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BMPCC4K/6Kシリーズが、念願のフルサイズ&ミラーレスマウント化

ブラックマジックデザイン初のフルサイズセンサー搭載カメラ、「Blackmagic Cinema Camera 6K」(以下:BMCC6K)が発売された。私はこれまでメインカメラとしてBlackmagic Pocket Cinema Camera 6Kシリーズを愛用し、ドキュメンタリーや広告映像などの制作を行ってきたが、そんなユーザーとしての目線からこの新カメラを使ってみての印象をまとめてみたいと思う。

筆者が以前制作したドキュメンタリー。全編BMPCC4K/6K/6KProで撮影を行った

これまでのシリーズからの変更点は?

このBMCC6K、ボディ形状は2022年に発売されたBlackmagic Pocket Cinema Camera 6K G2(以下:BMPCC6KG2)によく似ているが、レンズマウントがLマウントとなり、フルサイズの6Kセンサーとローパスフィルター(OLPF)が搭載されたことで、外観は似ていても中身は別物のカメラになっている。その他の違いとしては記録メディアがCFexpress Type Bとなり、SDカードスロットがなくなった点があげられる。USB-C経由でのSSDへの収録は可能だ。

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LマウントになったことでボディはBMPCC6KG2に比べて薄くなった
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収録メディアはCFexpress Type Bとなった

収録できるフォーマットは?

BMCC6Kは36mm×24mmのフルサイズセンサーを搭載しており、3:2の6Kオープンゲートでの撮影が可能となっている。フレームレートは6Kオープンゲートでの撮影時が最大36fps、6KDCIでは最大48fps、6K 2.4:1では最大60fps。収録コーデックはBlackmagic RAWで、Blackmagic RAW収録と同時にH.264のFullHDでのプロキシファイルの収録が可能。

BMPCC6KG2などのこれまでの同社のカメラで採用されていたProResの収録はできなくなっている。ちなみに個人的にはブラックマジックデザインのカメラの最大の魅力は「Blackmagic RAWという、扱いやすくDaVinci Resolveとの親和性が高いRAWで撮影できること」だと思っているので、これまでもブラックマジックデザインのカメラで撮影をするときは99%、Blackmagic RAWを使用してきた。そのためカメラの力を活かしきれないProRes収録の廃止は納得の選択かなと感じている。

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撮影フォーマットの選択画面。圧縮率と解像度のみの選択となりシンプルになった

撮影のファーストインプレッション

これまで私はBlackmagic Pocket Cinema Camera 6K Pro(以下:BMPCC6KPro)を使用することが多かったが、BMPCC6KProはSuper35mmセンサーでEFマウントのため、広角で被写界深度の浅い画を撮りたいと思ってもレンズの選択肢があまり多くなく、なかなかそうした場面の表現に限度があった。新しいBMCC6Kではフルサイズセンサーとフランジバックが短いLマウントの採用によって、そうした場面でのレンズの選択肢も増加、表現できる画の幅が広くなったと感じた。

実際にテスト撮影を行ってみても、これまでできなかった広角で深度浅い表現が難なくできるようになっているのを実感。テスト時には3:2オープンゲート6Kで撮影を行ったが、フルサイズセンサーと3:2のアスペクトレシオが合わさって、ある種「写真的」な見え方のする画になり、16:9の映像の見え方とはまた違った雰囲気を出すことができると感じた。また6:5アナモフィックモードでは、センサーの縦幅をフルに使った4832×4032の収録となり2xのアナモフィックレンズを使用時にアスペクト比2.4:1で撮影ができる。

BMCC6Kで撮影した映像は1:04からご覧ください

ローリングシャッター性能について

このカメラのローリングシャッター性能についての情報は公式には公開されていない。私も測定機器を持っているわけではないので自分でこれについてテストすることはできていないが、国内外のレビュアーたちが測定した結果を見てみると6KDCI撮影時には約19msあたりとなっていることが多く、BMPCC6KProなどの値とほとんど変わりはないようだ。6Kオープンゲート撮影時は縦に解像度が大きくなるということでもう少し時間がかかり24ms~25msという結果が報告されている。Blackmagic URSA Mini Pro 12K OLPFやソニーFX3などのようなローリングシャッター性能の高い機種と比べると劣るが、動画撮影機能のあるミラーレス機の中だと平均から大きく外れない値なのではないかと思う。

