Hollyland Technologyは、RTMPストリーミングに対応したアプリケーションを内蔵したライブストリーミングカメラ「VenusLiv V2」を、2024年8月22日から日本で発売を開始した。販売価格は税込で165,000円前後。

Hollylandのライブストリーミングカメラが日本で発売されるのは初めてだが、"V2"という名称からわかるように、今回発売されたVenusLiv V2は、すでに海外で展開されていたVenusLiv(2023年7月発表)の後継機種である。

2023年4月にラスベガスで開催されたNAB Show 2023で参考出品されていたVenusLiv(当時は"Venuss Pro"と呼ばれていた)を見た私は、「ライブ配信に特化したカメラ」という製品コンセプトに大きな関心を寄せていた。しかし、残念ながらVenusLivは日本では発売されなかった。

NAB Show 2023のHollylandブースの様子

このような経緯から、Hollylandのライブストリーミングカメラは今後も日本で見ることができないのだろうと考えていたが、今回、VenusLiv V2が登場し、日本でも発売されると知ったときには正直驚いた。

VenusLiv V2は前モデルと比べてユーザーインターフェースが改善され、機能も強化されている。その実際の使用感も含めて紹介したい。

最大2つのプラットフォームへRTMPによるライブ配信が"同時に"可能

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VenusLiv V2は、Android OSをベースにした独自のオペレーティングシステム「HollyOS」で動作し、180°回転可能な5インチ液晶タッチスクリーンで操作する。ユーザーインターフェースは、Androidスマートフォンの画面に似ている。

画面右下の「アプリセンター(My Apps)」を開くと、「TikTok」「Facebook」「Instagram」「Twitch」「Shopee」のアプリケーションがプリインストールされており、これらのプラットフォームに向けたライブ配信は、スマートフォンのアプリと同じ操作で行える。

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一方、VenusLiv V2にアプリがプリインストールされていないプラットフォーム(YouTubeなど)へのライブ配信は「HollyLive」アプリからRTMPによるライブ配信が可能だ。

ライブ配信をするときに必要な"ストリーミングURL"や"ストリームキー"の設定は、(1)液晶タッチスクリーンを通じてソフトウェアキーボードで手動入力する方法と、(2)スクリーンに表示されるQRコードを読み込み、別のデバイスのブラウザ上でストリーミングURLやストリームキーを入力すると、ネットワークを通じてVenusLiv V2へ反映される方法のふたつを備えている。

後者のQRコードを読み込み別デバイスのブラウザから設定する方法は、前者の手動で入力するよりも手軽で、確実に設定できるようになっていてとても便利だ。

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HollyLiveアプリを用いた場合は、2つのプラットフォームへ同時にライブ配信をすることが可能。設定ができる解像度は"1080p"と"720p"(残念だが、4Kでのライブ配信をすることは現時点でできない)。

フレームレートは"60fps" "50fps" "30fps" "25fps"、ビットレートは"2Mbpsから20Mbpsまで"の範囲で段階的に選ぶことができ、ビデオコーデックは"H.264"か"H.265"となっている。

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VenusLiv V2はカメラの縦・横の回転に合わせて、スクリーンのメニュー表示も縦の表示から横の表示へ切り替わり、縦向きだけでなく横向きのライブ配信を行うことも可能(カメラの底部および側面に1/4インチのネジ穴が備わっている)。

本体に備わる2.4GHz/5GHzによるWi-Fi接続と、RJ-45ポート(1Gbps)からのLAN接続の両方に対応しており、特に、イーサネットケーブルを使用したLAN接続を用いることで、より安定したライブストリーミングを行うことができる。

また、RJ-45ポートの隣には、USB Type-C(UVC)端子はUSB3.1でUVC(USB Video Class)による最大4K30p、最大4K60pの映像出力ができるHDMI端子が並ぶ。

ライブ配信をしながらのローカル録画も可能に

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VenusLiv V2が日本で発売された直後、HollyOSがV3.1.3.26.03から「V3.1.4.09.03」へとアップデートされた。

このバージョンアップにより、ライブ配信を行いながら録画ファイルをVenusLiv V2の「ギャラリー」へ保存できるようになり「ライブ配信をしながらバックアップとして録画も残したい」というニーズに対応した。

