Vol.257 変幻自在に進化するフィールド・レコーディング・モニター「NINJA」「NINJA ULTRA」レビュー[OnGoing Re:View]メイン写真

映画やCMの撮影には定番となっているフィールドモニターNINJA Vの進化版が登場。6kまで録画可能なノーマル版と8K ProRes RAWまで録画可能なULTRAである。

サイズ、端子配置、ネジ位置などは従来のモデルと同じで、中身が大きく進化した

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新NINJAとNINJA ULTRAは旧NINJA V(左)と全く同じサイズで、端子類やネジの位置も全く同じだ

2010年に発売が開始されたAtomos社のフォールド・レコーディング・モニターNinva V(ニンジャ・ファイブ)といえば、正しい発色と高コントラスト、必要十分な解像力を持つモニターとして、広くプロの撮影現場で使われている。キャリブレーションすることができることで簡易のマスターモニターとして使うことができるため、正確な色調整を必要とするCMなどの撮影でも使われる定番モニターだ。AtomOSと呼ばれるオペレーティングシステムを搭載し、ファームウェアのアップグレードによって機能拡張が行われてきたユニークなモニターだ。

初代NINJA、NINJA+とマイナーチェンジが行われ、今回、大幅な機能アップとなった。発売されたのはノーマル版の「NINJA」と高機能な「NINJA ULTRA」の2機種である。今回の進化で、様々なメーカーのほとんどの解像度をカバーしオリジナルRAWで録画できるようになった。解像度ではノーマル版が6K、ULTRAは8Kの録画が可能である。

新登場した2機種だが、どちらも旧版のNINJA Vと全く同じサイズで端子位置やネジ位置も同じだ。色はガンメタリックになり高級感が増した。従来と同じ形なので、これまでのケージや、SSD、オプション機器をそのまま使うことが可能だ。ちなみに、AtomXと名付けられた外部オプションも、もちろん使うことができる。

強化された録画性能。RAWとプロキシの2重録画も可能になった

映像の入出力はHDMIで最大8Kとなる。録画は前述の通り、ノーマルは6K、ULTRAは8Kだ。

SDIはオプションのAtomX SDIなどで表示・録画が可能だ。各社のRAWに対応しており、入力設定でRAWの仕様を切り替えることができる。前述のとおり、6Kもしくは8KのRAWをProRes RAWで録画しつつ、H.265のプロキシファイルも同時に録画可能だ。

ProResやH.265などのコーデックは、旧製品では別料金で利用可能となるシステムだったが、AtomOS 11を搭載できる新製品では、主要コーデックは無料で利用できるようになった。また、オプションで低遅延のネットワーク配信プロトコルであるNDIも搭載可能となっており、この5インチの小さなボディで高度な配信システムが使えるわけだ。

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録画フォーマットはProRes、H.265(422 10bit)、Avid DNxなどがデフォルトで利用可能

カメラ側のカラースペースやSDR、HDRにも柔軟に対応してくれているのも特筆に値する。モニター自体がHDR表示に対応しており、カメラから出力されるHDR信号は自動的に判別されてモニターモードを切り替えてくれる。

また、ソニーのHLGとHLG2など独自仕様についても対応可能となっている。いずれにせよ、NINJAは、進化が激しい映像技術による新しいフォーマットについてもファームウェアのアップデートによって対応可能なので安心だ。特にULTRAは映画用のシネマカメラのファイル名連動機能もあり、ファイル数が膨大になる映画の編集・ポスプロ作業の効率化を図れるのも特徴と言えるだろう。

使いやすくなったAtomOS 11

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上が新製品AtomOS 11の画面。メニューバーが整理され、狭いエリアに必要な情報が効果的に表示されている。このバーに表示される波形モニターが非常に便利だ。小さいが十分に露出を判断できる

旧製品のNINJAはAtomOS 10を搭載しているが、メニューの呼び出しが画面の上部と下部に分かれており、上下のメニューバーや操作する手が撮影中に画面を覆ってしまうなど、使いにくいことがあった。

しかし、AtomOS 11では、この点が進化した。一方で、旧製品で便利だったメニューバーに表示される小さな波形モニターも表示される。小さいが露出を判断するには十分だ。UIの進化は、細かい部分にまで及んでいるが、いずれにせよ、撮影中に直感的に使えるようになったと言えよう。

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新OSに搭載されたスケジュール機能。配信事業者にはありがたい

一方、OSには、タイムラプスのようなモニター独自機能が新製品にも受け継がれており、さらに配信で便利なタイマー機能(スケジュール機能)が搭載されていた。指定時刻で録画が開始されるなど、配信業者にはありがたい機能である。

