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はじめに

「α7R V」は情報が表に出た時から気になっていた一台である。実はRED KOMODOを使う前はα7シリーズで撮影していたので、ソニーから新機種が発売される度に気になって仕方がないのだ。

実際に長崎被爆者オーラルヒストリードキュメンタリー映画「a hope of NAGASAKI 優しい人たち」はα7 III一台で撮ったのだ。元々の成り立ちは映画を作るためではなく、被爆者の皆さんをアーカイブで残して行くことを目指して撮り始めたのだが、それでも劇場公開された作品になり、今ではAmazon PrimeやApple TV、GYAO!など13社で配信されている。

αシリーズはインディペンデント系のフィーチャーフィルム(長編映画)でも使っている現場はあるし、大きな現場でもセカンドやサードなどで、特に大きなシネマカメラを入れ込めないような、空間に余裕がないシチュエーションの撮影では使われている。一眼タイプのミラーレス、フルサイズセンサーは撮影バリエーションを大きく広げてくれるので、スチル機としての評価ではなく動画撮影の基準でどうしても気になってしまう。

実はこのα7シリーズは4台を乗り継いできている。α7 IIIから始まり、α7R IV、α7S III、α7 IVという具合に。一時期はα7R IV、α7S IIIの2カメ体制で回していた時もあり、α7シリーズにはある意味オマージュの思いを持ち今回のレビューになる。ただ画質云々、解像度云々は他の方々のレビューも溢れるだろうし、良くて当たり前の機種なので、今回は使い勝手等でのレビューにまとめる。

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テスト機とレンズ2台

手ブレ補正アクティブモードの実感

今回α7R Vをレビューするにあたって一番気になっている点は、メーカーがうたっている「手持ち撮影を強力にサポートする高性能手ブレ補正アクティブモード」だ。ここまで言い切られると、ワンオペレーションで撮影している身にとっては浮足立ってしまう。現場ではインタビューしながらの被写体に動きが入ってしまうと、その動きを追おうとして初動でのブレは覚悟しなくてはならない。

実際、ブレているカットでもそこに大事なメッセージがあれば躊躇なく使っているが、正確には使わざるを得ないということだ。ステディカムがあれば超滑らかな画も撮れるだろうが、あの出で立ちで普通の一般の方の目の前に立って構えたら、どれだけ緊張されるだろうか。本来撮らなくてはならないものと違う映像になってしまうだろう。その点からもこのカメラが自分の理想的な撮影に近づけるか興味津々である。

そこで今回は2023年3月に公開される「dog and people」の現場にも持ち込んでみた。犬が被写体になるので、当然動きが予測できないし、手ブレが多くなることは仕方ない。KOMODOではレンズ側(RF)の手ブレ補正に合わせてポジションを固めていくように努力しているが、動きが入ると「仕方ない」の領域に入ってくる。さて、どんな感じかと思いながらカメラを回してみて思ったことは、以前の記憶が蘇るところから始まった。

モニターの輝度がもっと欲しい。4軸マルチアングル液晶モニターの変態的な動きで、ある程度は無理なアングルでもモニター確認できるところは秀逸であるが、外撮影ではやはり輝度の高い外付けモニターが欲しいと思ってしまう。なので画の確認は戻ってからと割り切った。また小さなモニターでの再生だとブレの具合はわからないのだ。また別日に街中にも持ち出してみて、速歩きで階段を上がり抜けていくショットと強風で揺れる花々を手持ちで撮るショットを試してみた。

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4軸マルチアングル液晶モニターは意外と自由度が高い

ここで不思議なことが一つ起こった。QuickTime Playerでの再生では動きがコマ飛びしているようにカクつくのだが、Davinci Resolveに乗せると滑らかになるという現象だ。ソフトウェア側での処理の仕方が違うのかもしれないが、簡易に確認するにはQuickTime Player(Macの場合)が楽なので、そこだけでの判断は危険かもしれない。なぜかと言うと、QuickTime Playerでの再生確認ではアクティブモードでの手ブレ補正はしない方が良いかも、と思ってしまう印象であったからだ。

ただソニーの場合、手ブレ補正の強力な助っ人「Catalyst Browse」があることも付け加えておく。クリップのメタデータを使用して画像を手ブレ補正するのだが、他の編集ソフト同様に補正後のクロップは覚悟しなくてはならない。しかしCatalyst Browseでの強力な後処理補正ができる点は救いである。