「LiveREC」は、HollyLiveアプリ(やTikTokアプリなど)を起動後、画面上に浮かぶフローティングボタンからツールボックスを表示し、LiveRECを選択することで、画面上に録画ボタンが表示される。

なお、このLiveRECはライブ配信の開始・停止とは連動しない。つまり、ライブ配信の途中からLiveRECを開始したり、ライブ配信を終了する前にLiveRECを終了することができる。

私自身は、「任意のタイミングでLiveRECによる録画の開始・停止をコントロールしたい」と考えているので、この機能は非常に便利だと感じるが、一方で「録画したかったのに録画ボタンを押し忘れてしまった」という事態も考えられるため、録画のし忘れには注意が必要かもしれない。

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ちなみに、バージョンアップはアプリセンターから「設定」を選択することで行う。設定画面で「Device Information → System Version」の順に選ぶと、最新版が利用可能であれば、更新ボタンをタップしてHollyOSをアップデートできる。

更新を実行する際には、アップデート中に電源が落ちないように、付属のACアダプターを接続すること、そしてアップデートファイルの破損を防ぐため、安定したネットワーク環境を維持することを忘れずに。

不慣れなビギナーでも簡単に操作できることを意識された設計

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VenusLiv V2には、本体に内蔵マイクと3.5mmの音声入力端子のほか、USB2.0のUSB Type-C(MIC)端子が備わっている。

この端子は、Hollylandから発売されているワイヤレスマイクロフォン「Lark」シリーズに対応しており、「Lark M2」のUSB-Cタイプの受信機や「LARK MAX」の受信機に付属のUSB-C to USB-Cケーブルを接続することで、VenusLiv V2に音声を入力することができる。

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また、ツールボックスから「その他の設定(More Settings)→サウンドエフェクト(Sound Effects)」へと進むと、「オリジナル(Original)」「Hi-Fi」「ローカット(Low Cut)」「ボーカルブースト(Vocal Boost)」「カスタマイズ(Custom)」の5種類のプリセットEQや、「部屋(Room)」「ホール(Hall)」の2種類のリバーブとその強度の設定、そしてノイズキャンセリング(Noise Cancellation)のON/OFFが用意されており、簡易的ではあるが、シーンに応じた音声エフェクトを適用することも可能だ。

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こちらも簡易的ではあるが、映像面においてもツールボックス内に以下の機能が備わっている。

(1)グリーンバック画像を利用して背景を簡単に除去し、バーチャル背景を合成できる「背景を削除(Remove Background)」機能
(2)魅力的なモーショングラフィックスや画像をカメラ映像に直接オーバーレイできる「オーバーレイ(Overlay)」機能
(3)画面上の色調を独立して調整し、顔色や肌の色合いを微調整することで、背景や製品の色を保ちながら、配信中の肌をより自然で明るく見せる「カラー(Color)」機能

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(4)顔認証システムで人間の顔を自動的に認識し、肌を自然に美しく見せる「Beautify」機能
(5)ISO、シャープネス、シャッタースピード、ホワイトバランス、ズームなどの設定を行える「プロモード(Pro Mode)」機能
(6)プロモードで設定した内容をカスタム登録し、シーンに合わせて撮影設定をワンタップで素早く切り替える「シーン(Scene)」機能

キーボードショートカット機能が面白い

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個人的にVenusLiv V2が面白いと感じるのは、キーボードをUSB-A 3.0端子やBluetoothで接続すると、「プロモード」のISO、シャープネス、シャッタースピード、ホワイトバランス、ズームなどの設定を「シーン」として登録したあとに、そのシーンに対してショートカットを割り当てられる点だ。

例えば、ズームを「1x」「2x」「3x」に設定した3つのシーンをショートカットに割り当てると、光学2.8倍・デジタルズーム2.0倍を組み合わせた最大5.7倍(光学、デジタル併用)のズームを、VenusLiv V2本体のタッチスクリーンやズームリングに触れることなく変更できる。

