手持ちの機動力と三脚の安定感、動画撮影における一脚に求められるものは、一見相反するように思われるその両者のバランスをいかに妥協せずに実現できるかだろう。

私が現在使用している一脚はSIRUI SVM-145(以下:SVM-145)である。今回、編集部から「YC Onion PINETA Pro」(以下:PINETA Pro)をお借りすることができたので、PINETA Proがどういう製品であるか、メリットやデメリット、またSVM-145と比較しながらレビューをしてみよう。

まずはじめに、私の動画撮影における一脚の主な用途は以下の通りだ。

  • 幼稚園(保育園)の子どもたちの宿泊行事に同行し、2~3日のイベントを撮影
  • カメラは主にソニーのミラーレスカメラを使用(フルケージまたはハーフケージを使用)、レンズは標準ズームや高倍率ズームレンズ(いわゆる便利ズーム)を使用
  • 移動→撮影→移動→撮影の繰り返し、いわゆるラン&ガンスタイルがメインだが、時に手持ちだったり三脚やジンバルも使用する
  • 撮影で心がけているのは「なるべく足で稼ぐ」という点だ

私は、これまで先述したような撮影を、全て手持ち撮影で臨んだり、逆に三脚に乗せて担いだり、肩や胸で保持したり…いろいろな撮影スタイルを試してみたが、現時点で冒頭の「機動力と安定感」を重視した結果、最もバランスが良いのが一脚を使った撮影スタイルだと思っている。

ただ、これまでの一脚といえば、その伸縮を3段や4段それぞれのネジやレバーを個別に操作することでロック解除→伸縮→ロックするものが通常であり、慌ただしい撮影の際、その操作によって貴重なシーンが撮影できないということが何度かあった。

今回お借りしたPINETA Proはそういった問題を全て解決した一脚といえる。

PINETA Proの基本

まずはPINETA Proの基本スペックから。

素材 カーボンファイバー
サイズ 78cm/162cm(最低高/全高)
重量 1.78kg
耐荷重 10kg

※全てベース三脚を付けた状態

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最低高
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全高
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SVM-145との比較(最低高と全高)※左がPINETA Pro

次に特徴を見てみよう。

ワンレバーでの伸縮操作

同社はこれまでもクイックに伸縮操作ができる一脚を販売してきたが、今回のPINETA Proはその操作感が大きくアップデートされている。

以前のものはレバーを上に跳ね上げてロック解除、レバーを下ろすことでロックができる機構を持っており、それでも十分に簡単な操作といえるが、今回のPINITA Proはさらに簡単な操作が可能。

片手でレバーを握るだけでロック解除(いわゆるフリー状態)となり、レバーを離すことで再びロックがかかる機構を実現している。

私が使っているSVM-145と比較してみると、SVM-145が一脚を両手で握り左右に捻ることでロック解除およびロック操作をするのに対し、PINETA Proは片手でカメラを保持したまま、もう一方の手でレバーを握って伸縮操作が可能である。

今回、実際にPINETA Proを触ってみて、当初想定していた以上にこの違いを大きく感じた。

例えば、撮影時の使用レンズが標準レンズや小さい単焦点レンズであればそれほど気にならないかも知れないが、70-200mm F2.8などの望遠レンズを使用して一脚を伸縮しようとすると、SVM-145だとカメラから両手を離して一脚の操作をしなければならないが、PINETA Proなら片手でカメラを保持したままレバー操作ができてしまうので、慌ただしい撮影現場でも非常に安心して操作することが可能だ。

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それほど手が大きくない私でも適度に握りやすいグリップとレバーのサイズとなっている

カメラを片手で保持したまま一脚の伸縮が可能
(カメラの固定方法がおかしいが、右手でカメラが保持できるという点を見てほしい)


ワンペダル(フットペダル)でのベース三脚のロック(解除)操作

PINETA Proの最も特徴的な点は先に挙げたワンレバーでの伸縮操作だが、私が使っているSVM-145や他の一脚との差が最も大きいと感じたのがベース三脚のロック解除/ロック操作だ。

実際の操作方法だが、PINETA Proの足元にあるペダルを踏むことでロック解除となり、そのまま足を離してフリーで前後左右に操作が可能。もう一度ペダルを踏むことで、センター付近に一脚を動かすと水平位置でカチッとロックしてくれる(その位置を探すのに少し慣れは必要だ)。

