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手のひらサイズでモニター付きのジンバルとして一世を風靡した「DJI Osmo Pocket」が、約3年ぶりに新製品「DJI Osmo Pocket 3」として発売開始。スマホやミラーレスカメラさえ凌駕する、脅威の進化を遂げた全貌をレビューする。

1インチセンサーに4K120P、10bit Log収録、音声(DJI Mic 2)は32bitフロート録音、タイムコードシンクロの化け物がやってきた

ついに出た、ついに出た、ついについに出た!DJIからOsmo Pocketシリーズの最新バージョン、DJI Osmo Pocket 3(以下:Pocket 3)が発売になった。

筆者は、発売前のテストファームウェアからテスト撮影をするチャンスを得て、1週間以上、毎日Pocket 3を使い込んできた。出荷バージョンでは多少の違いがあるかもしれないが、そこはご了承いただきたい。

さて、見出しにも書いたが、1インチセンサーの4K120P(スローモーション時の最大フレームレート)にタイムコードシンクロ機能が内蔵された。しかも、後述するがLogで10bit収録もできる。さらに、いわゆる全部乗せのパッケージである「Creator Combo」には最新の無線マイクユニットDJI Mic 2が同梱され、これが送信機内部に32bitフロートで録音可能と、スマホやミラーレスカメラでも実現されていない、タイムコードシンクロ付き32bitレコーダー搭載カメラとなったわけだ。

と、興奮冷めやらずという感じで書いてしまったが、1つ1つ解説していこう。

ため息が出るほど美しい映像で記録できるワイドレンジな1インチセンサー

まず、Pocket 3の最も進化した部分でみなさんが注目しているのは、1インチセンサー&Log 10bit録画の搭載だろう。YouTubeにも作例を公開しているが、とにかく、ノーマル(非Log)でもびっくりするほど美しい。いわゆるGoProカラーというような独特な、もしくはドギツイ鮮やかさではない、自然でありながら見栄えがする画質だと言える。

映像の世界ではソニーのカメラが作り出す映像が流行っているが、Pocket 3はそれとは違う、どちらかというとハリウッド好みと言った方が良い、鮮やかでありながら非常に豊かな階調を持った映像に仕上がる。

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撮って出しでこの美しさ。シャドーからハイライトまで豊かな階調を持っている
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デジタルズームが搭載された。しかし、部分拡大しているだけなので、画質は低下する。FHDで最大4倍、4Kでは2倍ズームだ
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0.7倍のPocket 3広角レンズ(ワイコン)。歪みがあるが、いい描写だ。自撮りではPocket 3広角レンズを使った方が腕を伸ばさなくていいので楽になる
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これまでのPocketシリーズでは、動画の発色に関して「鮮やか」と「ノーマル」、それ以外に「D-Logモード」が搭載されてきたが、Pocket 3では、カラー設定が、「ノーマル」、「D-log 10bit」、「HLG 10bit」の3種類となる。素人ウケする派手な発色ではなく、プロ好みのチューニングになったということだ。

つまり、カラースペースもワイドレンジ対応と、高級ミラーレスカメラと同等の性能だと言える。実際に撮影した感じでは、前述のようにノーマルで十分な美しさであり、かつ、逆光にも強い。ワイドレンジのセンサーをうまくコントロールして破綻の少ない映像を作り出しているということだ。

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非常に豊かな階調を持っている。美肌加工もあり、見栄えがいい
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一方のLog撮影では、モニターにはいわゆるLogな浅い色味で表示される。表示LUTは今のところ搭載されていないようだが、今後に期待したい。そして、LogはD-Logフォーマットで、他のメーカーのLogに比べると扱いやすい特性だと言える。