ショートカットでズームを切り替えても、じわりと倍率が変わるため、あたかも人がズームリングを回しているかのような効果を演出できる。

ただし、VenusLiv V2のキーボードショートカットで割り当てられる項目はまだ少ない。本体に触れずにキーを押すだけで操作できるショートカット項目がさらに増えれば、より面白い使い方ができそうだ。

ターゲットは「ライブコマース」。「雑談」や「音楽の弾き語り」「お出かけ」配信にも親和性ありそう

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VenusLiv V2のターゲットは、視聴者とリアルタイムでやり取りをしながら、ライブ配信を通じてオンラインで商品を販売する「ライブコマース」の分野である。

さらに、自宅からの「雑談」や「音楽の弾き語り」のライブ配信、屋外からの「お出かけ」ライブ配信にも、VenusLiv V2は適していると個人的に感じている。

ライブ配信に特化したVenusLiv V2は、動画撮影用カメラほどの高機能ではないが、スマートフォンよりもワンランク上の映像と音声のクオリティーを、ビギナーでも簡単に利用できる。「スマートフォン以上、動画撮影用カメラ未満」の位置付けにあり、プロよりもビギナーに向けた製品であると言える。

特に、「ライブコマース」のライブ配信をインハウスで行いたい場合や、ライブ配信機材に慣れていないビギナーが操作するシーンでは、ビデオスイッチャーやエンコーダーを必要とせず、このライブストリーミングカメラ一台で完結できるVenusLiv V2が活躍しそうだ。

利点は?まだまだ荒削りなところもある

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2023年にVenusLivを目にしたときはその後の展開がとても気になっていたところだが、「VenusLiv V2」として製品のアップデートがされ、日本でもこの製品を目にすることができた。

VenusLiv V2は、

(1)長時間のライブ配信を実現するための放熱処理や堅牢性
(2)NP-Fバッテリーを用いた長時間のバッテリー駆動
(3)配信の安定性を実現するためのイーサネットケーブルを使用した有線接続
(4)最大2つのプラットフォームへRTMPストリーミング機能によるライブ配信

が可能だ。

スマートフォンによるライブ配信ではこれらを"同時に"実現することは難しい。

また、ライブストリーミングカメラとして本体からWi-FiやLANを通じて直接ライブ配信ができるだけでなく、SDカードスロット、USBフラッシュドライブやマウス、キーボードなどを接続可能なUSB-A 3.0端子、3.5mmの音声入力端子やHollylandのワイヤレスマイクロフォンLarkシリーズとの対応がされているUSB Type-C 2.0のMIC端子、最大4K60pの出力が可能なHDMI端子、最大4K30pで出力が可能なUSB Type-C 3.1のUVC端子などを備えた拡張性の高さも優れているところは、VenusLiv V2に優位性がある。

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その一方で、VenusLiv V2に触れてみて改めて感じるのは、まだまだこれからな、荒削りな面もあると感じる。

まずは画質。ライブストリーミングカメラとしてのライブ配信に必要な最低限のクオリティーではあるものの、スマートフォンの前面カメラではなく背面カメラと比べてしまったとき、VenusLiv V2の画質は少し物足りなさを感じてしまう。

そして、VenusLiv V2の言語設定を日本語へ変えたとき、日本語表記とローカライズされていない英語表記が残されている部分がいくつか見受けられるのと、日本語表記のメニューを見たときに一瞬戸惑ってしまうことも時折あった。

また、ビギナーでも慣れてしまえば操作は簡単だが、とはいえ、VenusLiv V2に付属するユーザーマニュアルに記載されていないことも多く、マニュアルに頼らず直感的に操作できるまでにはいたっていないと感じる。

こちらはVenusLiv V2の製品ページからたどることができるFAQページも合わせてチェックする必要もありそうだ。

画質についてはハードウェアの制約もあり難しいかもしれないが、日本語ローカライズの適正化と、ビギナーでも迷わず使いこなせるまでのさらなるUIの改善については、今後のHollyOSのアップデートによって改善が施されていくことを期待したい。

WRITER PROFILE

ノダタケオ

ノダタケオ

ライブメディアクリエイター。スマホから業務機器(Tricasterなど)までライブ配信とウェビナーの現場を10年以上こなす。