZ 10-20mm F4 Gから見ていこう。パワーズームなので、作品の中でのスローズームショットが気軽に実現できてしまう。レンズ自体が軽いので、ロケバックに入れておくと活躍してくれるシーンがたくさんありそうだ。近接撮影もそこそこ寄れるため、使い勝手の良さが光る。F4なのでさほど大きなボケ演出はできないが、それでもナチュラルなボケ感は作ることができる。

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今回のテスト撮影では、α6600ボディ側で自分好みのピクチャープロファイルをカスタムして作っており、その設定で撮影している。編集時には特に色調整は行っていない。被写体に対して癖のない素直な質感描写だからこそ、自分が思うようなカラー作りがしやすいかもしれないと感じた。撮影においてはレンズの味を活かす方向性は個人的に好きではあるが、素直な描写をする現代レンズにおいてはボディ側でカラーサイエンスを作ったり、ポスト側でカラーグレーディングしたり、そうした意思を反映させやすい、そのような特色があるように思う。

E 11mm F1.8

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E 11mm F1.8単焦点レンズはどうだろうか。フル35換算でおよそ17mm。ワイドパースを伴ったショットが楽しめる。開放値F1.8ということで、程よい感じで背景ボケが得られる。円形絞りも相まってボケ感も決して悪くない。開放付近では解像感もありつつ少し柔らかい描写傾向も見てとれる。一段絞るだけでスキッと抜けるような描写となり、けっして解像度番長というわけではない。

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テストのため、α6600ボディ側の周辺減光補正設定はオフとしているが、気になるほどの周辺減光は感じなかった。動画撮影では、歪みについてボディ側での補正オートがデフォルトとなっており、設定を切ることができなかったことからも、ボディ側補正ありきの設計として、コンパクトネスを優先したものと推測する。現代レンズの設計トレンドでもあり、この軽量さと小型さが得られることを考えれば合理的な判断ではある。

E 15mm F1.4G

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単焦点レンズE 15mm F1.4Gではどうだろうか。フル35換算で約24mmとなり、開放絞りがF1.4と明るく近接撮影にも強いことから、広角レンズでありながら大きなボケ表現が可能だ。動画使用ではレンズが明るいため、昼間野外ではNDフィルタが必要かもしれない。

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業務目線で見ると、E 15mm F1.4 Gについてはちゃんと絞りリングが備わっている。デクリック機構も搭載されており、アイリスのリニアなマニュアル操作ができることが他とは異なる特徴だ。

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まとめ

ジンバルに載せたまま、トータルで3時間ほどワンオペでの自撮りを繰り返してみた。システム重量が軽いため、とくに苦になることもなくテストを終えることができた。軽いことは時に武器になりうるのだ。

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また、特にE PZ 10-20mm F4 Gパワーズームレンズにおいては、Bluetoothリモコンとα6600とをペアリングすることで、ズーム操作をワイヤレスで運用することができた。ジンバルに載せたまま右手で自撮りしつつ、左手に持ったリモコンによってズーム操作を行うことができ、この運用は個人的感想ではあるが非常に心地よく、このシステムならではの運用形態かもしれない。

今回はα6600により自撮りを通してレンズレビューをおこなったが、もちろんながらスーパー35センサーのEマウントシネマカメラであるFS7やFS5などでも活用できるため、ロケバッグにとりあえず忍ばせておくと活躍してくれるシーンがあるように感じた。

考え方次第ではあるが、業務用途に投入しても通用する映像品質であることは間違いない。

田中誠士

1975年 兵庫生まれ。2002年に株式会社フルフィルを創業し、グラフィック関連業務の拡張として2010年ごろより映像業界へ携わる。2018年現在、大阪中央区および東京銀座にてフルフィルスタジオを運営し、年間50作品内外の企業系VP制作を行う。昨今では自らシネマトグラファーとして撮影を行い、プロデュースするスタイルでの作品も多く、医療系分野の外資系企業顧客が多い。

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。