HLGが搭載されたのは特筆しておきたい。HLGは、ワイドレンジ映像のフォーマットの1つだが、普通のモニターでも見られるような特性を持たせてある。

洗練されたユーザーインターフェース
ジョイスティックでズームもできる

使ってまず最初に嬉しいのはモニターサイズが大きくなったことだろう。

収納時には縦になっているが、撮影時には90°回転させている。2インチのモニターだが、これが非常に見やすい。今回は1インチセンサーということで高精度なAFが搭載されたのだが、ピントが合っているかどうかがモニターで認識可能だ。ただ、超広角レンズ(20mm F2.0相当)なので、遠いものはパンフォーカス気味だが、近い被写体で背景は綺麗にボケる。

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ボケは非常に美しい。背景の玉ボケは輪郭が強めだが色が付いていないので自然に見える。フリンジも少なめで好感が持てる
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使い勝手もアップグレードされた。まず、電源の入れ方だが、2つのやり方が用意された。1つは90°回転するモニターを回す。指で弾くようにして簡単に回せるのだが、これだけで電源が入りスタンバイ状態になる。そして縦位置になるように戻すと電源が切れる。非常にシンプル、扱いやすい。

もう1つは、RECボタンの長押し。このボタンで電源のオンオフが可能だ。こちらは、縦位置撮影をするときやスマホ連動している時の電源操作で便利だ。

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物理的な操作は、ジョイスティックとRECボタンだけ。モニターはタッチパネルになっている

ユーザーが操作するのは、上記のモニターの他、ジョイスティックとRECボタンだけ。これまでのPocketシリーズでは複数のボタンが配置されていたが、Pocket 3はジョイスティックとRECボタンだけしか物理的な操作部品がない。

RECボタンは録画の開始/停止と電源のオン/オフにしか使わない。一方、ジョイスティックは360°の方向へ動かすことでカメラの向きをコントロールできるのは当然として、スティックを押し込むことでカメラの方向固定が行える。DJIのジンバルをお使いの方はわかると思うが、トリガーと同じ役割をジョイスティックに持たせているわけだ。

さらに、このジョイスティックの上下方向をデジタルズームに割り当てることができる。つまり、カメラの左右方向の補正をスティックで行いつつ、上下に動かすことでズーミングができる。チルト(カメラの上下方向)に関しては本体を前後に傾けることで対応可能だ。また、2回連続押しでカメラ部をセンターに戻し、3回で自撮りモードに切り替えが可能だ。

つまり、撮影時にはジョイスティックだけでカメラの主要な操作ができるようになった。実際に使ってみると、非常にシンプルかつ直感的に扱えて、誰でも簡単にジンバルでの動画撮影ができるだろう。

とにかく、画質が良い
どんな場面でもカメラ任せで美しい写真・動画が撮れる

画質は、とにかく素晴らしい。ミラーレスカメラを思わせる描写だ。レンズは20mm F2.0相当と自撮りに最適な画角だ。歪みがきちんと抑えられていて、周辺まできっちり描写してくれる。

発色が非常に自然で、撮って出しで作品になるレベルだ。過度に彩度が上がっているわけでもなく、自然な色合いに見えていい。

Log撮影も可能なので、さらにグレーディングするのもいいだろう。ただ、ノーマルの画質が非常にいいので、撮って出しでいいのではないかと思う。

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非常にキレのいいレンズで、歪みも気にならない。発色も自然でデジカメとしても優秀だと言える。周辺まで美しい(動画から切り出し)
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ガチャガチャしやすい背景でも、非常に滑らかで落ちついたボケを描写してくれる。カメラ任せのAFだが、いいところにピントを合わせてくれる(動画から切り出し)
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Pocket 3には、低照度モードが搭載された。暗所に最適化したカメラ設定をしてくれる。具体的にはISO感度をできるだけ下げ、シャッタースピードも落としてくれる。実際に撮影してみると、都会の街中であれば通常モードで十分に美しい。

