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ホイールコントローラーに様々な機能を集約。大型タッチスクリーンで軽快に操作

カメラリグを始め、様々なカメラオプションを発売してきたTILTA。

その中でも、ワイヤレスフォローフォーカス「Nucleus」シリーズは非常に好評で、特にミラーレスやシネマカメラ・ジンバルオペレーションでは、その機能・親和性の高さから業界にかなり浸透してきました。

Nucleusの小型シリーズである前機種「Nucleus-Nano(WLC-T04)」の発売から約6年。満を持してのアップグレード版「Nucleus Nano II」が今回発売されました。

当機種の目玉は、なんと言ってもこの大きな1.6型タッチスクリーンで、ほぼ全ての機能を集約しコントロール可能という他にはない斬新さとコンパクトさです。

今回は気になる新機種を、幸運にも発売前に手にできる機会をいただけましたので、セッティング方法から、気になったポイントまでレビューをしていきたいと思います。

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特徴

まずこの製品の概要と前モデルからの改善点を簡単に列挙します。

Nucleus Nano II Wireless Lens Control System(WLC-T05)

  • 小型ワイヤレスフォローフォーカスキット(1モーター)
  • 1.6型円形タッチスクリーン搭載
  • コントローラー1台で、最大4モーター同時制御
  • 初代Nucleus-Nano、Nucleus M、Mirage VNDモーターなど、他のTILTAワイヤレスコントロールシステムとの互換性
  • モーターとの通信距離は、見通しのよい場所で最大100m、遮蔽物の多い場所で約50m

※ホイール型コントローラー単体では2モーターまで同時操作可能。3台以上の同時操作は今後発売予定のハンドルユニットが必要。

前モデルからの改良点

  • 動作時間が大幅に延び、内蔵化されたバッテリー
  • 5倍以上のモータートルク
  • モータートルクを個別に調整可能
  • Run/Stopに加え、ISO・SS・Apertureなどカメラ制御が可能
  • A-Bポイントが、複数点設定可能(バイブレーションで通知)
  • NATOクイックリリースマウントを標準搭載
  • デザインが一新され、スクリーン表示も目を引くカッコいいインターフェイスに
  • Wi-Fi接続による、ファームウェアのアップグレードで今後さらに機能が拡張

などなど

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前モデルは、小型でフォーカス操作のみのシンプルな設計だったのに対し、円形タッチスクリーンを搭載し、全ての設定を指一本で操作できるように集約したことで、まるでスマートウォッチのように小型で多機能という今までにないワイヤレスフォローフォーカスを作り上げました。

タッチ操作の感触はとてもスムーズで正確です。かなり小さい表示項目もあるのに、ほとんどタッチミスすることなく設定変更を行えます。現状ではフォローフォーカスとしての基本的な機能に加え、カメラの制御、ファームウェアのワイヤレスアップデートが行えます。

今後のファームアップによって、各種レンズマッピング、DJI RS2/RS3ジンバルとの連携など、様々なオプションが随時追加されていく予定です。

また、本製品に装着して機能を拡張できるハンドルユニットも今後発売予定です。ハンドルユニットによって追加できる、3~4モーターの同時操作(IRISやVNDなど)や、ジンバル本体の制御なども可能になるようです。

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これ一台で、ジブアーム+ジンバルやカーマウントなど、手元から離れたカメラを一括制御できるようになるので、現場でできることが大きく広がりそうです。

筆者も初めて手にした時、あまりにできることが多くて機能を理解するのに時間を要しましたが、明るく見やすいモニターとしっかりとした造りのアルミニウムボディによって、快適に操作することができました。

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セッティング

では実際にカメラにセッティングしてみましょう。

モーターは、前モデルと同じく標準的な15mmロッドが採用されています。付属のロッドホルダーがあるのですが、装着にはカメラケージが必須になります。

今回はハンドホイールで操作可能な、2つのモーターを装着します。モーターにはUSB-Cタイプの端子が2つ付いていて、繋げ方はモーターの数や制御するカメラへの端子によって変わるようです。詳しくは日本語版オンラインマニュアル(PDF)をご参照ください。

また、付属のUSB-Cケーブルは1モーターにつき1本ずつ入っていますが、カメラ制御用のケーブルは別途用意する必要があります。

カメラはソニー「FX3」を使用するので、USB-Cケーブルを追加で装着します。この場合の繋げ方は以下のようになります。

  • 電源部→ポート2(モーター1)
  • ポート1出力(モーター1)→ポート1(モーター2)
  • ポート2(モーター2)→カメラ
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この時、レンズが長くなれば先端側のギア同士の密着が緩くなってくるので、付属のベルクロストラップでレンズとロッドを締め上げて、しっかりと固定します。