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私が使っているSVM-145だと、その都度手でベース三脚横のネジを操作してロック解除/ロック操作をしないといけないのだが、その操作をするには一度自分自身がしゃがみ込んでネジを操作する必要があり、実質咄嗟の操作ができない仕様となっている(ネジを少し緩めておくことで微調整をすることは可能だが…)。

また、私の場合、様々な場所に移動して撮影を行うことが多いため、一脚を使う場所が必ずしも室内の平坦な場所とは限らない。

屋外の土や砂利、草むらや坂道、その時々でベース三脚を固定したりフリーに変更することができれば非常に便利なシーンがたくさんある。

PINETA Proならその操作をフットペダル操作だけで実現してくれる。また、フリー操作の動きについてもフットペダルの前部分にあるダイヤルによって硬さの調整が可能だ。

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センターのリング状のダイヤルを+と-に動かすことで硬さを調節することが可能
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このような斜面でもベース部をロックしてしまえば自立させることも可能

フットペダルの操作に慣れれば固定/フリー操作が簡単にできる

レバーロックの安心感

PINETA Proは、ワンレバー・ワンペダルで非常に簡単に操作ができてしまう分、誤動作による不意な伸縮など安全面が気になる方も多いだろう。

私が使っているSVM-145は、両手で捻って伸縮のロック解除・ロック操作をすること以外にロック機構が付いていない。そのため、撮影現場で使う際はどうしても少し強めに捻って確実にロックする必要がある。

それに対し、PINETA Proの場合はレバーの裏側にロックスイッチが付いており、そのスイッチを下にスライドするだけで、物理的にレバーが握れない(ロックが解除されない)仕組みになっている。

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大切な機材を一脚に載せていることや、同じ高さで長時間撮り続ける際に万が一不用意にレバーを触ってしまうことを考えると非常に安心できる点だ

1/4ネジとARRIネジ

PINETA Proにはレバーの両サイドに1/4インチネジとARRIネジが空いており、各種アクセサリー類を装着することができるようになっている。

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ネジ穴は一脚の高い位置にあるため、バランスを考えると重いものを装着するのは避けた方が良いが、マジックアームなどを利用してモニターやライト、カメラへの電源を供給するための各種バッテリーを付けることができる点も他の一脚と比較した際の大きなアドバンテージといえる。

考え方によっては、カメラにケージなどを装着せずに軽くして、アクセサリー類は全て一脚側に装着してしまうということも可能である。

ミニ三脚として使うことができる

PENETA Proにはレバー上とベース三脚上の2カ所に、一脚を伸縮させるのとは別にロックボタンがそれぞれ2個ずつ付いている。

このボタンを押すことで、PINETA Proを(1)カメラを乗せる部分(2)一脚(3)ベース三脚の3つのパーツに分けることができ、(1)と(3)を合体させることでミニ三脚として使うことができるようになる。

テーブルフォトやローアングルの動画を撮る方にとっては、PINETA Pro1本が1台2役になり、現場に持って行く機材を大幅に減らせることができる。

また、注目すべきは上部のロックを解除するボタン自体にもセーフティリングが付いている点で、これを左右にスライドさせることで、不意な誤動作によるカメラの落下を防ぐことができる。

ここまで細部にこだわるのは、YC ONIONが今回のPINETA Proに相当力を入れている証拠ともいえる。

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一脚上部を取り外すボタンにもセーフティ機能が搭載されている

まとめ

以上、ここまでPINETA Proを紹介してみた。

今回、機材レビューをするにあたり、弱点や欠点を書いても良いという許可はいただいているのだが、正直PINETA Proに欠点らしい欠点は見当たらなかった。

強いて挙げるとすれば、最低高が78cmという高さのため地面にお尻を付けた状態(あぐらなど)で撮影することはできないが、それは片膝を付いたり椅子を使うなどで対応できるので大した問題ではない。

一度PINETA Proのワンレバー・ワンペダルの操作に慣れてしまえば、他の一脚の操作が非常に煩わしく感じてしまうことは間違いない(実際、私もSVM-145からPINETA Proに買い替えたくなっている)。

快適な操作性、安全性、メーカーのこだわりが随所に見られ、もはや動画を撮影する一脚として完成形と呼べるのではないだろうか。

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メーカーロゴや質感
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1/4と3/8ネジを変換アダプターなしでそのまま使うことができる
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ベース三脚を畳んだ状態
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展開(1)
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展開(2)
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原田直樹|プロフィール
主に幼稚園・保育園のイベントを写真と動画で撮影/編集。
その他、小学校~大学のスクール撮影、ダンスや演奏会、各種イベントの撮影を行っている。
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WRITER PROFILE

編集部

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。