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速歩きで階段を登る揺れの補正では大きくクロップズームされた
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犬の動きに合わせての補正でもクロップズームが大きかった
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本題に戻ってα7R Vの手ブレ補正はどうかと問われれば、最近流行りのGoProなどのアクションカメラのような補正を求めるのであれば、期待通りにはならないかもしれない。ただ歪みの補正や画質のクオリティに重きを置くなら圧倒的な差が出てくる。そもそも比べるところではないが、YouTubeなどで目にする機会が多いのはアクションカメラやスマホの動画だろうから、それに目が慣れてしまっていると、違和感を覚える可能性はなきにしもあらずである。

このアクティブモードを使いこなすには、補正のレベルを頭に入れながらなるべく大きな動きを抑えつつ取り回すことだろう。普通のカメラよりかは効果があるので、そこにつけ込んでしまって振り回しすぎると後悔する。フルサイズセンサーで6100万画素、8Kで標準レンズ以上の望遠を使ってとなると、しっかり構えて撮るということを基本に、アクティブモードはお守りと考えるべきかと。

ファストハイブリッドAFに完敗

また手ブレと同様に非常に大事な点はフォーカスである。KOMODOのオートフォーカスは未だにβ版となっているくらいに常用では厳しいので、撮影はマニュアルで行っているが、これも動きが伴うと自分が痺れるくらいにタイトになる。それに慣れつつのα7R Vのオートフォーカスは「やばい」の一言である。

気持ちよく目指すべきものにフォーカスを合わせてくれるのだ。この点だけでも買ってよいと思える気持ち良さである。撮影中にフォーカスの不安がないので被写体に集中できるのはとてもありがたい。ある程度の明かりがあって、全体を捉えようとした時には絞りを絞って被写界深度を深めるが、フォーカス範囲が広くなる分、それが迷いにもつながる時がある。特にフォーカスピーキングなどを通してしまうと、モニター上ではフォーカスが合っているように感じてしまうのだ。

深度が浅ければより集中してモニターと向き合うので、気持ちはタイトではあるが安心感はある。事実、フォーカスが甘くなってしまい後悔をしている時もあるのだが、本機があればその迷いなどからは開放され、もっと動きのあるショットを求めてしまうかもしれない。「被写体をすばやく捉え、粘り強く追随するファストハイブリッドAF搭載」はその通りの結果しか得られず、これは非常にポイントが高い。改めてαシリーズの正確性を実感した。それも6100万画素というレベルで撮影できるのは驚異でもある。

タクシーを被写体に追いかけてみたが、フォーカスが引っ付くという感覚を覚えるくらいにとにかく良い。流し撮りをしている最中に障害物(電燈の柱)にかかってしまい、一瞬モニター上でのトラッキングが外れるのだが、直ぐに見つけ出して合わせてくれる。

しかもトラッキングが外れた時に被写体を探すためのフォーカシングが入らず、そのままのフォーカスを維持しながら再合わせを行うので、オートフォーカスに頼るという境地に入ってもよいかと思えた。実際は再合わせをしているというより、先を予測してフォーカスを変えない、という表現だろうか。秀逸である。

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中央に立つ柱にフォーカスが合うことなくタクシーを追う。タクシーが消えた後は奥のビルにフォーカスが移動した
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全画素読み出し8K24Pの圧倒的な解像度

このクラスでは当たり前となりつつある8K撮影だが、実測はできていないが持ちが良くなった気がしている。α1の時には、熱問題で撮影時間の制約や冷えて復帰までのプロセスロスが気になっていた。正直に言うと、今回は、長時間撮影はできなかったのだが、手持ちで本体から伝わってくる熱感から不安はあまり感じなかった。

画質はもうパキパキである。キャプチャでスチル写真として使っても十分な鮮明さで、逆に写真側の機能は要らないのでは?と思えたのだが、瞬間の鮮度は写真なのだろう。

以前、8K機種をレビューした時にマシンスペックの問題もあるが、編集での野暮ったさを感じ、8Kまでいるだろうか?と自問自答していた。とにかくプレビューでカクつくので作業にならんと思っていたし、ここまではっきり見えてしまっても疲れるだけではと感じていたのだ。パキパキしすぎて疲れる点は変わらないのだが、プレビューでのカクカクはなく、ストレスなく再生できるので、8Kの印象は変わりつつある。出力が4Kで、8Kで撮れているということは、1/4までクロップしてズームショットにしても4K解像度を維持できるので、これは保険的な考え方もできる。

