弊社ライズカンパニーではSDIで20入力が可能なBlackmagic Designの「ATEM 2M/E Constellation HD」を所有しておりますが、自分が抱えているクライアントで10以上のボタンをスイッチングする機会はほとんどないため、スイッチャーパネルは現在所有している「ATEM 1M/E Advanced Panel 10」で全く問題がありませんでした。
いつもは問題がないからこそ、思わぬオーダーをもらった時に10以上のボタンを操作できるスイッチャーのレンタル手配やセッティングの経験値がないことは、二つ返事で仕事を受注することができない弊害となりました。
今回は、「ATEM 1 M/E Advanced Panel 20」と「ATEM 2 M/E Advanced Panel 20」を体験し、20ボタンを所持する意味を考慮しまとめてみました。
20ボタンレンタルについて
クライアントより、14cam/静止画/VTR/動画テロップ/静止テロップを使用したいというオーダーがあり、レンタルの手配を検討しました。
メインでお願いしている機材レンタル会社でご用意いただけるものは10ボタン以下のスイッチャーとなってしまうため、別途ネットで探してみましたが、扱っている会社様も極僅かで在庫も少ないため、在庫がなかったら対応ができないという状況でした。
また、ライブや大規模な中継コンテンツを主戦とする映像プロダクションに機材とオペレーターの見積もりを問い合わせましたが、日程予算共に合わず、2スイッチャーでの対応も検討していました。
20ボタンのサイズ感
今回、Blackmasic Designのご厚意により、
- ATEM 2M/E Advanced Panel 20
- ATEM 1M/E Advanced Panel 20
の2機種をお借りすることができました。
ATEM 2M/E Advanced Panel 20に関しては「やはり大きい。常設用だな」と思いました。
弊社業務の多くはベースの設置場所が選べないことが多く、指定された場所でのセッティングを強いられる場合がほとんどとなるため、このパネルを置けない環境が多く発生することが想定されました。
一方、ATEM 1M/E Advanced Panel 20は横幅としてはボタンの数による延長はあるものの、驚くことにATEM 1M/E Advanced Panel 10よりも奥行きがないことがわかりました。
与えられた環境で仕事をすることが多い私共にとって、奥行きがないことは大変ありがたく、会場でお借りするいわゆる二六テーブルに20ボタンが余裕で収まることは画期的でした。奥行きがある代わりに、スイッチャーに手首を置くスペースがATEM 1M/E Advanced Panel 10にはあるため、この辺りは好みが出るかなと感じました。
とはいえパネルが大きいってとってもいい!
先ほどまで言っていたことと全く逆のことを言いますが、2M/EパネルにはHyperDeckに対応したボタンがあり、同ネットワーク上のHyperDeckの操作や2画面ある液晶パネルでクリップ名や残り時間の確認などが可能で、大変便利でした。また、10ボタンでは2口だったLANの差し口が20ボタンは両モデルとも4口あるため、機器のネットワーク接続による拡張が容易です。
現場でのセッティング
現場での運用ですが、今回は二六テーブル4卓を2×2で配置しました。メインスイッチャーの前には43インチのMVモニター2台とATEM 1M/E Advanced Panel 20を配置しましたが、LAN1本とMV用のHDMI2本(SDIをMicroConverterで変換)の合計3本を延ばしたのみのためテーブルを広く使用することが可能でした。本体とパネルをLAN1本で接続できることで、本体をVE前に置くことが可能なことは結線や冷却などの管理が容易となります。
スイッチャー/演出/TD/テロッパー/VEの5名が並びましたが、余裕を持った設置ができました。メインスイッチャーにはカメラ台数として14台の接続でしたが、PowerPoint/VTR/別部屋での中継スイッチングに加え、ProRes 4444を動画テロップとしてHyperDeckからKey/Fillとして入力、さらにOA確認を入力したため20入力をフルに使用しました。
設置から本番まで約8時間、本番も3時間近い運用でしたが最後まで全く問題なく稼働しておりました。
20ボタンを持つという選択
弊社ではATEM 1M/E Production Studio 4Kを最初に購入した流れで10ボタンを選択しておりましたが、ATEM 2M/E Constellation HDのようにスイッチャー本体の入力数が11以上あるものを所有するのであれば、最初から20ボタンがあるパネルを所持する選択肢は大いに意義があるかと思います。
弊社ではゲーム配信などを行う際に画面合成でSuperSourceを利用しますが、その際に背景や小窓の大きさやソースなどを変更するのにマクロを利用します。10ボタンではパネル上に10のマクロを表示できますが、20ボタンではマクロを20表示でき、画面合成の選択肢が画期的に拡がります。
2M/EパネルであればM/E列をSuperSourceやアップストリームキーに割り当てることで直感的な変更が可能で、もちろん便利ではありますが、毎回別場所で使用するような会社が持つのであれば、ATEM 1M/E Advanced Panel 20が選択肢としては上位になると思います。
ATEM 1M/E Advanced Panel 10は19インチラックに収まり、予算も抑えられるなどもちろん利点がありますので、比較検討する機種が多いことは機材選定の責任者としてありがたい状況です。
府川由教
株式会社ライズカンパニー所属。1993年創業。ロケの撮影技術を中心として映像製作に携わり、現在では中継 / 配信業務、番組制作、企業や行政のPR、Vtuber、展示施設のコンテンツ制作など映像で「こんなことがしたい」を実現できるアイディアと積極性を持ったスペシャリスト集団を目指して日々活動している。筆者は2005年入社。