モーターの電源は、USB-Cタイプ(PD対応)のモバイルバッテリーの他、別売りのNP-Fシリーズバッテリー用アダプタープレート(TA-BTP2-F970-B)やD-Tap To USB-C電源ケーブル(TCB-PTAP-USBC-50)を利用して、LバッテリーやVマウントバッテリーなども使用可能です。

コントローラーは電源内蔵ですが、USB-Cで充電しながらの使用も可能です。ちなみに、コントローラーからモーターへの給電はできません。

モーターはバッテリーに接続すれば連結されている機器全てに電源が入ります。カメラ側の給電入力をONにしておけば、カメラにも給電されます。ホイールはRECボタン長押しで電源ONになります。

この後各種設定をするのですが、その前にカメラの機器制御を可能にするために、先に行っておくポイントがあります。

まずケーブルの接続前にカメラのリモート設定をONにする必要があります。ソニーFX3などα系は「USB接続モード」を「PCリモート」に設定します。

また、ホイール側のカメラ接続設定(CONNECT→CAMERA)も各種メーカーに設定します。設定が完了してから、ケーブルを接続します。カメラを認識すると、ホイールの画面下部にカメラ名が表示されます。たまに認識が上手くいかない時がありますが、ケーブルの抜き差しや再起動で解決しました。

これを先にやっておかないと、キャリブレーションを取った後にカメラを認識せず、また電源を入れ直してキャリブレーションをとって…ということになります。

各種設定

モーターをケーブルで繋いだら、次はワイヤレス接続です。

画面左上のWi-Fiマークの左にある「A12」などと書いてあるマークをタッチします。モーターの側面にあるペアリングボタンを2回押すと、緑・白にLEDが点滅しますので、その状態で画面のSEARCHをタッチします。認識したモーターの名前が表示されますので、CONFIRMで決定するとトップ画面になります。

ペアリングが完了したら、LEDが紫・緑・青・黄色に点灯します。

紫:FOCUS、緑:IRIS、青:ZOOM、黄:OTHERに各種表示が割り当てられています。

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ホーム画面

次にレンズキャリブレーションを行います。

今回はフォーカスとズームを設定しますので、ペアリングボタンを1回ずつ押して、色を目的の色に変えます。この場合は紫と青です。

シネレンズのように回転の終点が決まっている場合は、モーターのペアリングボタン長押しorホイールのFUNCTIONボタン長押しでギアが動き出し、自動でキャリブレーションを取ってくれます。

インナーフォーカスのスチルレンズのように、終点が決まっていないものはキャリブレーション中にモーターを手動で止めるか、MOTOR項目の各設定画面からMANUAL CALを選択し、ホイール or Rocker(ホイール側面にあるコントロールロッカーのこと)を動かして、任意のフォーカス範囲を設定します。

※ホイール画面のモーターパラメータ表示(ホーム画面)を、下から上にスワイプすると、MOTOR・SYSTEM・SETTINGS・CONNECTの項目が出ますのでここからでも設定できます。

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この時、トルク設定が強すぎるとギアが噛み合わず空回りすることがありますので、モーターのトルク設定を少し弱めると改善します。このレンズには3くらいがちょうどよい感じでした。

モーター設定画面ではトルク以外に、ギアの反転、反応感度なども設定することができます。なんと細かい…

キャリブレーション完了後、モーターパラメータ表示(ホーム画面)に切り替えるとモーターの操作が可能になります。ホイールやRockerトグルを操作して、モーターが意図通りの動きをするかどうかチェックしましょう。問題なければホイールとRockerを同時に操作してもちゃんと反応してくれます。

この他、モーターやホイールの割り当てを、緑:IRIS、黄:OTHER(VND操作など)に変更することもできます。今後発売予定のハンドルユニットが手に入れば、4軸同時操作も可能になります。

A/Bポイントの設定は、ホーム画面でホイールを任意のポジションで止め、FUNCボタンを1回押すとポイントが打たれ、ホイールがその場所を通過するタイミングでバイブレーションが作動します。ポイントは複数設定することができます。

前述のように事前にカメラ接続が完了していれば、画面下部にカメラの機種名が表示されます。その状態でホイールのRECボタンを押せば、カメラの録画が開始されます。

ホーム画面から左右にスワイプし、カメラパラメータ表示画面に移動し、各設定項目をタッチして選択すると、ホイールが連動して数値を変更することができます。

ホイール動作とカメラの設定値の連動が若干鈍いので、ゆっくり操作することをおすすめします。

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各カメラとの設定値の連動項目については、下表をご参照ください。

※Blackmagicdesign Pocket Cinema Cameraシリーズは、本機とのBluetooth接続で、より多くの項目を変更できるようです。

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※画像をクリックして拡大

ファームウェアのアップグレードもWi-Fi経由で行います。CONNECT項目からWi-Fiを選択し、Wi-Fiネットワークに接続後、SYSTEM→FIRMWARE UPDATEから実行します。ホイールコントローラー、モーター共にワイヤレスでアップグレードできます。