しかもMac(M1 Max)の処理能力が格段に上がっているので、8K素材を難としない。RAWではない点も大きく作用しているが、α7R Vの4Kデータの大きさは1秒あたり13MB、8Kで26MB、一方KOMODOの4K RED RAWで1秒あたりが48MBの大きさになるので、スムーズにプレビューするのは当たり前かもしれない。単純計算してしまうと、今の編集環境なら16Kも何とかなりそうな気配はあるので、RAWではないが8K撮影が近い存在になってきたのだろう。

レンズの秀逸性

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ツァイスのボケの素晴らしさが際立つ
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今回組み合わせで試したレンズは、FE 16-35mm F2.8 GMとPlanar T FE 50mm F1.4 ZAである。この組み合わせはベストではないだろうか。αシリーズはモデルチェンジ毎にスペックアップされ上位化していくので、α9やα1に下位機種が追いついてしまう時が来る。金額的には下位機種のほうが安いのは当たり前で、最新のセンサーやプログラムで最上位機種に追いつくのだ。ただレンズは本体ほどのモデルチェンジサイクルはなく、クオリティは発売された時点でフィックスされてしまう。なので当然のごとく十年先でもクオリティを確保できる、見劣りしないものを出すのだろう。

そしてEマウントレンズはソニー機種に合わせた(ソニー以外では使えない)セッティングとクオリティなので、本体が良くなれば自ずと画も良くなっていくのだろう。逆にレンズ側では開発段階で妥協はできないだろう。センサーが良くなればレンズ側の穴が見えてしまうのだから、かなりシビアな作業が行われているのではないかと想像する。それを頭に入れつつ、テスト機で思うことは、特にPlanar T FE 50mm F1.4 ZAが素晴らしいと。もちろんG MASTERも抜け出て良いのであるが、ツァイスに惹かれる思いは強くなった。

この組み合わせはかなり気に入った

画のボケ感、ボヤッとせずにしっとり感が良いのもあるのだが、操作性も抜群である。前述のオートフォーカスの旨味を十分に味わいたいのであれば、G MASTERの選択が最良であるが、動画撮影でのマニュアル操作を考えた時に、アイリスがレンズの手前側で調整できるのはありがたく、しかもフォーカスダイヤルが幅広く取られているので、多少の手の動きのズレを吸収してくれる。

よくあるのはズームレンズでアイリスとフォーカスのダイヤルを間違えてしまうことだ。特にレンズ交換をした時に被写体に集中しすぎてしまうと、手元操作でダイヤルの触感が同じだといとも簡単に間違えてしまう。急に露出が変わってしまったり、フォーカスがずれたりと、ドキッとすることも間々あるので、小さなことだが、各ダイヤルの独立性がハッキリしているのはオペレーション上ではとても助かる。

ただ、むやみに形状を変えてブサイクになってしまうのは、構えた時のテンションが下がってしまう。またフォーカスダイヤルの滑らかさが絶妙であり、意図した所でピタッと止められるので、シネレンズのようにフォーカスローテーションを270°取らなくても細かい合わせが可能であった。

ツァイスは見た目、構え、操作性の点からもとても良いし、素材感も非常に高級感が出ているので、かなりのお気に入りになってしまった。一方、FE 16-35mm F2.8 GMは卒なく優等生であり、誰が撮ってもちゃんと映せるレンズだと思う。特にα7R Vのオートフォーカスとフルセンサーの画角をハイクオリティでイージーに撮影できるとなれば。お財布に余裕があれば、α7R Vとこの二本のレンズを揃えれば、動画撮影の一定上のクオリティは担保されると思う。

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シャープネスをかけなくてもシャキッとしている
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風に吹かれる落ち葉も輪郭がボケることなく瞬間的に捉える
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驚きの内蔵マイク