ちなみにこのBMCC6Kは(BMPCC6KProなどと同じように)収録ファイルに書き込まれた撮影時のジャイロセンサーのメタデータを元に、DaVinci Resolve内で高精度にスタビライザーをかけるという機能に対応している。これを応用してスタビライザーの強度をゼロにすることで、速度の速いパンなど、カメラの激しい動きによるローリングシャッターの歪みを軽減することができる。あくまでもカメラの動きによる歪みを補正できるだけで、被写体の動きに対しては効果がないが、もしもローリングシャッターによる歪みが気になる場合はぜひ試してみていただきたい。

ジャイロメタデータを使った補正に関しては6:40からご覧ください

シネマだけでなくドキュメンタリーにも

このカメラはその名の通り「シネマカメラ」というカテゴリのカメラとしてデザインされていると思うが、個人的には「ドキュメンタリー」にも使いやすいカメラだと思っている。ドキュメンタリーと言っても様々な種類があるが、カメラを持って画面も見ずにガンガン回したい!というような密着や報道型のようなスタイルではなく、撮影者がしっかり画作りをしていくようなタイプのドキュメンタリーにはBMCC6Kは非常に有用だと感じている。特に撮影を専業としていない、ディレクターが本業でカメラも回す場合がある人や、ビデオグラファースタイルで制作を行っている人にこそ、このカメラをお勧めしたい。

その理由には「RAW撮影ができること」「撮って出しでも画が綺麗」「音声入力の自由度が高い」などが挙げられる。ドキュメンタリーの撮影では理想的な環境で撮影できない場面も多々あるが、その時RAWで収録できていることで後で手軽にホワイトバランスの調整ができたり、色の調整幅が広かったりと、ポスト作業でなんとかできる幅が大きくなる。さらにデフォルトのカラーが美しく、コントラストも適度にありながらハイライトが抑えられたBlackmagic Design Extended Videoを使って撮影すると、個人的にはこれをベースに少し調整するだけで落ち着いて上質なトーンに仕上げることもでき、グレーディングが得意な人以外にも使いやすいと感じている。

またあまり注目されていないが、BMCC6Kは(これまでのBMPCC4K/6Kシリーズ共通で言えることだが)音声入力の設定の自由度が高いということも便利なポイントとして挙げたい。BMCC6KにはminiXLRとステレオミニの音声入力が可能だが、これを1ch、2chに自由に割り振ることができる。これができるカメラは実はそれほど多くなく、いろいろな音声機器の組み合わせに対応することができ、地味に便利な機能だ。

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1chと2chそれぞれに音声入力を振り分けることができる

そしてやはり画面が大きいこともメリットとして挙げたい。小型なミラーレス機だとどうしても本体の画面も小さくなり、しっかりとしたモニタリングには外部モニターをつけたいということが多くなってしまうが、BMCC6Kにはティルト可能な5インチモニターが内蔵されているので、外部モニターがなくても画面が見やすい。前述したようにBMCC6Kは本体内にminiXLRの端子が内蔵されており、XLRでマイクを取り付ける際も専用ハンドルやアダプターが必要ないということもあり、リグ組みや外部機器を比較的にコンパクトにできると私は考えている(ただし、バッテリーの持ちはよくないので、長時間収録したい時には別売りのバッテリーグリップやVマウントバッテリーなどセッティングする必要があるという点には注意が必要だ)。

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5インチのタッチスクリーンは見やすく、使いやすい

BMPCC6KG2/BMPCC6KProとほとんど変わらない外観のため、既存ユーザーにとっては目新しさがない新製品発表となった感もあるが、最初に述べたようにセンサーとマウントが変わったことで撮れる画には大きな変化が加わったカメラとなった。ぜひ一度、試してみていただきたい一台だ。

伊納達也(inaho Film代表/映像ディレクター)|プロフィール
1988年、愛知県春日井市生まれ。東映シーエム株式会社を経て、2014年から株式会社umariにて様々なソーシャルプロジェクトの映像ディレクションを担当。その後、株式会社inahoを設立し、社会課題を解決するプロジェクトについての映像制作を行っている。

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。