詳しいやり方は英語版マニュアルに書かれています。

筆者もやってみましたが、非常に簡単で驚きました。モーターは一台ずつしか実行できないようです。Wi-Fi接続は本体の電源を一度落とすと設定も消えてしまうので、都度接続し直さないといけません。

これで、主な設定は完了です。

使い心地

モーターの動作は問題なくスムーズです。何より、動作感度やトルクの設定が割と細かくできることが嬉しく、シーンに合わせた設定値を探れて現場の対応力が上がりそうです。

ホイールの抵抗感や、Rockerトグルの操作感もちょうど良く、手に馴染む感触でした。

円形スクリーンのタッチ操作は正確で素早く、ほとんどタッチミスは感じませんでした。スマートウォッチを使い慣れている人なら、特に親近感が沸くかもしれません。

A/Bポイントの設定自体は問題ないのですが、バイブレーション動作のタイミングが若干遅く、いつもポイントを過ぎてから振動する感じになるので、薄い深度でのフォーカスでは結構ズレます。

バイブレーションはあくまでガイド的に捉えて、画面上で打ったポイントと、ピーキングを見比べてフォーカスを送るのが良いかなと思いました。

モーターのトルクは十分過ぎるくらいあるので、あらゆるレンズに対応できます。全体的にとても小型に作られているので、ミラーレスなどのコンパクトなセッティングにはもってこいです。もちろん、大型カメラに装着しても問題なく運用できると思います(なんせ4モーター対応ですから…)。

そして最後に、フォーカスアシストをするうえでの驚きの機能があります。なんと、ユーザーのレンズでデジタルの基線入力ができるのです!これにより、フォーカスマンはハイエンドなフォローフォーカスのように、事前にマニュアルで各レンズの基線を記録しておけるので、現場でキャリブレーションを取ったらそのままデータを読み出すだけで、すぐ撮影に入れます。

また、今後のアップデートでは、各社レンズのマッピングデータのダウンロードもできてしまうので、そこにあるラインナップなら基線入力すら不要になるのです…

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と勢いで書いてはみたのですが、海外のオフィシャルのフォーラムを調べると、基線入力含めてまだレンズマッピングに関しては未対応扱いらしく、「使用はおすすめめしません」との記載がありました…。場合によっては入力したレンズデータが消えてしまう場合もあるそうです。

しかし、非常に高いポテンシャルを秘めていることは間違いないので、今後のアップデートが益々待ち遠しいですね!!

まとめ

やはり、できることが多く今後の拡張性が高いということがわかっている以上、どうしてもそれらも見てみたい!という欲求もあり、実際触ってみると「あ、これはまだ対応してないんだ…」と思ってしまうことが結構ありました。

ジンバルとの連携も、4モーター同時操作やレンズマッピング(レンズ情報をダウンロードすることで、距離などのマッピング情報を取り込むことができます)など、実装されればかなり運用の幅が広がります。

今のうちに基本的な操作に慣れておけば、今後のアップグレードにも対応しやすいと思いますので、しっかり練習しておきましょう。

今後のファームアップに期待したいこととしては、

一度オートキャリブレーションで動き出したモーターは、ペアリングボタンなどでは強制停止ができず、手動で止めるしか手段がないのでレンズが噛み合わなかった場合などは結構焦ります。何か緊急停止の措置が欲しいところです。

また、手動キャリブレーション時、ホイールやRockerを使ってのギアの動作が結構素早く、思ったところに持っていくのに苦労しました。

オートキャリブレーションも、同じく他社製品に比べてかなり素早いので、少し動きの遊びが欲しいなと感じました。

あとは、ひたすら拡張機能の解禁が楽しみですね。

ここ最近では、ワイヤレスフォローフォーカスは、コンパクトなものが競合他社からも多数発表されていて、市場が加熱してきていると思いますが、早期からこの市場に参入してきたTILTAは頭ひとつ以上抜きん出ている印象です。

大型円形スクリーンでの一括操作というのは、ありそうでなかった発想です。今後、小型フォローフォーカスの新スタンダードになる可能性を秘めていると感じました。

これだけの機能を5万円弱で手にできるというのはお買い得だと思いますし、ワイヤレスフォローフォーカス未経験の方も手を出しやすいのではないでしょうか?

気になる方は、ぜひ一度お手に取って操作感を体験してみてください。

北下弘市郎(株式会社Magic Arms 代表)|プロフィール
映像・写真カメラマン・撮影技術コーディネーター。大阪生まれの機材大好きっ子。音楽・広告・ファッション・アートなどを中心に、ムービー・スチル撮影を行う。撮影現場の技術コーディネートや機材オペレーターなど、撮影現場に関する様々な相談に対応する。

WRITER PROFILE

編集部

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。