意外な盲点だったのが内蔵マイクの良さである。そもそもカメラ内蔵のマイクに期待していないので、Davinci Resolveに乗せるまでは気にもしなかったし、そこがポイントになるとは思ってもいなかった。ただ再生してみて驚いたので、あえて書くことにした。

「風切り音を選択的に低減」とある。撮影時には少し風が吹いていたと思うのだが、記憶をあやふやにするくらいの風斬り音処理がされているのかもしれない。通常、風を切るためにはLOWを下げるのだが、どうしても音が軽くなってしまう。それがあまり感じず、ある程度の集音もできており、今までの内蔵マイクの軽さは感じない出来であった。もちろん外部マイクを立てたほうが良いのには間違いないが、保険的考えの押さえであれば役目は果たせそうである。ここは結構驚いた点である。

記録メディアの難

最近の高機種はCFexpress Type Aメモリーカードを標準にしている。8K撮影など膨大なデータ量の書き込みなど、メモリー側でもたつきが出てしまうと破綻してしまうので、どうしても伝送速度の早いメディアになっていくのは仕方ない。

だが、CFカードやらXQDカード、SDカードと、SDカードの中にもタイプがいくつも存在して、どれが使えるのかがわからなくなっていっている現状の中、新しいタイプのCFexpressだ。しかもタイプがA、B、Cと三種類もあり、あまりにもタイプが広がりすぎていて、ユーザー側の負担が大きくなっているのは間違いないだろう。これはマウント問題と同様に、それぞれの社の戦略もあるのだろうが、業界として標準を一本化して欲しい。

筆者所有のカメラの中にCFexpress Type A メモリーカード(ソニータイプ)を使うものはなく、デモ機にリーダーが同梱されていなかったので、取り込もうとした時に「終わった…」と思った。購入するには今回限りの物になってしまうし、どうあがいてもSDカードリーダーでは読めないし。さてさてどうしたものかとあぐねていたところ、Imaging Edge Desktopのアプリに気づいた。

よしよし、とインストールしてペアリングしてみたら、リアルタイム転送(リモート撮影)であり、撮影済みのデータは転送できない。また行き詰まってしまったのだが、もっと簡単な方法で取り込めることを思い出した。USB転送すれば良いだけである。速度的にも不自由感はまったくなく、カードリーダーって必要なのかな?と一瞬疑いの念を持った。もちろん読込中はカメラが使えなくなるので、現場的には必要であるのは間違いないのだが、一般的な撮影で家に帰ってから転送すれば良いのであれば、ダイレクトに接続転送でも十分な気がする。

購入するべきカメラとなるか

これは一台あったら楽だろう、と思えるカメラだ。メイン機としての実力があるのは間違いないが、シネマカメラのセカンドやサードとして所有しておくのは贅沢だが、非常に魅力的な存在になる。圧倒的な解像度とクオリティを損なうことなく撮影負担が軽くなることが両立しているので、自分自身に余裕ができ被写体を追いやすくなるのだから。

特に予測不能な動物の動きや、寄りで背景をボカしたい時のフォーカシング負担がなくなることはかなり大きなポイントである。手ブレ補正の確認をしたくて始まったレビューだが、それ以上に「使える」が詰め込まれた最新機種であることは間違いないだろう。しかも映像が綺麗であることは間違いなく、語ることが野暮になる。あとはお財布とのご相談になることは必須だが。

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色の出方とシャープ感が両立している
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空気感も伝わるのではないだろうか
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松本和巳(mkdsgn)|プロフィール

東京と北海道旭川市をベースに、社会派映画、ドキュメンタリー映画を中心とした映画制作を行っている。監督から撮影まで行い、ワンオペレーションでの可能性も追求している。2021年8月に長崎の原爆被爆者の証言ドキュメンタリー映画を劇場公開。2022年4月8日から子どもの居場所を取り上げた「旅のはじまり」がシネ・リーブル池袋をはじめテアトル系で公開される。夏には長崎被爆者の証言ドキュメンタリー映画第二弾、広島の原爆被爆者の証言ドキュメンタリー映画も公開される。テアトルシネマグループと一緒に「SDGsシェアプロジェクト」も立ち上げ、先ずは「知ってもらう」をテーマに社会課題の映画化を行なっていく。その第一弾が「旅のはじまり」であり、今後毎年数本を公開していく。

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。