オプションで進化する機能、高機能な無線システムがすごい

NINJAにはAtomXと呼ばれる専用端子が搭載され、SDIアダプターやスイッチャー、Bluetoothタイムコード同期システムなどがある。このようなオプションパーツを付け加えることで、レコーディングモニターの枠を超えて、映像スイッチャーになったり、配信システムに進化させることができる。

新NINJAシリーズに対応の無線配信&クラウド連携を行うAtomos Connect(無線映像送信&映像入出力のシステム)は、高速Wi-Fi 6Eを介した映像共有、独自クラウドサービスに映像を自動的に保存したり、通常のWi-FiやBluetoothによる映像共有、SDI入出力、HDMIとのクロスコンバートなど、これ1台で映像信号の変換や配信が可能となる。

また、RemoteViewと呼ばれる機能は、iPadやMac、Apple TVユニットへ画面共有が可能となり、現場スタッフが自分のiPadなどで画面を確認することをサポートする。この機能はインターネット回線を介して行うことも可能で、遠く離れた場所から撮影状況を確認することも可能となる。さらに、低遅延のネット配信システムであるNDIにも対応し、高品質なライブ中継も可能となった。

一方、マルチカメラへの対応として、最大4台のカメラ(送信)を1台のNINJA + Atomos Connectで受信表示ができる。さらにAtomos社のクラウドサービスを介することで、ネット経由の画面共有も同時に行える。

旧機種でも人気が高かったライブ録画スイッチャーとなるAtomX CASTを繋ぐことでFHD解像度のHDMI4入力、1プログラムアウト、1USBストリームアウトが可能だ。

長時間録画の安定性が向上し、10bit 4:2:2 H.265収録が可能

旧製品からファームウェアのアップデートでH.265、10bit 4:2:2の収録が可能であったが、長時間の収録では不安定になって録画が止まることがあった。それゆえ、プロの現場ではNINJAの評判が下がったことは事実だ。これは発熱によるものだということがメーカーからアナウンスされていた。

新製品では、ハードウェアのグレードアップによって安定性が確保された。事実、筆者が2時間のライブ配信をNINJA ULTRAで録画を行ってみたところ、全く問題なく動作してくれた。なお、冷却ファンはAUTOに設定しており、強制冷却のBoostモードは使わなかった。

7インチのShogunにも注目

ノーマル版とULTRAとの価格差は300ドル。日本価格はまだ発表されていないが、5万円程度の差になるだろう。1.5倍の価格のULTRAを買うべきかどうかは、8Kカメラなどプロ用のシネマカメラを使うかどうかで分かれるだろう。

ULTRAだけの機能は、ProRes RAWの最大解像度が8K、RAWファイルおよびH.265のプロキシファイルの二重保存、シネマカメラのファイル名連動の3つである。2製品の比較は表にまとめてあるのでご参照いただきたい。

一方、7インチのShogunシリーズもノーマルとULTRAが用意された。2つの差はNINJAのそれと同じと考えて良い。Shogun2製品には無線通信機能とSDI入出力、HDMI入出力、SDIとHDMIのクロスコンバートが搭載されており、NINJA + Atomos Connectと同等の機能を搭載していることになる。ノーマル版が999ドル、ULTRAが1199ドルだ。Atomos connect単体では国内で8万円程度なので、NINJA + Atomos Connectよりも新しいShogunを購入した方が安くなると思われる。日本国内での価格がいくらになるのか、今後注目したい。

  NINJA NINJA ULTRA
価格 $599/€599 $799/€799
AtomOS 11
RecordAssist, PlaybackAssist&TimeLapse
Atomos RemoteView サブスクリプション サブスクリプション
Supported Wi-Fi standard(Atomos Connectが必要) Wi-Fi6 Wi-Fi6E
Apple ProRes
Apple ProRes RAW 6K 30Pまで 8K 30Pまで
Apple ProRes RAW + H.265
(Dual Record)
Avid DNx(QuickTime)
H.265
H.265 4K for C2C workflow
H.265 Record + Stream/Live Show/NDI TX
NDI 4K TX Pro Mode($/€198) 有料でアクティブ
NDI HD TX($/€99) 有料でアクティブ 有料でアクティブ
ARRI/Canon/RED/Sony camera SDI Cine filename support

WRITER PROFILE

渡辺健一

渡辺健一

録音技師・テクニカルライター。元週刊誌記者から、現在は映画の録音やMAを生業。撮影や録音技術をわかりやすく解説。近著は「録音ハンドブック(玄光社)」。ペンネームに桜風涼も。