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通常モードで街の夜景を撮影(動画)。十分に美しい映像になった
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ほぼ真っ暗に近い場所での撮影(動画)だが、非常に美しく描写する。ただし、よく見るとノイズはある。しかし、暗部をうまく引き締めてノイズを感じさせない処理をしている。見事だ
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最新の優れたトラッキング
日の丸構図以外の被写体配置が可能だ

また、モニター自体がタッチパネルになっており、タッチした部分の露出を合わせることや、エリアを選ぶことでカメラの向きのトラッキングもできる。このトラッキングは最新の「アクティブ・トラッキング6.0」が採用されており、追いかける被写体を画面中央に置くだけでなく、上下左右、好きな場所にフレーミングし続けることができる。例えば、カメラを動かしても主要被写体を画面の右側に配置したままにすることができるわけだ。

自撮りモードにすると、自動的に人の顔を検出してトラッキングが始まる。これは初代Pocketから搭載されているが、上記のように日の丸構図以外のフレーミングが可能になっている。

自撮りモードへの移行は、前述のようにジョイスティックの3回連打でもできるが、モニター画面の右下にあるアイコンをタップすることで自撮りモードの切り替えができる。

実際に使っている時には、モニタータップの方が使いやすかった。旅Vlogでは、自撮りから素早く前方へカメラを向けるような、録画中に自撮りモードのオンオフを繰り返すが、このような場合にはボタン押し込みよりも画面タップの方が押す力が弱くできるので、カメラにショックを与えないので動画の仕上がりが良いと思う。

ボディ録音が恐ろしく高音質
外部マイクDJI Mic 2は32bitフロート録音が可能だ

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無線マイクの電源を入れると自動的にカメラが認識する。Osmoのロゴにスピーカーが見える。あとマイクが2つ、カメラ本体横にある
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マイク内蔵のOsmo Pocket 3トランスミッター。外部マイク(プラグインパワー)も使え、32bitフロート録音ができる。赤いボタンを押すと単独で録音も開始できる(カメラ不要)

ボディには3つのマイクが配置され、ステレオ録音はもちろんのこと、マイクの集音方向を前方と後方と全方向の切り替えが可能になった。また、このマイク方向の切り替えをオートで行うこともできる。ソニーのVLOGCAM ZV-E1にも同じような機能が搭載されているが、Pocket 3の音は、さらに高音質だと思う。

Creator Combo(全部入ったお得なパッケージ)にはDJIの最新無線マイクのDJI Mic 2(32bitフロートレコーダー内蔵の送信機)が付属している。このマイクは、32bitフロートレコーダーでもある。使い方は非常にシンプルで、電源を入れるだけでカメラ本体と接続され、カメラも内蔵マイクから無線マイクへ自動的に切り替わる。

しかも、カメラのRECの無線マイクの内部レコーダーも自動的にRECを始める。そして、カメラ内に記録される動画ファイルと同じファイル名(拡張子は動画はMP4、音声はWAV)で保存されるため、動画ファイルと音声ファイルの同期は非常に簡単だ。送信機に記録されるファイルは、パソコンにUSB接続するとストレージとして接続されるので、簡単に取り出すことができる。

また、送信機内のストレージはカメラからフォーマットすることが可能だ。なお、送信機内の録画時間は合計で11.2時間となっている。

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わずか14gのマイクは、カメラ本体と自動接続。マイク入力があり、単体でレコーダーにもなる

無線マイクの音質は、非常に聞きやすく高音質だと言える。ローカットフィルターのオンオフはカメラ側から変更する仕様となっている。無線マイクの状態はカメラから確認できる。電池残量や録音レベル、録音可能時間もわかる。

一方、無線マイク本体は、背面にクリップがあり襟元へ挟むこともできる他、付属する超強力なマグネットで衣服に固定することも可能だ。マイクは心臓の位置あたりに固定するのが最も声質がよくなるのだが、Tシャツなどではクリップで固定しにくい。そのような時にはマグネットで固定できるのでありがたい。

