オーディオ信号のIP化が進む

オーディオ信号は従来、電気ケーブルを用いてアナログオーディオ信号をやり取りしていたが、オーディオ信号自体がアナログからデジタルに置き換わった時には専用のケーブルで接続していた。
しかし最新の状況はデジタルオーディオ信号を IP(Internet protocol)によるネットワークを通じてやり取りする様になっている。


今回紹介するMagewell社製「Magewell Pro Convert Audio DX」はこのネットワーク間を結ぶオーディオコンバーター&キャプチャデバイスで、A/DおよびD/Aの双方に対応した「Dante対応、マルチフォーマット IP オーディオコンバーター・キャプチャデバイス」と銘打っている。

コンパクトで頑丈な設計

非常にコンパクトで頑丈な金属製の筐体はほぼタバコサイズ(100.9mm(L)x60.2mm(W)x23.3mm(H))で持ち歩き易く、収納・設置場所を選ばない。
Dante対応機器でバランス音声入出力を備えた機器としては最小の部類に入る。

本体筐体には固定用のネジ穴(1/4 カメラ三脚用相当)が用意されており、各種スタンドや専用L型金具(オプション)を用いてラッマウント用トレイに複数台据え付ける事もできる
。

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本体固定用のネジ穴

豊富な接続オプション

音声入出力端子にアナログオーディオ信号用として、3.5mmアンバランス接続/4.4mmバランス接続(専用ケーブル付属)を備え同時使用が可能である。


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アナログ音声信号用端子側

デジタルオーディオ信号用としてUSB端子UAC(USB Audio Class)とEthernet端子Dante/NDI/SRTを備え、必要十分な入出力変換機能を持ちながら非常にシンプルなデザインとなっている。

本体電源供給はUSB端子からのDC 5ボルト給電、Ethernet端子によるPoE(Power over Ethernet)にも対応しており現場での機動性が良い。

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デジタル音声信号用端子側

直感的な操作が可能なWeb UI

USB NET接続によるWeb UIを介して、各種設定確認が行える。 PCとPro Convert Audio DXを付属のUSBケーブルで接続しPC側でWebブラウザーを立ち上げ、URLに「192.168.66.1」と入力すればWeb UI画面が現れる。

    テキスト
Web UI起動時画面※クリックして拡大

ただしPC(パソコン)で設定時に接続できるPro Convert Audio DXは1台(1対1)なので要注意。

各種音声入出力を備えた本機は、Web UIの「Dashboard」画面上で接続状況(ジャックにプラグが挿入されているか否か)をリアルタイムに表示する。MICBIASはファンタム電源とは違うので要注意。

この設定を済ませれば、USB端子を抜いて「PoE」によるEthernet端子からの給電のみで動作する(Dante上での音声データのやり取りも含む)。

Danteで接続した各機器はAudinate社からリリースされているアプリケーションソフト「Dante Controller」を用いて行う。

    テキスト
Dante Controllerの設定画面※クリックして拡大

「Dante Controller」の基本的な使用方法は上記URL上に説明解説があるので参照されたい。 Dante上のサンプリング周波数は「Dante Controller」上で行うので要注意。

各種入出力を備えた本機は、Web UIの「Matrix」画面上で柔軟にルーティングでき、また入出力レベルの設定も行える。

    テキスト
USB NET WebUI Matrix画面※クリックして拡大

USB Audioの入出力設定は「Global Setting」画面上で、2in/2outから4in/4outに変更可能。 2in/2out設定時は「Left」(=1ch)、「Right」(=2ch)と表示されるのだが4in/4out設定時は「Left」(=1ch)、「Center」(=3ch)、「Right」(=2ch)、「Subwoofer」(=4ch)と表示されるので少し注意が必要だ。


macOS オーディオMIDI設定上での画面表示。2in/2outの場合(上)4in/4outの場合(下)

マルチな現場での運用が期待できる


バランス、アンバランスの入出力はどちらも音色に大きな差異はなく、用途に応じて使用できる。
バランス入出力端子は本体側が4.4mm 4極のジャックを備え、XLR端子への変換ケーブルが付属している。

非常にコンパクトながら必要充分な各種音声入出力を備え、IPによるデジタル音声対応機能も申し分ない。
アナログ音声入出力の音質も良い。

動作時に本体が熱くなるが長時間動作させてもトラブル等はなかった。 熱の放射がうまく行えている証拠だろう。

今後、さらにIP化が進むであろうオーディオの現場において、このマルチユースなコンバーターの活躍が期待できるだろう。