また、この無線マイクに3.5mmのマイク入力があり、プラグインパワーのマイクが取り付け可能だ。ピンマイクを使うこともできるということだ。

そして、注目すべきは、無線マイクはカメラがオフでも、単体で32bitフロートレコーダーにもなることだ。ZOOM社のF2-BTのような使い方もできるわけだ。ただ、レコーディング中の音は聞けないのが残念だ。

Creator Comboの同梱物およびオプション
バッテリーグリップやワイコンなど

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Pocket 3は基本パッケージ(本体とハードケース)とCreator Combo(主要オプションの同梱パッケージ)がある。

Creator Comboは、前述の無線マイク、無線マイク用ウインドジャマー(非常に高性能だ)、無線マイク用マグネット、Osmo Pocket 3広角レンズ(専用ワイコン・マブネット脱着)、Osmo Pocket 3 ハンドル(三脚取り付け用グリップ)、バッテリーハンドル、保護カバー(ハードケース・通常版と同じ)、保護カバー以外を収納するソフトケースが付属する。ソフトケースは非常に便利で、上記のオプションを小さく収納可能だ。

一方、保護カバーがとてもいい。本体を収納できるのは当たり前として、内部にワイコンとNDフィルター(別売り)をマグネットで取り付け収納でき、また、無線マイクおよび取り付けマグネットをホールドできる機構が付いている。つまり、保護カバーだけでVlogで必要なものはすべて収納でき、安全に持ち歩けるし、簡単に取り出して撮影が開始できる。

これまでのOsmo Pocketシリーズで唯一と言っていい欠点はバッテリーだろう。GoProはバッテリー交換式なので、テレビ収録のような長丁場ではバッテリー交換で対応できるのだが、Pocketシリーズはバッテリー交換ができないので、どうしてもモバイルバッテリーなどを併用することになり、ケーブルを繋ぎっぱなしにするなど、撮影時に不便だった。

Osmo Pocket 3では、カメラ底部に簡単に取り付けられるバッテリーハンドルが用意された。これはDJI Action 2と同じで、外部バッテリーを専用コネクターでガッチリ接続して、バッテリーをバケツリレー方式で充電する方式を採用したことになる。

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バッテリーハンドルは連結用の爪でガッチリホールドされる(写真右)

カメラ部とバッテリーハンドルを接続したままカメラを使うと、まず、バッテリーハンドルから使われ、バッテリーハンドルがなくなったらカメラ本体バッテリーを使う。その時にはバッテリーハンドルは外してAC電源やモバイルバッテリーで充電。本体のバッテリーがなくなる前に充電されたバッテリーハンドルを取り付ければ、カメラバッテリーをバッテリーハンドルで充電しながら撮影できる。もちろん、バッテリーハンドルを複数用意すればより安心だ。しかも、バッテリーの蓋を開けるなどの面倒な作業は必要ない。

そして、注目すべきはカメラ本体の充電速度だ。PD仕様のUSB-Cタイプ充電器を使うと、0%から80%までが15分程度と素晴らしく高速だ。

筆者は、映画やテレビ番組を制作のほか、桜風涼としてYouTubeを日々公開しているのだが、正直に言えば、Pocket 3さえあれば、もう、他のカメラの出番がかなり減るだろうと思う。もちろん、本稿を書いている時点でPocket 3は購入することを決めているし、もしかすると2台買うかもしれない。

画質、使い勝手、音質とも、プロが必要とするレベルを十分にクリアしている。街中散歩のテレビ番組を制作しているが、おそらく、このカメラだけで映像も音声もOKだ。制作現場の機材や人員配置が圧倒的に小さくできる。それがDJI Osmo Pocket 3だ。

WRITER PROFILE

渡辺健一

渡辺健一

録音技師・テクニカルライター。元週刊誌記者から、現在は映画の録音やMAを生業。撮影や録音技術をわかりやすく解説。近著は「録音ハンドブック(玄光社)」。ペンネームに桜風涼も。